複数を使い分けることで、お金を管理しやすくなる銀行口座。金融機関の口座は複数持つべきなのか、どのように使い分けすればよいのか悩んでいる人もいるでしょう。
本記事では、銀行口座を複数持つメリットやデメリット、使い分けのコツを紹介します。メインバンクとサブバンクを使ったお金の管理方法を理解し、計画的な貯蓄やリスクの備えに役立ててみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
銀行口座は1つでなく、複数持っておくのが理想といえます。生活費と貯蓄の区別をつけずに1つの口座で管理すると、お金を使いすぎてしまうこともあるでしょう。口座を複数持っていない場合、銀行がシステムトラブルや破綻に陥った際に口座が使えなくなるリスクも考えられます。
「マイボイスコム株式会社が2021年4月に実施した調査」によると、銀行口座を2つ以上持っている人の割合は90.2%。実際に複数の銀行口座を持っている人が多くいることがわかります。生活費・貯蓄の区別をつけるため、またはリスクに備えるためには、複数の銀行口座を持つほうがよいでしょう。
近年、同じ銀行では複数の口座を作れないのが一般的です。たとえばゆうちょ銀行では、原則1人1口座までしか開設できません。口座数が制限される主な理由には、手続きミスの防止・口座管理コストの削減・犯罪防止の3点が挙げられます。
1つの銀行に同じ名義の口座が複数あった場合、手続きの際にミスが起こりやすくなるでしょう。たとえば、引っ越しする先々で新しい口座を開設できると、同じ名義で住所の異なる口座が複数存在することになり、手続き時の混乱を招きかねません。
また金融機関が口座を管理する際は、コストが発生します。同じ銀行でいくつも口座が開設され、その結果使われない口座が増えると、金融機関側のコストは増大するばかりです。
原則1人1口座と制限される理由として、犯罪の防止も大きな意味を持ちます。架空請求の振込やマネーロンダリングを目的とした、銀行口座の不正利用はあとを絶ちません。いくらでも口座を開設できると、不正利用を目的とした口座の売買につながる可能性があります。
ただし例外として、みずほ銀行ではインターネット支店とそれ以外の本支店で1つずつ口座を開設できますよ。
手続きミス防止や管理コストの削減を目指すためにも、悪質な犯罪に銀行口座を利用されることを防ぐためにも、同じ銀行で開設できるのは原則1口座です。ただし銀行によって対応が異なるため、同じ銀行で複数の口座を持ちたい場合は開設時に確認しましょう。
複数の銀行口座を使い分けると、貯蓄のしやすさ・リスク分散・特典獲得などのメリットが得られます。複数の口座を持つか悩んでいる人はメリットを確認したうえで、現状のお金の管理状態とどのように違うかをチェックしてみましょう。
複数の銀行口座を持つと目的別に使い分けられるため、計画的にお金を貯められます。1つの銀行口座でやりくりすると、貯金に回すお金と使ってもよいお金の区切りがはっきりしないでしょう。結果的にお金を使いすぎてしまい、思うように貯金できない状態につながります。
歴史学者と政治学者の顔を持つパーキンソンは、ある分だけお金を使ってしまうことをパーキンソンの法則として提唱しました。パーキンソンの法則に基づき、貯蓄用と生活用の口座を切り離しておくと、使っていいお金が生活用の口座に限定されるため、貯蓄用のお金を残しておけます。
いろいろな理由をつけてお金を使ってしまうことは、人間の性質のひとつといっても過言ではありません。その点、メインバンクと貯蓄用のサブバンクを分ければ使いすぎを防止できるため、お金を貯めやすい状況が作れるでしょう。
金融機関のシステムトラブルや破綻のリスクを分散できる点も、複数口座を持つメリットです。銀行口座を持つ金融機関でシステムトラブルが発生すると、一時的にお金が引き出せなくなるといったリスクが考えられます。
複数の口座を持っていれば、なんらかのトラブルがあった際にも柔軟に対処できるでしょう。たとえば、すぐにATMで現金を引き出したい、振込したい場合なども、メインバンクの代わりにサブバンクで対応できます。
1,000万円を超える資産がある場合、口座の複数開設はリスクヘッジとして有効です。もし金融機関が破綻すると、預金保険制度によって一定額まで預金が保護されます。ただし普通預金や定期預金などは、1,000万円と利息までしか保証されません。
1,000万円を超える部分が支払われるかどうかは、金融機関の財政状況によって決まります。1つの口座に1,000万円以上を預けている場合は、複数の銀行口座に資産を分けてリスクを分散させるのが賢明です。
複数の銀行口座を使い分けると、それぞれの銀行で特典がもらえます。提携するポイントカードのポイント倍率が上がったり、ギフト券がプレゼントされたりと、銀行によって特典の内容はさまざまです。
複数の特典を受け取ることで節約につながるため、浮いたお金を貯蓄にも回せるでしょう。
複数の口座にお金を振り分けることは、必ずしもよいことばかりではありません。これから紹介する2つのデメリットを確認することで、複数の口座を効率的に活用するための注意点が見えてくるでしょう。
振込を利用して口座間でお金を移動させる際は、振込手数料がかかります。同じ銀行であれば、手数料がかからないことも珍しくありません。しかし別の銀行へ振込をする場合は、基本的に手数料が発生します。1回あたり数百円程度であるものの、回数を重ねると負担が大きくなるでしょう。
たとえば、三井住友銀行から別の銀行へ振り込む際の手数料は、インターネットバンキングやキャッシュカードの利用で165円です。振込金額が3万円以上のケースでは330円がかかります。
三菱UFJ銀行から別の銀行へ振り込む場合、インターネットバンキングを利用すると154円、3万円以上の振込は220円です。キャッシュカードを使うと、3万円未満の場合は209円、3万円以上は330円です。
銀行口座によって金額が異なるため、現在のメインバンクや開設したい銀行口座の振込手数料を調べてみましょう。できるだけ手数料を抑えたいなら、振込手数料に無料回数を設けている銀行口座などを利用するのがおすすめです。
手数料は2023年2月時点のもの
口座が多すぎると管理する手間が増えるため、むやみに開設するのは避けたいところです。開設した口座の分だけ通帳・キャッシュカードが発行され、管理の手間が生じます。ネット銀行であれば、口座ごとにID・パスワードの管理が必要です。
口座が多いと、すべての資産を把握するのにも手間がかかります。管理しやすい分だけを持つことが、複数口座のメリットを活かすポイントです。
単に銀行口座を複数持つのではなく、使い分けのコツを取り入れるとお金の管理がスムーズです。現在メインバンクしか持っていない人、口座は複数あるけれど使っていないものがある人は、5つのコツ・管理方法を活用してみてください。
生活費用・貯蓄用・緊急用の3つの銀行口座を持つことが、複数口座の使い分けのコツです。生活費用口座は、日々の買い物や光熱費などの支払いに使う口座。貯蓄用口座はお金を貯めること、緊急用口座は冠婚葬祭などの突発的な出費に備えることを目的とした口座です。
生活費用口座に給料が入ったら、貯蓄用口座と緊急用口座に必要分を振り分けましょう。日々のやりくりでは生活費用口座のみ使うようにすると、貯金に手をつけずに済みます。
貯蓄用口座と緊急用口座を分ける理由は、目標金額の達成まで貯蓄用口座のお金を使わないように徹底するためです。せっかく貯まってきた貯蓄用口座に一度手をつけてしまうと、ある分だけ使うという心理が働いて貯蓄ペースが落ちてしまいます。
スムーズに貯蓄できるよう3つの口座を管理し、それぞれの役割とルールを守りましょう。
生活費や公共料金などの支払いは、1つの口座にまとめると便利です。家賃・水道光熱費・食費の支払い・クレジットカードの引き落としなどをまとめて管理することで、支払い忘れを防げますよ。
反対に複数の口座に分けて管理すると、口座間でお金を移動する際に振込手数料がかかる場合があります。支払いに関わるものを1つにまとめておくと、支払い忘れの心配も手数料の負担も不要です。
目的に合わせて貯蓄用口座を管理すると、お金が貯まる環境を整えやすくなり、貯金を崩してしまうことも防げます。生活費用・貯蓄用・緊急用の3つの口座管理に慣れてきたタイミングなどで、積立定期預金や定期預金を活用してみましょう。
積立定期預金は毎月一定額を積み立てていき、目的のお金を貯める方法です。たとえば、住宅購入の頭金・挙式費用・子どもの教育資金といった目的がある場合に向いています。
特に目的が決まっていないお金は、定期預金に預けるのがおすすめです。定期預金は預け入れの期間が決まっており、満期までは原則引き出せません。金利が高めに設定されるため、同じ期間預け入れるのであれば、普通預金よりも定期預金のほうがお得です。
貯金に集中する環境を整えやすい点は、積立定期預金・定期預金に共通した強み。これらを活用しながら目的に応じてお金を管理すると、貯蓄が苦手な人も計画的に貯められるでしょう。
なお、さまざまな金融機関から出ている定期預金商品を比較検証し、ランキングで紹介している記事もあります。定期預金に興味がある人は、選び方のポイントと一緒にチェックしてみてください。
不測の事態に備えて、緊急用口座に数か月分の生活費を入れておきましょう。自然災害・急な病気・失業などで、突然お金が必要になることもあるからです。冠婚葬祭で急な出費が必要になった場合にも、緊急用口座が役立ちます。
緊急用口座を用意していない場合、目的があって貯めておいた預金を取り崩してしまうことも。それでも不足したときには、生活費の工面が困難になるケースも考えられます。
緊急用口座に入れておく金額の目安は、生活費の3~6か月程度です。休業の手当がない自営業の人や、養う家族がいる人は、6か月~1年程度と余裕を持たせておくとよいでしょう。
利用していない口座には管理手数料がかかる場合があるため、解約するのがおすすめです。金融機関によっては、2年以上利用されていない口座などに対し、口座管理手数料の支払いを定めています。三菱UFJ銀行やりそな銀行の場合、手数料は年間1,320円(税込み)です。
また、10年以上取引がない預金は休眠預金と呼ばれ、自動的に民間公益活動に活用されます。休眠預金の状態でも、金融機関に問い合わせて必要書類を提出すれば、お金を引き出すことは可能です。
口座の複数開設は、管理手数料の発生や休眠預金になる可能性がともないます。使わない銀行口座がある人は別の銀行口座にお金を移し、早めに解約するのがよいでしょう。
手数料は2023年2月時点のもの
これからサブバンクを開設するなら、ネット銀行がおすすめです。ネット銀行の多くは、振込手数料やATM利用手数料が低く設定されています。さらに、普通預金や定期預金の金利が高めです。ネット環境さえあれば自宅で手続きできるため、金融機関の実店舗に行く手間も省けます。
以下の記事では、ネット銀行21社の金利・手数料・使いやすさを徹底検証しています。サブバンクの口座開設を検討している人は、使い勝手のよい口座がないかチェックしてみてください。
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