新たな金融機関で住宅ローンを組み直し、利用中の住宅ローンを一括返済する住宅ローンの借り換え。金利が低い借り換え先を選ぶことで利息を減らす効果が期待できますが、借り換えには諸費用がかかるため、期待したように返済額が減らない可能性もあります。
本記事では、住宅ローン借り換えのメリット・デメリット、注意点を解説します。借り換えの具体的な方法や適したタイミング、借り換えができないケースなどもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
利用中の住宅ローンよりも金利が低い金融機関に借り換えることで、毎月の返済額や総支払額の負担を減らす効果が期待できます。
実際に、金利の違いによる返済額をシミュレーションしてみましょう。なお、ここで紹介する返済額は簡易シミュレーションによるもので、実際の返済額は条件によって異なります。
<借り入れの条件>
︎借入金額2,000万円
ボーナス払いなし
元利均等返済
返済期間20年
固定金利
金利2%
金利2%の場合、毎月の返済額は10万1,176円、総返済額は2,428万2,300円という結果になりました。
<借り入れの条件>
借入金額2,000万円
ボーナス払いなし
元利均等返済
返済期間20年
変動金利
金利0.8%
金利0.8%の場合、毎月の返済額は90,205円、総返済額は2,164万9,185円という結果になりました。
金利が低い住宅ローンに借り換えることで、毎月の返済額や総支払額の負担が減ることがわかるでしょう。
変動金利から固定金利に借り換えれば、住宅ローンの金利が変わることがなくなります。住宅ローンの金利は、そのときの社会情勢によって変動するため、固定金利にすることでリスクヘッジが可能です。
金利は通常6か月ごとに変動し、そのたびに元金や利息の金額も見直しが行われることを覚えておきましょう。借入期間が長ければ長いほど、金利が変動するリスクも高まります。
固定金利は変動金利よりも金利が高めに設定されているのがデメリットですが、最近では長期固定金利でも1%程度と低金利です。住宅ローンの借り換えは、中長期的なリスクをふまえたうえで総合的に判断しましょう。
借り換え先の金融機関が提供している、新しい団信(団体信用生命保険)や特典を利用できるのも、借り換えのメリットです。
たとえば、auじぶん銀行やソニー銀行の団信には、「がん団信50」があります。金利の上乗せなしで、がんと診断されるとローンの残債が50%保証される団信です。
また、金融機関が独自に提供している特典にも注目してみましょう。三井住友信託銀行の「ベビさぽ」なら、出産時金利優遇と子育て期間中に使えるクーポンなどをもらうことができ、イオングループの「イオンセレクトクラブ」は、イオングループでの買い物が割安になります。
住宅ローンとリフォームローンをどちらも組んでいる人は、借り換えでリフォームローンの金利を抑えられる可能性があります。借り換えは、今組んでいる住宅ローンとリフォームローンの残高を合計した金額で申込みましょう。
リフォームローンとは、マイホームのリフォーム工事をするためのローンです。リフォームローンは金利が高い傾向にあり、2〜5%のものも。リフォームローンよりも低い金利の住宅ローンで借り入れをまとめれば、差分の利息負担はなくなります。
住宅ローンの借り換え時には、一般的に30〜100万円の諸費用がかかります。
諸費用が工面できない場合は、次の3つの対策を行いましょう。
保証料や手数料などの諸費用が低い住宅ローンに借り換える
借り換えの諸費用が安い金融機関の住宅ローンを選択することで、借り換えの負担を軽減できます。ただし、その分、金利が高めに設定されていることがあるので注意が必要です。
諸費用のなかでも高額になりがちな「保証料」を分割払いにする
住宅ローンでよくある借り入れ条件のひとつが、保証会社との契約。住宅ローンの支払いが困難になった場合に、保証会社が契約者に代わって住宅ローンを一括返済する仕組みのことで、契約者は保証料の支払いが必要になります。
保証料は諸費用のなかでも高額になることが多いため、保証料を分割払いにすると支払いの負担を抑えられるでしょう。
諸費用をローンと一緒に組む
保証料や手数料などの諸経費を住宅ローンに組み込む方法も考えられます。ただし、ローンの金額が増えれば、それだけ利息も増えることになるため注意が必要です。
変動金利を選択した場合、将来的に金利が上昇して返済の負担が増える可能性があります。返済期間が長いほど金利の見通しが難しくなるため、リスクが高くなる点に注意しましょう。
変動金利への借り換えを行う場合は、繰上返済をして返済期間を短くしたり、自己資金を多めに用意したりして、借入金額を少なくする方法を検討することも大切です。
住宅ローンの借り換え先を検討する際は、金利や手数料などを慎重に比較検討する必要があり、手続きにも手間がかかります。インターネットでも情報収集は可能ですが、場合によっては複数の金融機関への相談が必要になる場合もあるでしょう。
また、借り換えに必要な書類には発行から3か月以内などの期限が定められているものもあり、忙しい人にとっては負担になります。
住宅ローンの借り換えを検討する際は、ここで紹介する注意点を押さえておきましょう。
住宅ローンの借り換えには30~100万円の諸費用がかかるため、想定していたほど総支払額が減らない可能性もあります。
例として、金利1%から金利0.6%に諸経費70万円で借り換えるときの支払金額をシミュレーションしてみましょう。
支払金額:22,074,815円
支払金額:21,228,850円+諸費用70万円=21,928,850円
諸費用が70万円かかった場合、総支払金額は約14万6,000円だけ安くなります。諸経費込みだと思ったより総支払金額を減らせません。
ただし、想定していたより効果が出ない可能性もありますが、借り換える金融機関でより充実した団体信用生命に加入したり、お得な特典をもらえたりする場合は、返済総額を抑えられなくても借り換えするメリットがあるものです。
住宅ローンの借り換えを行う際は、借り換え先の金融機関で新たに審査を受けることになります。その際に、次のような理由で審査に落ちる可能性があるので注意しましょう。
健康状態が悪化した
住宅ローンの申し込みに必要な団信(団体信用生命保険)は、健康状態が悪いと申し込めないことがあります。
その場合は、引受基準を緩和した「ワイド団信」への加入や、団信が不要なフラット35への借り換えを検討しましょう。
物件の担保評価が下がった
物件の担保評価は基本的に時価で行われるため、購入時よりも評価が下がることが考えられます。 担保評価以上の貸付を行うのは金融機関にとってリスクになるため、審査に影響することがあるでしょう。
収入が減少した
最初の住宅ローンを組んだときよりも収入が減少していると、審査に通りにくくなる可能性があります。
住宅ローンの返済を滞納したことがある
住宅ローンの返済が遅れると、その事実が信用情報機関に記録されます。 金融機関は借り換えの審査を行う際に信用情報機関の情報を確認するため、返済に何度も遅れた記録などがあると、審査に落ちてしまうかもしれません。
借り換えで住宅ローン控除を受けるには、次の2つの条件を満たす必要があります。
住宅借入金等特別控除の対象となる要件には、「新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であること」などがあります。住宅ローン控除が受けられないと家計に大きく影響するため、借り換え時は金利や諸費用だけでなく、住宅ローン控除についても確認しておきましょう。
金利の低下などの理由による同じ金融機関内での借り換えは、金融機関にとってプラスにならないため禁止されています。ただし、何らかの事情で返済が厳しくなった場合は、状況に応じて金利の引き下げや返済の据え置きなど、条件変更の相談には乗ってもらえるでしょう。
また、複数の住宅ローン商品を取り扱っている金融機関では、同じ金融機関内で別の住宅ローンに借り換えできる場合があります。
民間金融機関の住宅ローンから公的住宅ローンへの借り換えは基本的にできません。
ただし、例外的に「フラット35」への借り換えはできます。住宅性能基準を満たした質の高い住宅を対象とした住宅ローン「フラット35S」は「フラット35」とは別物で、借り換えはできないため注意が必要です。
他人に貸し出す住宅を作るために借りた住宅ローンは、借り換えができません。また、住宅を賃貸に出すと、その時点でその住宅は事業用の物件になり、借り換えができなくなります。
事業用の物件でも事業用ローンや不動産担保ローンなら借り換えられる可能性がありますが、金利が上がり、審査も厳しくなるでしょう。
次のようなケースでは、借り換えによって総支払額を減らせる可能性が高くなります。
借り換え後の金利が0.5%以上低くなる
住宅ローン残高が1,000万円以上ある
返済期間が10年以上残っている
先ほどシミュレーションで取り上げたように、0.2~0.4%金利が低くなる程度だと借り換え後の総額の変化があまり見られません。また、ローン残高が少なかったり返済期間が短かったりと、残りの支払額が減るほど借り換えのメリットは少なくなります。
借り換えのタイミングを見極める目安のひとつにしましょう。
変動金利から固定金利に変更すると、将来的に金利が高くなるリスクを抑えられます。
また、固定金利から変動金利に変更することで、返済総額を減らすことができるかもしれません。ただし、金利が上昇した場合は逆に支払総額が増えてしまうので注意が必要です。
固定金利期間選択型は一定期間、金利が優遇されますが、優遇期間が終了すると金利が上昇するので、借り換えを検討するのに適したタイミングといえます。
ただし、優遇期間の終了後に変動金利に移行することもあるため、借り換えは慎重に検討しましょう。
繰上返済によって、月々の返済金額を減らす方法と返済期間を短くする2つの方法があります。返済期間を短くすると、その分、利息を減らすことが可能です。繰上返済には手数料がかかることもあるので、よく確認しましょう。
金利の引き下げ交渉によって返済の負担を減らすことは、借り換えと同じような効果があります。利用中の金融機関に、借り換えを検討していることを話してみましょう。
金利の引き下げをしてもらえる可能性がある金融機関は、メガバンクや地方銀行、ネット銀行、信用金庫です。フラット35では金利の引き下げ交渉はできません。
また、金利を引き下げるときには再審査が必要になります。審査の結果次第では金利の引き下げが難しいこともあるので注意が必要です。
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