棗のおすすめ人気ランキング【2025年】

初心者用に茶道具の棗を選ぶときは、扱いやすく万能な中棗（ちゅうなつめ）を基準にしましょう。大きさは約6.6cmほどで、丸みを帯びた形状で手に自然に馴染み、抹茶の出し入れもスムーズ。約50〜100グラムの抹茶を入れられて、稽古から正式な茶会まで幅広く使えるため、はじめて棗を選ぶ人に向いています。

なお、棗のほかのサイズには、主に小棗（しょうなつめ）と大棗（おおなつめ）があります。小棗は約5cmほどで軽くて持ち運びやすく、野点（のだて）と呼ばれる屋外の茶会にぴったりですが、主に濃茶用とされています。大棗は薄茶専用ではあるものの、約8cmほどと大きめです。

稽古や日常の練習用には、扱いやすく壊れにくい樹脂製の棗がおすすめ。軽くて丈夫な茶道具なので初心者に向いており、繰り返し使っても傷みにくい点がメリットです。木製や漆塗りのような繊細な扱いが不要で、気軽に練習したい人に向いていますよ。

とくに、プラスチック製の棗は軽量で持ち運びやすく、値段も手頃なものが多い傾向があります。黒無地や朱塗のように本格的な漆器のようなデザインも多く、見た目も満足できるでしょう。しかし、樹脂製は変形や色あせの可能性があるので、高温や直射日光を避けて保管してくださいね。

持ち運びを考えるなら、抹茶がこぼれにくい中フタ付きの棗がぴったり。中フタが内部をしっかり密封するので移動中もこぼれにくく、気軽に抹茶を持ち歩けます。

また、茶道の稽古や外で行う野点などでは、うっかり棗を倒してしまうことも。中フタがあれば、棗を倒したときに抹茶をこぼすリスクを軽減できます。

湿気対策として、密閉性の高い合口を備えた棗を選びましょう。合口とは、棗のフタと下部にあたる身の接合部分を指します。合口の作りがしっかりしていれば外気や湿気を防ぎやすく、抹茶の風味や香りを長く保てるでしょう。

合口のなかでも、切合口（きりあいくち）はフタと身の境目が滑らかで目立たず、しっかり噛み合う点が特徴です。フタを閉めたときの密着感やズレがないか、口コミなどで確認してくださいね。

茶席で使う棗は、季節や会の雰囲気に合わせて、塗りや文様、形を選びましょう。漆の塗り方や形によって、茶会の格調や雰囲気も自然と変わります。また、棗の色や意匠は、季節感を出すのはもちろん、亭主の趣向やもてなしの心を表現するのもうれしいところです。

最も格式が高いのは黒塗で、凛とした落ち着きを演出します。溜塗は赤みを帯びた透け感のある飴色が特徴で、温かみのある印象が魅力です。文様だと春は梅や菊、夏は朝顔、秋はすすき、冬は雪などを取り入れれば季節の趣を表現できます。

棗の形も、種類が非常に豊富です。軽やかで使いやすい平棗（ひらなつめ）、仕覆をかけると濃茶にも使える真中次（しんなかつぎ）、容器の上下がわからない遊び心のある雪吹（ふぶき）などがあるので、雰囲気に合う棗を選びましょう。

棗を選ぶ際は、蒔絵（まきえ）や沈金（ちんきん）、螺鈿（らでん）などの加飾技法にも注目しましょう。これらの装飾は棗の印象を大きく左右し、茶席の格や雰囲気を高める大事な要素です。

蒔絵は、漆で絵や模様を描き、乾かないうちに金粉や銀粉を蒔いて仕上げる華やかな技法を指します。なかでも、金蒔絵は祝いや格式の高い茶席にふさわしく、豪華で堂々とした印象が魅力です。銀蒔絵はやわらかな光沢が特徴で、日常使いの棗にもなじむ上品な雰囲気があります。

沈金は、漆器の表面を細かく彫って金粉を埋め込むことで、絵柄を描く繊細な技法です。落ち着いた高級感があり、控えめながら深い味わいを感じるでしょう。螺鈿は、貝殻を漆に埋めこんで真珠のような輝きを出す技法で、静かな存在感を楽しめます。

棗の品格を重視するなら、産地にも注目しましょう。名産地の漆器は、長い歴史で培われた職人の熟練技が生かされ、見た目の美しさと耐久性を兼ね備えています。使うたびに手に伝わる質感や輝きから、ものづくりの丁寧さを感じられるでしょう。

たとえば、石川県の輪島塗は、地元の良質な土を下地に使って強度を高めており、ほかにはない美しい仕上がりを楽しめます。青森県の津軽塗は、研ぎ出し代わり塗りという、何度も塗って研ぐ独自の工程で生まれる模様が特徴です。福島県の会津塗は、浅い彫りと柔らかな色合いが持ち味で、温かみと上品さが感じられます。

棗を選ぶときは、漆を塗る職人の塗師や作家の系譜に注目しましょう。由緒ある家系や名工による棗は、茶道具としての格式はもちろん、美術工芸品としての価値も高く評価されています。資産価値も高く、驚くような金額がつく場合も少なくありません。

たとえば、中村宗哲は千家十職という職人家系に名を連ねる塗師で、繊細な塗りと端正な意匠が魅力です。一后一兆は輪島塗の名手で、豪華な蒔絵と緻密な構図が高く評価されています。清瀬一光は、明治から昭和初期の漆器の名工で、軽やかさと深みを合わせた独特の風合いが特徴です。

棗を手がける作家たちは、時代背景や美意識を作品に反映しています。作り手の個性が生きた棗は、茶席に深みと格を添える存在になるでしょう。

棗の真贋を見極めるうえで、家元の花押（かおう）や書付（かきつけ）の有無は非常に重要です。花押とは、製作者本人やその作品を証明するために記される署名を指します。書付は、家元や著名な茶人、大名などが認定や由来を書き記したものです。いずれも、作品の評価や市場価値を大きく左右する証拠となります。

家元の書付がある棗は、フタの裏や共箱の内側に花押が記されているのが一般的です。一部の家元は、共箱の上部とフタ裏に花押を分けて書き、両者が一致すれば真正品だと証明されます。このような棗は希少性が高く、高値で取引されることもあるでしょう。書付や花押の真偽を判断するのが難しいなら、専門家に鑑定を依頼してください。

美術品として棗を選ぶときは素材にも注目し、どのくらい希少性が高いかも重視するとよいでしょう。珍しい素材で作られた棗は入手経路が限られ、芸術性・市場価値の両面で高く評価されます。

象牙や翡翠、珊瑚などを使った棗は非常に希少で、価値がより高まるでしょう。一般的な棗は、木を素地にして漆を塗り重ねた漆器が中心ですが、木製でもキメの細かさや重量感など、素材の質が高いほど評価が上がる傾向があります。

なお、陶器のような焼き物でできた壺のような茶器は、棗ではなく濃茶用の茶入の場合があります。美術品としてコレクションするだけでなく、実際に茶道で使用する場合は混同しないよう注意してくださいね。