高いレバレッジをきかせて大きなリターンを狙える海外FX。海外FXを検討・利用している人のなかには、税金の仕組みは国内FXと違うのか、確定申告のやり方はどうしたらいいのか、などさまざまな疑問があるでしょう。
そこで今回は、海外FXの税金や確定申告のやり方について詳しく解説します。節税方法や国内FXとの違いも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
海外FXで利益が発生しても、税金の抜け道はありません。投資に関する税金は自分が住んでいる国に納めるのがルールなので、海外FXの利益も国内で納める必要があります。
海外FXの利益は所得税と住民税の対象です。いずれも確定申告によって納税しなければなりませんが、一定額の控除と経費の差し引きができるので最大限活用しましょう。
また、海外FXの利益を確定申告しないことは、脱税行為に当たります。海外の口座ならバレないと思われがちですが、税務署に金融機関の履歴を追跡されていずれバレてしまうので、必ず確定申告しましょう。
脱税がバレた場合は度合いに応じて、未払分の税金支払いや無申告税の支払い、重加算税の支払いなどのペナルティが課されます。最悪の場合は逮捕されるのでくれぐれも注意してください。
海外FXで税金がかかるタイミングは、年間の利益が確定する12/31です。海外FXでは利益が出るたびに税金が発生するのではなく、年間の合計利益に対して税金がかかります。
ただし、含み益が発生しているポジションの場合でも、決済をしなければ課税対象にはなりません。ポジションとは、通貨売買の約定はしていても決済をしていない状態のことです。
FX取引ではまずポジションを保有し、その後決済をしてはじめて損益が確定します。ポジションを保有している段階では、まだ利益ではなく未確定の含み益扱いです。つまり、12/31時点で含み益が発生していても、決済をしないかぎり利益には当たらないので覚えておきましょう。
含み益と利益の関係について具体例を挙げます。たとえば、ドルが100円のときにポジションを保有。円安でドルが105円になると、105円−100円=5円の含み益となります。この段階では、まだ利益になりません。このポジションを決済して、はじめて5円の利益が確定することになります。
海外FXの利益に対して発生する税金は、給与所得者かどうかによって異なります。給与所得者と非給与所得者それぞれのケースを見ていきましょう。
サラリーマンなどの給与所得者は、給与所得以外の所得が年間20万円以上になると、確定申告が必要です。副業などの所得があれば、海外FXの利益と合算します。
所得とは、利益から経費を差し引いた額です。たとえば、30万円の利益に対して20万円の経費がかかっていれば所得は10万円なので、確定申告をする必要はありません。
ただし、給与以外の年間所得が20万円未満の場合に課税されないのは所得税であり、住民税は別途申告が必要です。1円でも利益が出ている場合は、居住する市町村に住民税の申告をしてください。なお、確定申告した場合は税務署から市町村へ情報共有されるので、住民税の別途申告は不要です。
また、確定申告の有無にかかわらず、会社の給与に対する税金は年末調整で精算されます。
非給与所得者(自営業・専業主婦・無職など)は、年間所得が48万円以上の場合に確定申告が必要です。所得税の基礎控除は48万円なので、48万円未満なら所得が0円になります。
基礎控除とは、全員が所得から控除できる金額です。所得が2,400万円以下なら基礎控除は48万円、2,400万円超2,450万円以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円、2,500万円超は0円と定められています。
年間所得が48万円未満で確定申告が不要の場合でも、1円でも利益が出ていれば住民税の申告は必要なので忘れずに行いましょう。
海外FXと国内FXでは課税の仕組みが異なります。課税方法と税率の違いを解説するので理解しておきましょう。
FX取引で得た利益に対する課税方法は、海外FXが総合課税、国内FXが申告分離課税です。
海外FXに適用される総合課税とは、ほかの所得と合算した合計額に対して課税される制度。所得の区分は給与所得・一時所得・不動産所得などさまざまあり、海外FXの利益は雑所得に分類されます。給与所得者の場合はほかの所得と正確に合算するため、会社からもらった源泉徴収票を確認しながら確定申告書を記入しましょう。
一方、国内FXに適用される申告分離課税とは、ほかの所得とは分離して個別の利益に対して課税される制度です。ほかの給与所得などとは合算せず、FXの利益に対する税金を単独計算します。
FXの利益にかかる税率は、海外FXは15〜55%程度の累進課税、国内FXは一律20.315%です。海外FXは総合課税なので、所得が大きくなるにつれて税率も上がります。
累進課税における所得金額に応じた税率と控除額は以下のとおりです。
1,000円から1,949,000円まで:5%:0円
1,950,000円から3,299,000円まで:10%:97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで:20%:427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで:23%:636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで:33%:1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで:40%:2,796,000円
40,000,000円以上:45%:4,796,000円
所得税に加えて復興特別所得税が所得税×2.1%、住民税が約10%かかるので、海外FXでは合計15〜55%程度の税金が課せられます。
一方、国内FXにかかる税率の内訳は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。
累進課税が適用される海外FXは利益を出すほど税金が高くなるため、税率が一律の国内FXのほうがお得なケースもあるでしょう。以下の記事では、国内FX会社のおすすめランキングを紹介しているので、興味がある人は参考にしてみてください。
前項で紹介した税率を基に、実際に海外FXにかかる税金を計算してみましょう。
例として、給与所得400万円+海外FXの利益100万円=合計所得500万円と仮定します。
所得税は500万円×20%−427,500円=572,500円、住民税は500万円×10%=50万円、復興特別所得税は572,500円×2.1%=12,022円(小数点以下切り捨て)。税金の合計は、所得税572,500円+住民税500,000円+復興特別所得税12,022円=1,0845,22円です。
なお、復興特別所得税とは東日本大震災からの復興のために必要な財源の確保することを目的に創設された税金で、2037年まで適用されます。
海外FXの確定申告には、確定申告書(税務署で入手可能)、年間の収入を確認できるもの、本人確認書類、マイナンバー確認書類、源泉徴収書(あれば)、印鑑などの準備が必要です。
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告は不動産所得・事業所得・山林所得がある人が利用可能で、より詳細な帳簿等が必要となりますが、控除額が高く税制面で有利です。一方、白色申告は誰でも利用可能で、記載内容もシンプルですが、青色申告よりも控除の種類や金額が少なくなります。
青色申告は対象者が限定されているうえ記入も少し難しいので、会社員や投資初心者は白色申告を利用するといいでしょう。
ここからは、海外FXで得た利益を実際に確定申告する手順を紹介します。各項目の注意事項を確認していきましょう。
確定申告書は国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用して作成するのが一般的です。各項目の入力内容を紹介します。
まずは国税庁の確定申告書作成コーナーにアクセスしましょう。「作成開始」をクリックします。
続いて、希望する提出方法を選択しましょう。「マイナンバーカード方式(2次元バーコードまたはICカードリーダライタ)」「ID・パスワード方式」「印刷して提出」のなかから希望する提出方法を選択します。
次に、申告書の種類を選択しましょう。
海外FXにかかる所得税を申告するので、「所得税」を選択してください。不動産所得や事業所得があって青色申告をする人は、「決算書・収支内訳書(+所得税)」を選択します。
続いて、画面に指示に従って生年月日等の情報を入力してください。
生年月日等の必要情報まで入力したら、次に収入金額や所得金額を入力していきます。会社員の人は「給与所得」、自営業やフリーランスの人は「事業所得」を選択し、画面の指示に従って入力してください。
会社員の人は源泉徴収票の内容を転載する必要があるので、内容を確認しながら入力していきます。
給与所得や事業所得の入力が完了したら、海外FXの利益や経費を入力しましょう。
海外FXで得た利益は雑所得に該当するので、雑所得の「業務・その他」をクリックし、画面の指示に従って収入金額や必要経費を入力します。種目は「その他」を選択し、「証拠金取引」と入力してください。
給与所得や雑所得の入力が完了したら、所得控除を入力していきましょう。「入力終了(次へ)」をクリックすると、所得控除入力画面に進みます。
扶養控除や社会保険料控除など、源泉徴収票の内容に従って入力してください。基礎控除は所得金額に応じて自動計算されます。
所得控除の入力が完了すると、納付する所得税額が表示されるので確認しましょう。
所得税の入力が完了したら、続いて住民税などを入力しましょう。「住民税・事業税に関する事項」をクリックします。
はじめに徴収方法の選択肢があるので、会社の給与から天引きしたい人は「特別徴収」、自分で納めたい人は「自分で納付」を選択してください。
そのほかの項目も画面の指示に従って入力しましょう。すべて入力し終えたら「入力終了(次へ)」をクリックします。以上で所得税・住民税の入力処理は完了です。
確定申告の入力が完了したら、実際に確定申告書を提出しましょう。税務署へ郵送・税務署の窓口へ持参・e-Tax(電子申請)の3つのなかから自分に合った提出方法を選択してください。
確定申告の受付期間は、毎年2/16〜3/15です。
確定申告書を提出したら、実際に所得税を納付しましょう。納付方法は、銀行振替、e-TAXを介したインターネット上での支払い、クレジットカード、コンビニでのQRコード決済、金融機関または税務署の窓口で現金納付の5つから選択可能です。
確定申告をすると、払いすぎた税金が還付されるケースがあります。還付金が生じる場合は振込先を入力する画面が表示されるので、正確に入力しましょう。振込先は銀行またはゆうちょ銀行の預貯金口座を指定できます。
給与以外の収入を会社にバレたくない人は、住民税の徴収方法で「普通徴収」を選びましょう。確定申告の住民税の入力時に「自分で納付」のチェックを入れるだけでOKです。もし心配であれば、提出時に普通徴収を希望する旨を窓口の人に念押ししましょう。
副業などが会社にバレるケースは、会社に通知される住民税額が原因であることがほとんどです。「特別徴収」を選択すると、給与+FXの利益に対する住民税額が会社に通知されるので、副業がバレる可能性があります。
なお、FXを始める際はFX会社へのマイナンバーの提出が義務付けられていますが、マイナンバーが原因で会社にFX取引がバレることはありません。
海外FXで得た利益は、経費や控除を最大限活用して節税を目指しましょう。具体的な節税方法を紹介します。
運用にかかった費用は経費として計上すると、節税につながります。課税対象となる海外FXの利益の計算方法は、総収入金額−必要経費=利益です。
経費かどうかを判断する明確な基準はなく、あくまで自己判断になります。経費として申告できる主なものは、取引に使うPCやスマホ代、FXに関する書籍代、インターネットの通信費、FXのセミナーの受講料・交通費・宿泊費などです。
万が一の税務調査に備えて、経費の領収書やレシートは必ず保管しておきましょう。
雑所得の枠のなかでは、海外FXの利益をほかの副業の損失と損益通算できます。雑所得に分類される副業は、仮想通貨取引、ブログ、アフィリエイト、転売、ハンドメイドの物販などです。
雑所得とほかの所得の損益通算はできないので、申告分離課税の国内FXとは合算できない点に注意しましょう。
少しでも節税するために、所得控除を活用しましょう。利用できる所得控除の種類は以下のとおりです。
雑損控除:災害・盗難・横領による損害額に応じた一定額
医療費控除:支払った医療費が10万円以上の場合に最大200万円
社会保険料控除:社会保険料の全額
小規模企業共済等掛金控除:掛金の全額
生命保険料控除:生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料に応じた一定額
地震保険料控除:地震保険料に応じた一定額
寄附金控除:特定寄附金を支払った場合に所定の計算式で算出
障害者控除:自身または生計を一にする人の障害区分に応じた一定額
寡婦控除:寡婦の場合27万円
ひとり親控除:ひとり親の場合35万円
勤労学生控除:勤労学生の場合27万円
配偶者控除:配偶者の所得が48万円以下の場合に納税者の所得に応じた一定額
配偶者特別控除:配偶者の所得が48万円超〜133万円以下の場合に所得に応じた一定額
扶養控除:扶養親族の区分に応じた一定額
基礎控除:所得が2,500万円以下の場合に最大48万円
活用できる所得控除を税務署がわざわざ教えてくれることはありません。自分が活用できる所得控除をよく確認して、できるかぎり節税を目指しましょう。
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