当座預金とは？普通預金と何が違う？メリット・デメリットをわかりやすく解説

当座預金口座があれば、取引先への支払いに小切手・手形が使えます。小切手・手形とは、現金で支払いをする代わりとして、相手に用紙を受け取ってもらう方法のこと。

小切手は受け取った時点で、手形は決められた支払い期日より先のタイミングで現金化できます。手続き場所は、受け取った側が取引している金融機関、または支払い側が利用する金融機関です。

小切手や手形を使うと、現金を持ち歩く必要がありません。防犯面で役立つだけでなく、現金を手渡しして数える手間も、数え間違える心配も不要です。

注意点として、国が定めたルール上、小切手・手形に書かれた内容は絶対的な意味を持ちます。たとえば、本来は100万円の取引を1,000万円と間違って記載してしまった場合、大きな損失になりかねません。

取扱いに注意しながら小切手・手形を利用すれば、現金の代わりとしてスムーズに取引できるでしょう。利便性の高い小切手・手形を使えることは、当座預金口座の利点といえます。

当座預金を持っていることは金融機関の審査を通過したことを意味するため、取引先から信用を得やすくなります。

自動貸し付けの仕組みがあること、現金代わりに小切手・手形を利用できることから、当座預金は金融機関や取引先にとってリスクがあるものです。支払い能力がない企業に対して自動貸し付けが実行されると、金融機関にとっては貸したお金が返ってこない可能性が懸念されます。

または小切手・手形を発行した場合、取引先が支払いを受けられない可能性もあるでしょう。これらのリスク回避として、口座開設時に金融機関は企業・個人事業主の経営実態などを確認していると考えられます。

審査をクリアできた場合は、金融機関からある程度の信用を得ているといえるでしょう。付随して、取引先にも信用してもらえる可能性が高まります。

当座借越（貸越）契約を結んでいる場合、残高に不足が生じても不渡りを防げます。当座借越（貸越）契約とは、決められた額まで自動で融資してもらえる契約のこと。不渡りとは、残高不足によって小切手・手形を受け取った相手が現金化できない状態です。

不渡りが生じた場合、各金融機関をつなぐシステムに届け出が提出され、システムを利用する金融機関に伝わります。6か月間に2回の不渡りを出した場合、2年間は当座預金の利用と借入ができません。

企業・個人事業主にとっては、信用低下に関わる大きな問題といえます。顧客から取引を中止される可能性もあるしょう。

当座借越（貸越）契約を結んでおけば、うっかり不渡りを出すことを防止できます。ただし借入にかかる金利が高いケースが多いため、融資を受けたら早めに返すなどの工夫は必要です。

金融機関が破綻した場合、預金の全額が保証されるのも当座預金の利点です。国が定めた預金保険制度により、当座預金口座の持ち主は事前申込み不要で保証が受けられます。利息つきの普通預金は1,000万円と利息までしか保証されませんが、当座預金なら残高に関係なく保証範囲内です。

1,000万円までしか保証されず、超過した分が払い戻しされなかった場合、取引先への支払いや設備投資、運営などに回すためのお金が減ってしまうことも考えられます。ビジネスでは大金を取り扱うケースが多いため、リスクに備えられるのは大きなメリットといえるでしょう。

当座預金は基本的に取引額の上限がなく、ビジネスで大きな支払いをする際もスムーズです。普通預金の場合は、大きな金額を引き出す際に窓口への事前申請が必要なケースがあります。当座預金なら多額の取引でも申請することなく、小切手・手形を使った円滑な支払いが可能です。

当座預金は審査が厳しいため、口座を開設できないケースがあります。審査に必要な書類や審査内容は、金融機関によってさまざまです。ただし、経営状況や企業の実態などは基本的に審査されると考えられます。

当座預金口座を開設すると、小切手や手形の発行が可能です。もし経営がうまくいっていない企業・個人事業主が支払い能力を超えて小切手・手形を利用した場合、取引先に大きな損害を与えかねません。

また当座預金には、金融機関が預金者に対して一定額までの融資を行う当座借越（貸越）契約があるため、貸倒れリスクも懸念されるでしょう。審査実施の理由には、このような当座預金ならではの特徴が関連している可能性があります。

なお、一般的には規模の大きなメガバンクになるほど審査が厳しいといわれることも。どの金融機関で審査を受けるにしても、事業の状態をアピールできることが大切といえるでしょう。

一部の金融機関を除いて、当座預金口座はATMが利用できません。窓口対応が基本のため、利用できる時間帯が制限されます。人によっては、時間が決まっていることに不便さや手間を感じるでしょう。

ただし、専用のキャッシュカードを発行するといった方法で、ATMに対応している金融機関もあります。ATMを利用したい場合は、申込み前に確認してみましょう。

一般的な普通預金と違って、当座預金は利息がつきません。普通預金の場合は、残高に対して利息がつきます。ただし日本銀行金融機構局によると、普通預金の年利は平均0.001％のため、高いとはいえません。

2022年3月30日時点

たとえば普通預金に1,000万円を預けたとすると、1年間にもらえる利息は単純計算で100円。100万円の場合は10円です。普通預金に大きな金額を預けているといったことがなければ、当座預金の無利息はデメリットというほどでもないでしょう。

当座預金口座の持ち主が小切手や手形を発行する際は、所定の手数料がかかります。小切手・手形の発行手数料は、50枚入りで各11,000円（税込）のケースが一般的です。

金融機関によって手数料は異なるものの、小切手・手形の1枚1枚にはお金がかかっていることを理解しておきましょう。

現金代わりに使えて便利な小切手ですが、利用によって不渡りを出すリスクが高くなります。不渡りとは、当座預金の残高が不足し、小切手に記載した金額が決済できないことです。

当座借越（貸越）契約を結んでいれば、残高が不足しても自動で一定の融資が受けられます。ただし融資の限度額を超えた場合は、不渡りの対象です。不渡りを6か月のうちに2回繰り返すと、2年間は当座預金の利用もお金の借入もできません。

不渡りの情報は全国銀行協会が運営する電子交換所に報告され、参加する金融機関に共有されます。つまり、当座預金口座を持つ金融機関だけでなく、ほかの金融機関でも当座預金の利用や借入ができないということです。企業・個人事業主にとっては経済的な痛手となるうえ、信用を失うでしょう。

小切手は手形のように、支払い期日がありません。取引先に渡すとすぐにでも現金化の手続きができるため、当座預金の残高には注意しておく必要があります。

20万円の商品を取引先から仕入れ、あとから小切手で支払う場合は、仕入れた時点の仕訳として以下を記入します。

• 借方（仕入）200,000円｜貸方（買掛金）200,000円

仕入や買掛金は、お金のグループ分けに役立つ勘定科目と呼ばれるもの。買掛金は商品などの仕入れ後に支払うお金です。今回のケースでは、商品を仕入れたあとに小切手で支払う予定があるため、負債の増加として貸方に買掛金を記入します。

取引先から商品を受け取り、小切手で支払った際には次のように仕訳しましょう。

• 借方（買掛金）200,000円｜貸方（当座預金）200,000円

買掛金という負債が減ったので借方に記入します。当座預金からは商品代が減った、つまり資産が減ったので、貸方に記入しましょう。

取引先に20万円の商品を販売し、あとから小切手で支払いを受けたとしましょう。まず商品を販売したタイミングで、次のように記入します。

• 借方（売掛金）200,000円｜貸方（売上）200,000円

商品代金を掛けとして資産が増えたため、借方に売掛金を記入してください。貸方には、収益の増加として売上という勘定科目を用います。後日小切手を受け取った際は、手元に現金が増え、売掛金が減ったものとして以下のように仕訳しましょう。

• 借方（現金）200,000円｜貸方（売掛金）200,000円

また、売り上げの20万円を当座預金口座に預けた際も仕訳する必要があります。

• 借方（当座預金）200,000円｜貸方（現金）200,000円

手元の現金、つまり資産が減り、当座預金の資産が増えたというイメージです。なお、小切手の受け取りから当座預金に入金するまでの期間が短い場合、2番目の仕訳は省略することもあります。

取引先から20万円の商品を仕入れて約束手形を渡した際、次のように仕訳します。

• 借方（仕入）200,000円｜貸方（支払手形）200,000円

仕入とともに、支払手形という負債が増えたとイメージしてみましょう。約束手形の支払い期日以降に取引先が現金化し、当座預金から引き落としがあった際の仕訳は以下のとおりです。

• 借方（支払手形）200,000円｜貸方（当座預金）200,000円

引き落としによって当座預金の資産が減り、約束手形の負債はなくなります。

取引先に20万円の商品を販売し、約束手形を受け取ったケースの仕訳をしてみましょう。手形として資産が増えたので、借方に受取手形という勘定科目を記入します。

• 借方（受取手形）200,000円｜貸方（売上）200,000円

約束手形を現金化し、当座預金に入金した際の仕訳は以下のとおりです。

• 借方（当座預金）200,000円｜貸方（受取手形）200,000円

手形という資産がなくなった代わりに当座預金の資産が増えるため、借方には当座預金と記入します。