購入した住宅を担保として金融機関から融資を受けられる住宅ローン。本来は住宅購入額にあわせて融資額が確定しますが、ほかの支払いに充てるための資金として多めに借りることは可能なのか、と疑問に思う人もいるかもしれません。
本記事では、借入額を多く借りる方法やオーバーローンについて詳しく解説します。おすすめの住宅ローンや諸費用の節約方法なども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
オーバーローンを利用すれば、住宅購入費より数百万円単位で多めに融資を受けられる可能性があります。
オーバーローンとは、購入した住宅の評価額をローン残高が上回っている状態のこと。最近では、住宅ローンを組む際にあらかじめ住宅購入価格より多めの融資を受けることも指します。
オーバーローンは、諸費用の上乗せなどにより実現が可能です。たとえば、3,500万円の住宅を購入した際、そこに諸費用100万円を含めることで、3,600万円のローンを借りることができます。
住宅ローンでオーバーローンを利用できるケースは下記の2つに限定されています。
住宅をリフォームしたい場合
諸費用分も上乗せしたい場合
住宅購入費以上に多く借りることができるケースを順番に確認していきましょう。
中古の住宅をリフォームしたい場合に、多めに借り入れができるかもしれません。リフォームローンという制度もありますが、住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。
みずほ銀行の住宅ローンとリフォームローンの金利を比較してみましょう。
<住宅ローンの金利>
変動金利:0.375%~
固定金利(借入期間31~35年):1.690%~
固定金利(借入期間10年):1.450%~
<リフォームローンの金利>
変動金利:3.975%
固定金利(10年以下):4.600%
固定金利(10年超):5.250%
上記のように、リフォームローンよりも住宅ローンの金利が低い傾向にあります。リフォーム分の費用も、低金利の住宅ローンを利用しましょう。リフォームの費用分も住宅ローンとしてひとつにまとめて管理できるので手間がかからないのもメリットです。
住宅の新規購入や借り換えの際の諸費用を上乗せして借りることができる金融機関もあります。諸費用には具体的に下記のような費用が含まれるので確認しましょう。
火災保険料
保証会社手数料、保証料
ローン取扱手数料
電子契約手数料
固定金利手数料
仲介手数料
担保関連費用
印紙税
引越費用
修繕積立金
リフォーム費用
付帯工事費用
管理準備金
水道過入金
住宅の新規購入の場合も諸費用を確認します。
新築:物件価格の3~7%前後
中古:物件価格の6~10%前後
たとえば、4,000万円の新築マンションを購入し、諸費用が5%の場合では、諸費用の額は200万円です。
借り換えの場合の諸費用も確認しましょう。
事務手数料や保証料などで30~100万円
諸費用を用意するための諸費用ローンという制度もありますが、住宅ローンと比べると金利が高めに設定されています。住宅ローンに諸費用も含めて借りたい場合は諸費用を上乗せできる金融機関を選択しましょう。
オーバーローンを利用できないケースで利用すると契約違反になり、一括返金や借り入れ不可になるかもしれません。オーバーローンを利用できないケースは、たとえば以下の2つです。
車や家具の購入に充てる場合
資産運用の資金に使う場合
禁止事項を事前に確認して契約違反にならないようにしましょう。
住宅ローンは住宅を購入するためにあるので、車や家具の購入に利用することはできません。契約書にも使用目的が明記されているので、住宅購入に関する目的のみで利用することが決まっています。
一部組み込み型の家具や家電は住宅ローンの対象になるかもしれません。家を作る時点で組み込み型の家具や家電を採用することが条件です。ただし、金融機関から指摘が入った場合は住宅ローンの対象外になる場合があるので注意しましょう。
組み込み型の家具や家電は一般的な家具、家電よりも割高になるケースが多く手間もかかるので、無理に組み込み型を検討する必要はないでしょう。
住宅ローンを使って株式投資のような資産運用に利用することは、目的外使用になるので利用できません。
先述したとおり、住宅ローンは自宅購入のためという条件があります。株式投資やFXなどはもちろん、賃貸を前提とした不動産投資の目的で住宅ローンを利用することもできません。
銀行は資金が正しい振り込み先に送金されているか、融資後に必ずチェックしています。契約違反が発覚すると住宅ローンの一括返済を求められるでしょう。
住宅ローンを多めに借りる前に、まずは必要性を再確認しておくことが大事です。具体的なメリットを知ったうえで、本当に多めに借りたほうがよいのかを検討しましょう。
住宅ローンは住宅を購入するための特別なローンなので、ほかのローンより低い金利で長期的に借り入れができます。みずほ銀行の各種ローンの金利を比較してみましょう。
住宅ローン:0.375~1.69%
カードローン:2~14%
多目的ローン:5.875~6.9%
上記のように住宅ローンの金利は、ほかのローンに比べるとかなり低く設定されています。住宅ローンで諸費用分も借り入れした方が、費用を抑えられるかもしれません。金利の低い住宅ローンを長期的に借り入れることで、毎月の返済額を抑えられます。
オーバーローンを利用することで、自己資金が少なくても住宅を購入できるかもしれません。
オーバーローンと似たような言葉でフルローンと呼ばれる制度があります。フルローンとは、オーバーローンのように諸費用も上乗せで借り入れをせず、住宅購入に必要な費用だけを借り入れるローンです。
住宅ローンをフルローンで組む場合は頭金とは別に諸費用を支払うので、資金不足で住宅を購入できないかもしれません。一方、オーバーローンは諸費用分も住宅ローンに含められるため、手元に資金がなくても住宅を購入できる可能性があります。
住宅ローンに加えて、諸費用分の上乗せやリフォーム費用を借りるなどで住宅ローン控除の節税額が増えるかもしれせん。住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高の0.7%にあたる額を所得税から控除する制度で、控除期間は最大13年間あり、控除額は最大455万円です。
リフォーム費用が住宅ローン控除の適用を受けるための要件は、住宅ローン控除の利用条件に加えて、下記の条件があります。
費用が100万円以上
建築基準法上の増改築、大規模な修繕、模様替えのような特定の工事をした場合
リフォームをした際、住宅ローン控除以外の節税制度としてリフォーム減税を利用するのもよいでしょう。リフォーム減税は、耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居、長期優良住宅化のいずれかのリフォームをした場合に適用され、条件に応じて所得税が5〜10%控除されます。ただし、住宅ローン控除とリフォーム減税は併用できないので注意しましょう。
住宅ローンを多めに借りることはメリットもありますが、場合によってはデメリットになる可能性もあります。
オーバーローンを利用すると頭金がないといったケースが多いので、融資率が高くなり金利が高くなるかもしれません。融資率とは住宅購入価格に対して借入額の割合のこと。融資率が高いと資金力が弱いと判断されるため、金利が高く設定される可能性があります。
例として、フラット35の融資率を確認しましょう。フラット35では融資率(借入額÷住宅の購入価格)が90%を超える場合は、返済困難といったリスクがあるので慎重に審査し、金利を高く設定します。オーバーローンは基本的に住宅の購入価格よりも多く借りるので融資率が100%を超えるもの。融資率が高い分、多くの金融機関で通常よりも金利が高く設定されるでしょう。
オーバーローンを利用すると諸費用分も借り入れるので、フルローンのような住宅の価格のみの借り入れに比べると返済額や利息が増えるかもしれません。住宅の価格のみを見て無理がないと判断しても、諸費用分も上乗せして借り入れをすると、無理な返済計画になる可能性があります。そのため住宅の価格だけでなく諸費用分も含めて、ローンを組めるかを慎重に判断しましょう。
手元の資金に余裕が出てきたタイミングで、まとまった額を返済できる繰り上げ返済を積極的に利用して返済額を抑える、といった工夫が大事です。
夫婦や親子で共同ローンを組みオーバーローンを利用する際は、トラブルになることもあるでしょう。たとえば、離婚や別居によるケースです。
離婚や別居の際は、自宅を売却するケースも多いでしょう。オーバーローンの場合、売却額よりローン残高が高くなるため返済のための自己資金が必要になります。たとえばローンの残高が2,000万円だとして売却額が1,500万円だった場合、500万円を売却時に用意しなければなりません。
片方が継続で住み続けることもできますが、連帯保証人の契約変更が難しく、支払いの滞りが起こったときにトラブルに発展する可能性があります。
オーバーローンで自宅を売却をしたい場合は、任意売却を利用するのが賢明です。任意売却であれば、金融機関との交渉によってローン残高があっても自宅の売却ができます。売却後のローン返済は続いてしまうものの、後々のトラブルは防ぎやすいでしょう。
住宅ローンは使用目的が明記されており、住宅の購入に関連する目的のみで使用できる決まりです。虚偽で住宅購入目的として多めに申請しようとしても、契約時は各種契約書類の提出が必要になるので、住宅購入金額に比べて希望の借入額が多ければ金融機関はすぐに気づきます。
万が一住宅以外に借入額を使ってしまった場合は契約違反として、一括返金や違約金の請求、契約解除などのペナルティを課せられるかもしれません。住宅ローンでの主な資金使途は下記のような費用に限られるので、あらかじめ確認しておきましょう。
住宅の購入資金
住宅購入に関する諸費用
リフォーム費用
住宅ローンは借りる額を最小限に抑え、無理のない返済計画を立てることが大切です。オーバーローンを利用して必要以上に多く借りることで、毎月の返済額が高くなり、結果的に自分の首を絞めることになるかもしれません。そうならないためにも、金利や諸費用が低い住宅ローンを選ぶことが大事です。
金利は大きく分けて、変動金利タイプと固定金利タイプの2種類があります。変動金利タイプは返済額を減らしたい人に向いていますが、将来的に金利が上昇する可能性があるので、返済額が増えても無理なく返済できるかを考えましょう。固定金利タイプは返済額が一定なので返済計画が立てやすく将来の家計管理もしっかりできますが、変動金利に比べると金利は高めです。
諸費用は、高額になりやすい項目から商品を比較しましょう。商品や金融機関によっては大幅に節約できるかもしれません。下記の記事では諸費用の概要や節約方法について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
住宅ローンの借り換えで、借り換え前より多くローンを借り入れた場合、住宅ローン控除の計算方法が変更になるため、控除額が変わるかもしれません。借り換え前より多く借りた場合の住宅ローン控除の計算方法は下記のとおりです。
借り換えの際は、控除額が変わる可能性がある点も考慮しておきましょう。
住宅ローンで希望した金額を借りられない場合は、収入合算を利用して借入額を増やしましょう。収入合算とは、住宅ローンの申込者本人の年収に配偶者や父母、子どもなどの年収を加えて、ローンを借り入れる方法です。
収入合算は、連帯債務型と連帯保証型の2種類。連帯債務型は1つのローンに対して2人で債務を負い、連帯保証型はあくまでも申込者1人が債務を負います。収入合算できる金額は金融機関や商品によって異なるので、確認しましょう。
住宅ローンで希望金額を借りられない場合、ペアローンで2つのローンを組むのもひとつです。ペアローンとは、一定の収入がある夫婦や親子などがそれぞれ契約者として住宅ローンを組む方法のこと。夫婦であればそれぞれが住宅ローンを1つずつ、計2つ契約します。
ペアローンの主なメリットは、借入額や住宅ローン控除額を増やせることです。1人では希望額を借り入れできない場合に利用することで十分な金額を借り入れできるでしょう。主なデメリットは、一方の契約者が亡くなっても、返済義務が残ることです。
住宅ローンを多めに借りる方法やオーバーローンのメリット・デメリットなどを紹介しましたが、実際にどの住宅ローンを選べばよいのか、何を基準に選べばよいのかなどの疑問もあるでしょう。以下の記事では、住宅ローンの詳しい選び方や人気の住宅ローンをランキング形式で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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