貯蓄や資産運用への関心が高まるなかで、注目されるのが金融商品の選び方。これから投資を始めようと考えている初心者のなかには、保険と投資信託のどちらがお得か知りたい人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、保険と投資信託にはどのような違いがあるのかについて解説します。それぞれのメリット・デメリットのほか、どちらを選ぶべきかも説明するので、商品選びの参考にしてくださいね。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
まずは保険の概要や、資産形成に活用できる保険の種類について見ていきましょう。
保険とは、保険料を負担することで万が一の事態に備える金融商品。病気や事故などの不測の事態や、火災や台風といった自然災害など、リスクに対して不安を抱えている人から保険料を集め、集めた資金から保険金を支払う仕組みです。
大きく分けると、保険には生命保険と損害保険の2種類があります。生命保険は人の生死に対して保険金が支払われるもので、代表的なのは定期保険・養老保険・終身保険など。損害保険は事故による損害額に応じて保険金が支払われるもので、自動車保険・火災保険・賠償責任保険などが該当します。
そのほか、医療保険・傷害保険・がん保険など、生命保険と損害保険のどちらともいえない第三分野と呼ばれる保険もあります。
終身保険は、一生涯保障が続き、亡くなったときに死亡保険金が受け取れる保険です。生きているあいだにお金を受け取るためには、解約して解約返戻金をもらうことになります。
終身保険には満期がないので満期保険金は受け取れませんが、期間が経過するごとに解約返戻金の額が増えていくのが特徴。死亡保険金は葬儀費用や相続税対策に使われることが多く、解約返戻金は老後資金や教育資金にも使えます。
終身保険は保障が一生涯続くので、保障を確保しながら長期的に資産形成したい人におすすめです。
養老保険とは、亡くなった場合は死亡保険金を、生存して満期を迎えた場合は死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れる保険です。たとえば20年後に満期保険金が100万円もらえる養老保険では、20年経たずに亡くなったときも死亡保険金として100万円受け取れます。
養老保険の保険期間は、10年や20年など契約時に決めた年数保障が続く年満期と、60歳など一定年齢まで保障が続く歳満期の2種類。子どもの進学や年金受給前などお金が必要な時期に合わせて保険期間を設定できるので、計画的に資産形成したい人に向いています。
変額保険とは、払われた保険金を保険会社が運用し、運用実績によって死亡保険金・解約返戻金・満期保険金などが増減する保険です。運用実績がプラスになれば払い込んだ保険料以上の保険金を受け取れる可能性がある一方で、運用実績がマイナスになると元本割れを起こすリスクもあります。
ただし、運用実績にかかわらず基本の保険金額が最低限保証されていることが多いので、保障を確保しつつ高いリターンをねらいたい人におすすめです。
死亡時に保険金を受け取れるタイプの変額保険のほかにも、年金として受け取れる変額個人年金を取り扱っている保険会社もあります。
個人年金保険とは、払い込んだ保険料を原資として、契約時に決めた年齢から年金を受け取れる保険です。たとえば、65歳まで保険料を払い込み、その後は積立金をもとにして年金が支払われることになります。
公的年金だけでは老後資金が足りない場合も多く、年齢を重ねても安心して生活するためには自分でもお金を用意しなければなりません。個人年金保険には確定年金や有期年金など受け取り方を選べる商品が多いので、老後の生活費用を貯めておきたい人に適しています。
被保険者が年金受け取り開始前に死亡した場合は、家族などが死亡給付金を受け取ることが可能です。
生命保険と投資信託はどちらも資産運用に活用できますが、どちらがいいか判断するためにはそれぞれの特徴を知っておかなければなりません。資産運用に生命保険を活用するメリットには、以下の2つがあります。
資産運用に生命保険を活用するメリットのひとつは、節税効果です。生命保険の保険料を支払っていると、確定申告の際に生命保険料控除を受けることが可能。控除を受けられれば所得税や住民税が軽減されるため、節税につながります。
生命保険料の控除額は、年間の支払保険料等によって決まり、年間の保険料額が20,000円以下であれば、支払保険料等の全額が控除されます。20,000円より大きく40,000円以下の場合の控除額は、「支払保険料等×1/2+10,000円」で算出可能です。
40,000円より大きく80,000円以下の場合の控除額は「支払保険料等×1/4+20,000円」となります。80,000円を超える場合の控除額は、一律40,000円です。
生命保険は、投資の知識がなくても始められる資産運用だといえます。
投資信託で投資を行う場合、商品の種類や銘柄を選ぶほか、売買のタイミングを考えなければならない場合も少なくありません。そうなると投資に高いハードルを感じてしまい、資産運用そのものに挑戦できなくなることもあるでしょう。
それに対し、生命保険は加入前にどれにするか選ぶ必要はあるものの、加入後の手間はあまりかかりません。資産を増やすための運用は基本的に保険会社が行うので、一般的な投資よりも知識がない状態で始めやすいといえます。
生命保険を早期解約すると、元本割れすることがあります。
生命保険はいつでも解約できますが、受け取れる解約返戻金の額は保険の種類や契約期間などによって変化するもの。基本的には、払い込んだ保険料の合計額よりも少なくなってしまいます。とくに短期間で解約した場合にもらえる解約返戻金は、まったくないかごくわずかです。
また、変額保険のように運用実績によって満期保険金や解約返戻金の額が変わる保険の場合は、早期解約しなくても元本割れする可能性があるので注意。生命保険を利用すれば必ず利益を得られるというわけではない点は、きちんと覚えておきましょう。
インフレリスクや為替リスクによって資産額が変動する可能性があるのも、生命保険のデメリットです。
たとえば、30歳で加入して60歳になったら年間40万円を受け取れる契約で、個人年金保険に加入したとしましょう。30年後に受け取れる金額が年間40万円であることに変わりはありませんが、年2%のインフレが30年間進むと将来受け取れる年金の価値は毎年2%ずつ下がります。
年間40万円もらったとしても、物価が上がっていれば資産が目減りし、老後の生活を送るには不十分だと感じてしまうこともあるでしょう。
また、円をドルやユーロなどの外貨に換えて運用する外貨建て保険を利用する場合、インフレリスクはある程度回避できても為替リスクの影響を大きく受ける可能性があり、為替相場の状況によって資産価値が変動します。
為替リスクは、保険料を支払うときや保険金を受け取るときに発生。円安になると日本円換算の保険料が高くなり、円高になると日本円換算の受取額は減少します。
ここからは、投資信託の特徴を見ていきます。
投資信託は、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用のプロがさまざまな金融商品に投資して運用する商品のことです。投資信託を運用する会社が運用プランを考え、資産を管理している信託銀行に運用を指図します。
信託商品は元本が保証されておらず、運用がうまくいけば投資家は利益を得ることができますが、運用がうまくいかなければ元本割れすることもあります。
投資信託は、投資対象となる地域や資産、運用方法などによってさまざまな種類に分かれ、日本国内のほか先進国や新興国にも投資可能です。地域が変わるとリスクやリターンも変わってくるので、何を目的としてどこに投資するかを決める必要があります。
投資信託で投資対象となる資産は、株式・債券・不動産(REIT)・コモディティ(金や原油など)です。これらの資産はそれぞれ異なる値動きをするため、ひとつに投資するより投資信託で分散投資したほうがリスクを抑えられます。
投資信託の運用方法は、インデックス型とアクティブ型の2種類。インデックス型は市場の平均的な値動きに連動するもの、アクティブ型はインデックスを上回る成果を目指すものです。インデックスは着実にリターンを得たい人に、アクティブ型はインデックス型よりも大きなリターンをねらう人に適しています。
投資信託のメリットは、少額から資産運用を始められることです。一般的に株式は数万円から、債券は国債であれば1万円から購入することになりますが、投資信託であれば100円から投資できる商品もあります。
少額からでも早く投資を始めておけば、得られる複利効果が大きくなります。複利効果とは資産運用で得た利益を引き出さずに再投資することで、利益が利益を生む効果のこと。複利効果は投資期間が長いほど得やすくなるため、早めに投資信託を始めておけば資産を増やしやすくなるでしょう。
分散投資でリスクを減らせるのも、投資信託のメリットです。
投資信託は株式や債券など複数の商品に少しずつ投資ができるので、ひとつのパッケージに投資をするだけで自動的に分散投資の効果を得られます。異なる値動きをする複数の商品がセットになった投資信託を活用すれば、投資のさまざまなリスクを軽減することが可能です。
運用を専門家に任せられるのも、投資信託のメリットのひとつです。
投資に必要な知識を、個人で身につけるのは難しいもの。株式や債券などの商品を自分で細かく選んで投資し利益を得るためには、時間と手間をかけて勉強しなければなりません。普段から仕事やプライベートで忙しい場合、投資に割ける時間はないと感じてしまうでしょう。
投資信託では、投資のプロが自分の代わりに運用してくれます。一般的な投資のイメージのように、チャートを注視して頻繁に売買する必要はありません。専門家に任せながら手軽に投資ができるのは、大きなメリットといえるでしょう。
投資信託を活用することで投資できる株式や債券などは、政治・経済の情勢や企業の業績といったさまざまな理由で価格が変動する商品です。価格が変動することにより、損益が大きく変わる可能性があります。
投資信託では元本が保証されていないため、大きな損失が出るとその分資産が大きく減ってしまいます。利益を大きく増やせる可能性がある一方で、価格の変動によって損失を被る可能性があるのは知っておきましょう。
生命保険と投資信託のどちらがお得なのかは、一概には言えません。何を重視する場合にどちらを選ぶといいか、ここで確認しておきましょう。
お金を増やすことを目的とするなら、投資信託を活用するのがおすすめです。実際にシミュレーションしてみると、投資信託のほうが生命保険よりもお金を増やしやすいことがわかります。
30歳の男性が月20,000円を30年間・年利3%で投資信託運用した場合の試算は、金融庁の資産運用シミュレーションでは、投資信託を30年間運用した場合の資産は11,654,738円となります。
一方、支払い期間30年・月払い保険料2万円の保険の場合はどうでしょうか。一例として、アクサ生命の変額保険「ユニット・リンク保険」を主契約のみ(3大疾病保険料込免除特約・7大疾病保険料込免除特約なし)で利用した場合、30年後の運用実績は約9,310,000円、明治安田生命の「5年ごと利差配当付個人年金保険(2011)年金かけはし」を利用した場合は、年金受取累計額は約7,620,000円となります。
このように、投資信託を活用した場合のほうが資産を増やせる可能性が高いといえます。生命保険では、保険料の全額が運用されるわけではありません。保険料のうち、付加保険料や各種手数料を差し引いた部分のみが運用されるので、投資信託より元本が少ない分利益も少なくなります。
家族がいる場合や病気や怪我に備えたい場合など、保障が必要な場合は、生命保険を活用するのがおすすめです。資産運用で利益を増やせる可能性が高いのは投資信託のほうですが、投資信託には保険のような保障はないので、死亡や高度障害といった万が一の事態になっても保険金は支払われません。
生命保険で資産運用をした場合も、解約返戻金や満期保険金は投資信託と同様元本割れを起こすリスクがありますが、運用実績が悪い場合でも死亡保障の金額は最低限保証されるケースが多いので、最悪の事態に陥っても家族にお金を残せるのは魅力といえるでしょう。
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