預金業務は行わず、融資をメインで取り扱うノンバンク。ノンバンクに怖いイメージを持っている人や、そもそもノンバンクについてはあまり知らない人は多いのではないでしょうか。
本記事では、ノンバンクを利用して住宅ローンを組むメリット・デメリットを解説します。フラット35を中心に、どんな人にノンバンクが向いているかなども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
ノンバンクと銀行は、扱う業務や住宅ローンの取り扱い商品が違うもの。具体的に異なる点を解説します。
ノンバンクでの住宅ローンは、法律をもとにした厳粛な管理のもと運用されており、基本的には銀行で組む住宅ローンと変わりません。ノンバンクと銀行は、それぞれ根拠となる法律が異なります。銀行は預金の預け入れ機能を有する「銀行法」であるのに対し、ノンバンクは融資のみを行う「貸金業法」です。なかでも、住宅ローンをメインで取り扱う場合は「モーゲージバンク」とも呼ばれます。
法律の違いはあれど、ノンバンクも銀行のようにしっかりとした運営体制を有しているので、住宅ローン検討の際は、銀行と同じく候補のひとつとして考えてよいでしょう。
なお、貸金業法では総量規制として年収の3分の1を超える借り入れを禁止していますが、住宅ローンはこの総量規制の適用外です。貸金業法について詳しく知りたい人は日本貸金業協会のサイトをチェックしてみてください。
ノンバンクでは主にフラット35を取り扱っています。預金業務を持たない多くのノンバンクがフラット35を取り扱っているのは、銀行より資金調達面では劣るものの金利面で利ざやを狙いやすいためです。フラット35は住宅ローンが債権化され、住宅金融支援機構に買い取られます。
ノンバンクは審査が通りやすく、スピード感があることがメリットです。そのほかのメリットもあわせて解説します。
銀行で融資を受ける場合は、収入が安定していることが重視されるため、正社員以外は審査に通りづらい傾向にあります。
ノンバンクは融資を行うことで経営が成り立っているので、銀行の審査に通過できない個人事業主や非正規で雇用されている人も通る可能性があるでしょう。フラット35の審査基準は契約者の収入より、物件面での条件が厳しく設定されているためです。
ただし、ノンバンクでも支払いを延滞していたり信用情報にキズがある場合、融資を受けられる確率は低いでしょう。
銀行の場合、本審査に1〜2週間、融資が開始されるまでに2週間〜1か月程度かかりますが、ノンバンクの住宅ローンは、本審査で最短3日、融資開始まで1〜2週間程度と借り入れまでが短期間です。たとえば、モーゲージバンクで最大手のアルヒ株式会社の住宅ローンは最短3営業日で本審査が終わります。
融資開始までの期間が短いことは、金利面でメリットがあります。住宅ローンは、申し込み日時の金利ではなく融資時の金利が適用されるため、期間中に金利の基準が更新されて、返済額が変わってしまうリスクを軽減できます。
事前審査が早く終われば、気になっている物件がほかの人に渡る前の契約も可能です。ただし、時期によっては審査に時間がかかる場合もあるので注意してください。
ノンバンクは引き落とし口座を自由に選べます。銀行で融資を受ける場合は、その銀行の口座を開設する必要がありますが、ノンバンクは預金業務を行っていません。そのため、住宅ローンのために口座開設を行う手間が省けます。
ノンバンクで住宅ローンを組むデメリットは、金利の高さと住宅ローン商品の少なさです。以下でそれぞれを解説するので、住宅ローンを検討する際の参考にしてください。
ノンバンクの住宅ローンで借りるデメリットは、一般的に銀行よりも金利が高い点です。銀行が扱っている住宅ローンの審査は保証会社を通します。契約者が住宅ローンの返済を滞らせたとき、多くの場合は保証会社が代わりに負担するため、銀行側は貸し倒れのリスクの軽減が可能です。
一方、ノンバンクは保証会社を通さず自社で審査するため、貸し倒れのリスクがあります。結果、金利が比較的高く設定されている傾向に。貸しつけの資金を外部から得るためのコストも関係しているでしょう。
銀行の変動金利タイプと、フラット35などの全期間固定金利タイプを比較してみます。なお、以下のシミュレーションは、変動金利タイプを年利1.2%、全期間固定金利タイプは年利1.88%とし、3,000万円の借入額を返済期間35年、元利均等方式という条件を適用しています。
変動金利タイプの場合、毎月の返済額が8万7,510円で総返済額は約3,675万円です。一方、全期間固定金利タイプで試算すると、毎月の返済額は9万7,541円で総返済額は約4,096万円。両者を比較すると変動金利の総返済額ほうが、およそ421万円少ないことがわかります。
ノンバンクが主に取り扱っている商品はフラット35です。フラット35は、金利が割高な全期間固定金利しか選べません。
銀行の住宅ローンと比べるとノンバンクで選べる住宅ローンの商品は限られています。変動金利や固定期間選択型金利タイプを選択できないため、選択肢が少ないことを事前に把握しておきましょう。
ここまで解説してた通り、ノンバンクの住宅ローンにはメリット・デメリットがあります。以下では、それらを踏まえて、ノンバンクの住宅ローンがどのような人に向いているかを解説します。
ノンバンクの住宅ローンを組むのに向いているのは、個人事業主や非正規雇用者などの審査に通りにくい属性の人です。ノンバンクにはフラット35をはじめとして、個人事業主や非正規で働く人向けに、申し込み条件を設定している商品があります。一般的に銀行から借り入れを行う場合は、収入が安定しにくい正社員以外は審査が通りにくいですが、ノンバンクで審査に通ることも珍しくないでしょう。
融資を受けづらい再建築不可物件を購入したい人も、ノンバンクの住宅ローンに向いているでしょう。再建築不可物件の購入は、一般的に住宅ローンを組むことは難しいもの。住宅を解体したあとは家を建てられず土地の価値が低くなり、住宅を担保としても金融機関は債権を回収しにくくなるためです。
再建築不可物件の審査は通常の物件より厳しくなりますが、ノンバンクは銀行よりも柔軟に住宅ローン審査をしてくれることもあります。再建築不可物件の購入を考えている人は視野にいれておきましょう。
一般的にノンバンクは審査に通りやすいとされており、銀行の審査に落ちても柔軟に対応してくれる可能性があります。ノンバンクは独自の審査基準があるため、銀行の住宅ローン審査に落ちた場合は検討してみるとよいでしょう。
とはいえ、もちろんノンバンクでも審査に通らないケースもあります。その場合は、夫婦2人で住宅ローンを組めるペアローンを申し込んだり、保証人を追加したりする方法も考えましょう。また、頭金を増やして借入額を減らすことも対策のひとつです。
ノンバンクは審査が甘い傾向にあるとはいえ、信用情報機関に自己破産した履歴がある期間は、審査に通る可能性は低いでしょう。信用情報機関とは、金融機関から提供されたクレジットカードやローンの申し込み情報を管理・提供する機関です。
日本に信用情報機関は3つあります。消費者金融が主に加盟するJICC(日本信用情報機構)、クレジットカードの加盟が多いCIC(株式会社シー・アイ・シー)、そして銀行や信用金庫などが加盟するKSC(全国銀行信用情報センター)です。
自己破産の履歴は信用情報機関によって異なり、JICCとCICは5年、KSCは7年と定められています。KSCはすべての銀行が加盟しているため、銀行で住宅ローンを申し込むときはKSCの情報を照らし合わせるのです。7年は自己破産の履歴が残るため、8年目以降は住宅ローンの審査に通る可能性が上がるでしょう。
KSCに加入していない一部のノンバンクを利用する手段もありますが、金利の高い商品が多く、JICCやCICの情報は見られることもあるため融資を受けられる可能性は低いといえます。フラット35はKSCの情報も見ますが、自己破産歴が残っていても融資の基準は柔軟に対応してくれるケースがあるため検討してみてください。
ノンバンクへ借り換えは可能ですが、金利が高くなりやすいため総返済額が多くなる恐れがあります。
変動金利からフラット35に借り換えると全期間固定金利に変わるため、返済計画は立てやすくなるでしょう。しかし、全期間固定金利は金利が高く設定されていることがほとんどのため、利息負担額は増えます。結果的に、毎月の返済額や総返済額が増えるため、メリットとデメリットを比較して選びましょう。
多くのノンバンクが提供するフラット35は、団体信用生命保険の加入は必須ではありません。金融機関で住宅ローンを組むときは団体信用生命保険への加入は必須のため、ほとんどが住宅ローンの金利に上乗せされています。
団体信用生命保険とは、債務者にもしものことがあったときに残された人たちや家を守る制度です。住宅ローン契約者が支払いできなくなると生命保険会社が残債を負担してくれます。
団体信用生命保険に加入していないと、残された家族にローン残高の返済が求められるため、フラット35は任意ではありますが加入を検討してもよいでしょう。
こちらの記事では、住宅ローンの選び方や金利タイプ別におすすめの住宅ローンを紹介しています。ノンバンクで取り扱いが多いフラット35についても詳しく掲載されているため、ぜひチェックしてください。
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