利息に対して税金がかかる、普通預金や定期預金。貯金額によって税金が異なるのか、いくらかかるのか気になっている人もいるでしょう。
今回は預貯金にかかる税金を解説します。話題になった貯蓄税の内容や問題点なども紹介するので、将来的な税金対策の参考として役立ててみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
預金そのものには税金がかかりません。ただし、預金する際につく利息には税金がかかります。たとえば、年率0.01%の1年定期預金に1,000万円を預け、1年後に1,000円の利息がついたとしましょう。このとき、元本である1,000万円には税金がかかりませんが、利息の1,000円は税金の対象です。
利息は利子所得とみなされ、一律20.315%※の税率で所得税が源泉徴収されます。預金者が税金を納めるために手続きする必要はありません。利息が支払われる際に、金融機関側が税金を徴収することで納税は完結します。つまり預金者が受け取る利息は、すでに税金が引かれているというわけです。
所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%
このように金融機関が預金者に利息を支払う際、あらかじめ税金を引く仕組みを源泉分離課税制度といいます。利息を受け取る時点で納税が済んでいる状態のため、会社で働いて得たお金や個人事業で稼いだお金などと合算したり、税務署に申告したりする必要はありません。
預金のほかに、株式・債券・投資信託などの金融商品を資産として持っている人もいるでしょう。預金のように利息に税金がかかるものもあれば、税金がかからないものもあります。
それぞれに当てはまる主な金融資産を紹介するので、預金以外の方法で蓄えをしている人は税金の有無を確認してみてください。
税金がかかる主な貯蓄の種類と税率は、以下のとおりです。
普通預金は預け入れや出金が自由にできる一般的な預金、定期預金は預け入れの期間が決まっている預金を指します。貯蓄預金はある一定以上の残高があると金利が高くなりやすい預金ですが、普通預金のように自動引き落としや給与などの自動受け取りはできません。
一般財形貯蓄とは、給与から天引きで積み立てをしていくものです。積み立ての目的に制限はありません。特定公社債とは、国債や地方債などを指します。国債は国が、地方債は地方自治体がお金を集めるために発行する債券のことです。
一時払いの養老保険などで保険金を受け取る場合にも税金がかかります。一時払いとは、保険の申込み時に全期間の保険料をまとめて支払うこと。税金がかかるのは満期5年以下の保険商品、または保険期間の初日から5年以内に解約した保険商品です。
税金がかかる金融資産として、株式投資や投資信託も挙げられます。基本的には、配当金などを受け取る際に納税が必要です。上場株式等の利子・配当のケースには20.315%、一般株式等の配当のケースには20.42%の税率が設定されています。
企業の株式の3%以上を持つ大口株主は上場株式であっても20.42%
税金がかからない貯蓄や非課税制度も確認してみましょう。
【税金がかからない主な貯蓄】
商品によっては、財形年金貯蓄枠が550万円のうち385万円までに限定される
財形住宅貯蓄はマイホームの購入やリフォームのために積み立てるお金、財形年金貯蓄は老後の生活に備えて積み立てるお金です。どちらも財形貯蓄のひとつで、満55歳未満の人が契約し、5年以上積み立てを行う点が共通しています。
納税準備預金や納税貯蓄組合預金とは、税金を支払うために預け入れるお金です。税金を支払うために引き出す場合には課税されません。ただし納税の目的以外で引き出した場合、一定の利息に対して税金がかかります。
そのほかにも、日本にはさまざまな非課税制度がありますよ。
【非課税制度の一例】
成長投資枠・つみたて投資枠・iDeCoは、投資などに関わる非課税制度です。通常、株式や投資信託などで得られたお金には税金がかかります。しかしこれらの制度を利用すると非課税のため、節税しながら資産運用が可能です。3つの制度については、後ほど詳しく紹介します。
税金がかかる貯蓄の場合、源泉分離課税または確定申告によって納税します。それぞれの納税方法に該当する貯蓄の種類を確認しながら、金融資産と税金の関連性について理解を深めましょう。
源泉分離課税の対象は、普通預金・定期預金・貯蓄預金・一般財形貯蓄・一部の保険金※1・特定公社債※2などです。利息や保険金を受け取る際にはすでに20.315%の税金が引かれた状態のため、自分で税金を計算して国に納める必要はありません。この方式を源泉分離課税といいます。
1.満期5年以下の一時払養老保険などが対象
2.特定公社債の利子所得が対象
たとえば、年利0.01%の1年定期預金に100万円を預けた場合、1年後にもらえる利息は100円です。100円の利息に対してかかる税金は、20.315%の約20円。よって金融機関から預金口座に支払われる利息は、20円を引いた80円です。
実際はこのように計算する必要も、税務署に申告する必要もありません。日常的に利用する預金口座などは、源泉分離課税によって自動的に税金が徴収されると理解しておきましょう。
株式・投資信託・債券などで利益が発生した場合、確定申告をともなう納税が必要です。株式の配当金をもらう、株式や投資信託を換金する、国債や地方債を売却するといった場面で発生した利益を計算し、必要な税金を支払います。
ただし、給与所得を除いた年間所得が20万円以下、特定口座(源泉徴収あり)を使っている、非課税制度の投資枠を利用している場合、確定申告は不要です。
株式・投資信託・債券などを購入する際、一般口座または特定口座を開設します。特定口座には源泉徴収ありとなしがあり、源泉徴収ありの場合には自動で納税してもらえますよ。つまり確定申告は不要ということです。
また、非課税制度の新NISAの成長投資枠・つみたて投資枠・iDeCoの投資枠で株式などを運用すると、そもそも税金がかかりません。株式・投資信託・債券などは基本的に確定申告が必要ですが、このように省略できるケースもあります。
貯蓄税がかかるかもしれないといった内容が、過去にテレビで取り上げられました。現段階では実施されていませんが、自分の預金に関わることとして注目している人は多いと考えられます。
今後導入された場合に対策ができるよう、貯蓄税とはどのような内容なのかを理解しておきましょう。
貯蓄税とは、消費税に代わる税金として導入が噂されている税金です。内容は、銀行預金の合計が1,000万円を超える場合に、毎年2%の課税を実施するというもの。テレビ番組の特集で取り上げられたことがきっかけで、貯蓄税の言葉が世間に広がりました。
ただし2023年2月時点では、政府からの情報発信はありません。そのため、今後の動きに注目しつつも、貯蓄税はあくまでも導入が噂されている税金として捉えておくとよいでしょう。
貯蓄税の導入には、景気の上昇と課税の公平性の2点が関わっていると考えられます。貯蓄税の狙いを知り、日本の経済状況や制度の在り方に関する理解を深めましょう。
貯蓄税の導入に関する声があがった理由として、貯金から投資・購買への動きを促し、お金を循環させて景気を上向きにする意図があったと考えられます。景気の良い状態とは、消費者や企業がお金を多く使って経済が循環することです。
生活を充実させるために消費者がモノやサービスを頻繁に購入すると、企業は潤います。経営が好調な分、従業員の給料も上昇し、消費者の購買意欲はますます高まるでしょう。
企業は設備投資にお金を回せるようになり、新たなモノやサービスを消費者に提供できます。すると消費者が購入し、また企業が潤うといったように、お金の循環は景気の良さに関係しているわけです。
貯蓄税が導入されると、貯金が減るリスクを感じた人が投資・購買にお金を回すようになるでしょう。結果的に多くのお金が社会に流れ、景気が上昇することが貯蓄税導入の狙いだと考えられます。
貯蓄税が検討されたもうひとつの意図として考えられるのは、課税を公平にすることです。収入が低い世帯ほど消費税の負担が大きいため、貯蓄税によって高収入世帯の負担を増やし、公平にする意図があると考えられます。
日本生活協同組合連合会が発表した「2017年 消費税しらべ」によると、年収400万円未満世帯の消費税負担率は5.72%です。年収600~700万円台は3.45%、1,000万円以上は2.80%と、年収が多い世帯ほど負担率は抑えられています。
つまり収入が低いほど自由に使えるお金が少なく、そのうちに消費税が占める割合も大きいといえるでしょう。消費税の負担は一律に見えても実際は異なるため、貯蓄税で高所得世帯の負担を増やし、公平にする狙いがあったと推測されます。
貯蓄税の導入による問題は2つ考えられます。ひとつは老後資金の準備が妨げられること、もうひとつはタンス預金の増加によって経済が回らないことです。それぞれの詳細を確認し、仮に導入された場合の対策へと繋げましょう。
貯蓄税が導入されると、貯金による老後資金の準備が難しくなると考えられます。1,000万円を超える預金に対して2%が課税された場合、仮に1,000万円を預け入れると20万円もの税金が徴収されるからです。
日本銀行金融機構局によると、普通預金の年利率は平均0.001%※。貯蓄税が導入された場合、年利でもらえるお金よりも課税されるお金のほうが多いため、銀行にお金を預けて老後に備えることは非効率的といえます。
2022年3月30日時点
老後には2,000万円必要という話題が2019年に広まったこともあり、老後資金を多く蓄えておきたいと考える人は多いでしょう。貯蓄税を回避するためには、老後資金を銀行に預けるのではなく投資に回すといった対策が必要と考えられます。
貯蓄税が導入されると、貯蓄税を避けるためにタンス預金をする人が増える可能性があり、結果として経済が回らないことが考えられます。
貯蓄税の狙いは、お金の流れを良くして景気を上昇させることです。それに対し、自宅に現金を保管する人が増えると投資・購買にお金が回らないため、貯蓄税導入の意味がないといえます。
また、タンス預金をする人が増えると空き巣や強盗の増加が予想され、治安悪化にも繋がりかねません。貯蓄税の本来の意図とは違った動きが広まることで、社会経済も治安もダメージを受けてしまうでしょう。
もし貯蓄税が導入されたときは、貯金を投資に回して回避するのがおすすめです。政府からの情報発信がない分、貯蓄税導入の可能性は低いと考えられます。とはいえ今後動きがある可能性もゼロではないため、現時点で対策を練っておきたいところです。
貯金を投資に回すと、貯蓄税を避けられるだけでなく、お金を増やせる可能性があります。特に非課税制度のNISAやiDeCoを利用すれば、節税しながら資産運用できますよ。
NISAやiDeCoは少額からコツコツと始めることも可能です。運用しやすい仕組みが整えられているため、資産運用の未経験者でも貯蓄税対策として活用できるでしょう。
2023年2月時点では、貯蓄税の導入は見通しが立っていないため、ひとまず銀行にお金を預けておくのも選択肢のひとつといえます。預金で貯金を増やしたい人には、定期預金がおすすめです。
定期預金は預け入れの期間が決まっており、普通預金よりも金利が高めに設定されています。ただ、多くの金融機関が提供しているため、どれを選べばよいか迷ってしまうこともあるでしょう。
以下の記事では、おすすめの定期預金を紹介しています。金融資産のひとつとして定期預金を検討中の人は、商品選びに役立ててみてください。
税金をかけずに資産形成するなら、新NISAやiDeCoがおすすめです。新NISAは国が定めた非課税制度で、運用によって得た利益には税金がかかりません。投資額の上限は、成長投資枠が240万円/年、つみたて投資枠が120万円/年。非課税で保有できる期間はどちらも無期限です。
新NISAでは株式や投資信託などを、つみたてNISAでは一定の基準を満たした投資信託などを選べます。投資信託とは、運用会社が投資家から集めたお金を資金として、投資家の代わりに運用する金融商品のこと。さまざまな金融商品に分散して投資するため、損失のリスクを避けやすいことも特徴です。
特につみたて投資枠の投資信託は長期・分散投資などに適したものと決まっているため、大きなリスクを避けながらコツコツ資産運用したい人に向いているといえます。
iDeCoは老後生活の備えとして、一般的な年金とは別に資産形成が目指せる制度です。毎月決まった額を積み立てながら、投資信託や保険商品などを運用します。運用に対する利益が非課税のほか、支払った掛金や受け取り時の年金・一時金にも控除が適用されるのがメリットです。
成長投資枠・つみたて投資枠・iDeCoについてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。
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