ネット銀行や地方の金融機関、メガバンクなどさまざまな機関が融資する住宅ローン。住宅ローンの審査基準は非公開であり、通るためにどのような対策をすればよいか悩んでいる人もいるでしょう。
本記事では、金融機関ごとの住宅ローン審査の傾向を詳しく解説します。通りやすい人の特徴や、通るためのポイントなども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
住宅ローンは、大きな金額のやり取りが発生し信用情報を重視するため、審査が甘いもしくは通りやすいものはありません。ここでは、通りやすい住宅ローンがない理由や各金融機関が重要視する項目を紹介します。
住宅ローンの審査基準は非公開のため、外部の人は厳しいのか甘いのか判断できません。また、審査基準は金融機関ごとに異なります。
返済できる見込みのない人に融資すると金融機関が罰則を受けることもあるため、審査は厳しいと考えられるでしょう。確実に審査に通る住宅ローンはないことを覚えておいてください。
審査基準は非公開ですが、各金融機関が重要視している項目の予想はできます。国土交通省が公表した「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、融資の際に考慮する項目は以下のとおりです。
90%以上の金融機関が上記の項目を考慮し、住宅ローンの貸付を総合的に判断していると考えられます。
住宅ローンは金融機関ごとに審査条件や傾向が異なるため、それぞれの融資について紹介します。住宅ローンを検討している人は、相性のよい融資を選択できるよう各金融機関の特徴を把握しておきましょう。
フラット35は、民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して取り扱う固定金利型住宅ローンです。全国で300以上の民間金融機関が提携しており、借入時の制限が少ないため、多くの人が利用しやすい住宅ローンではないでしょうか。申し込み条件や審査の特徴を詳しく紹介します。
フラット35は、雇用形態や勤続年数の縛りがないため、ほかの住宅ローンよりも審査に通りやすい特徴があります。通常の住宅ローンは人的審査に重きが置かれているのに対し、フラット35は物的審査が重視されるのが主な理由です。住宅金融支援機構にて定められた技術基準をもとに、対象住宅の物件審査を行います。
フラット35の申し込み要件は以下のとおり。
雇用形態や勤続年数の縛りがない一方、技術基準や返済負担率の基準などがあることを覚えておきましょう。
民間金融機関の住宅ローンでは、団信保険の加入が要件で決められていますが、フラット35では加入が任意のため、健康状態に不安があっても住宅ローンを利用できます。
団信(団体信用生命保険)とは、借入者が健康上の問題で住宅ローンを支払えなくなってしまったとき、生命保険会社が残りのローン残高に相当する保険金を住宅ローンの返済にあてられる制度です。団信の申請書記入日より過去3年以内に、以下の病気で手術を受けたもしくは2週間以上医師の治療や投薬を受けていた場合、加入できません。
フラット35は団信への加入が任意ですが、加入しない場合、健康上のトラブルがあっても補償を受けられず、多額の債務を抱えるリスクがあるため注意しましょう。
フラット35では、人的評価だけでなく対象となる物件の評価も重視されます。もし借入者が返済できなくなった場合、物件自体の価値が高ければ金融機関が担保物件を売却して返済できるためです。
フラット35の技術基準を抜粋して紹介します。
物件評価が重視される一方で、人的担保(保証人)が不要であるのも特徴のひとつです。
フラット35は民間の金融機関の貸し倒れリスクが低く、審査基準が低めです。
フラット35は、証券化により投資家から資金調達しています。契約者に住宅ローンを融資したあと、民間金融機関から、日本国政府が100%出資する独立行政法人の住宅金融支援機構へ債権売却。信託銀行などを通してMBS(不動産担保証券)を発行し、購入した投資家から代金を受け取る仕組みです。
一般的に、住宅ローンが返済できない場合は金融機関が返済を請け負うものすが、フラット35は国との共同出資であるため、金融機関の負担が少なく済みます。貸し倒れのリスクを最小限にできるため、審査に通りづらい人でも融資を受けやすいのがフラット35の魅力のひとつです。
フラット35は、審査基準のハードルが低めですが、金利は1.5~2.99%とほかのローンに比べて高い点に注意しましょう。
住宅ローンの金利タイプは3つです。
変動金利タイプは、借入後に市場金利が低下すると返済額も減るメリットがありますが、市場金利が上昇すると返済額が増加してしまうため、借入時に見通しが立てにくいデメリットもあります。
固定金利期間選択タイプは、一定期間は固定金利が適用されるため返済額が明確ですが、期間終了後は変動金利タイプと同様のメリット・デメリットがあるといえるでしょう。
全期間固定金利タイプは金利が高めですが、市場金利が上昇しても借入時の金利で返済額が確定しているため、返済計画の見通しが立てやすいメリットがあります。
フラット35で住宅ローンの借入を検討している人は、以下のページから自分に合った金融機関を見つけましょう。
ネット銀行は勤続年数・勤務先の規模をそれほど重視しない傾向があります。メガバンクでは、収入が安定していない人は返済滞納のリスクがあると考え、勤続年数や勤務先の規模から収入の安定性を判断していると考えられるでしょう。
ネット銀行は借入者を確保するため、メガバンクよりも要件を減らし利用者を増やしたいという狙いがあります。勤続年数の記載がない主なネット銀行は以下の通りです。申込者の収入の要件とともに確認してみましょう。
ネット銀行の住宅ローンは、勤続年数が不要かつ収入要件も高くないため、転職したばかりの人や自営業の人におすすめです。ただし、手続きはオンライン上で進むことが多いため、対面の実店舗に比べて個々の事情が配慮されにくいことを理解しましょう。
地方の金融機関は、全国各地で利用されるメガバンクと異なり地域住民が主な顧客のため、地域の利用者に合わせて対応する傾向があります。
地方銀行は、株式会社の形態をとり、株主に利益を還元する営利組織です。信用金庫は、集めた資金を中小企業や個人に還元し、地域社会の発展を目指す非営利組織のため、地方の金融機関でも違いがあります。どちらも、顧客は地域住民であるため、メガバンクで住宅ローンが審査に通らなくても、地域の金融機関では保証会社に再度してもらえるよう働きかけてくれることもあるでしょう。
メガバンクはネット銀行とは異なり、対面で審査を行うこともあるため個々の事情や個人の属性を重視する傾向があります。勤続年数や勤務先の規模など要件も細かいため、転職回数が多い人や外国人などは審査に通りにくい可能性があるでしょう。
返済能力を厳しくチェックするため、公務員や大手企業に長年勤務している人など安定した収入が見込める人が審査に通りやすいと考えられます。
住宅ローンに通りやすいとされる一般的な条件を紹介します。各金融機関の審査基準は公開されていません。紹介する条件をすべて満たしても審査に通らないこともあるでしょう。あくまでも一般的な条件として参考程度にしてください。
住宅ローンの審査に通過するには、一定水準以上の安定した年収が必要です。金融機関は借入者が返済できなくなった場合、代わりにローン残高を返済する必要があるため、返済能力があるか細かくチェックします。金融機関によってばらつきはありますが、年収の下限は300万円が目安です。
2021年度の「フラット35利用者調査」によると、住宅ローンを利用した世帯の年収は、400万円未満が約22%、800万円未満が80%以上を占めています。
また、借入額の上限(年収倍率)は以下の通りです。
調査結果からわかるように、余裕をもって返済できる借入額であれば、収入が低くても審査に通過できる可能性はあります。
住宅ローンの審査に通りやすい勤続年数の目安は1~3年以上です。「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、1,035の金融機関のうち約85%が勤続年数の審査基準は1~3年以上と回答しています。
収入が落ちつく3年程度を基準にしている金融機関が多く、勤続年数が短いと収入が安定していないと判断されやすい傾向にあります。
住宅ローンの審査では、信用情報が良好な状態に保たれているかチェックされるため、傷をつけないことが大切です。信用情報とは、クレジットやローンの契約状況や取引事実を客観的に登録した個人の情報を指します。
住宅ローンでチェックされる主な項目は、延滞や債務整理などの履歴です。ブラックリストに掲載されていると審査を通ることは難しいため、クレジットやローンの滞納に気をつけましょう。
住宅ローンの審査では、過去から現在にかけて大きな病気をしていないかも重要です。一般的に住宅ローン利用時は、死亡や高度障害状態で支払えなくなったときのために団信へ加入します。
団信は生命保険のため健康状態に関する審査があり、問題があると加入できません。団信への加入を必須要件としている金融機関が多いため、加入できないと住宅ローンの審査を受けられないこともあります。
完済時の年齢が若いと、長期のローンを返済できると判断される可能性が高いでしょう。国土交通省が公表した「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」では、住宅ローン返済期間の平均が約32年、取得時の年齢平均が約40歳であり、満80歳未満での完済が多いようです。
定年退職後まで返済が続くと年金からやりくりする必要があるため、住宅ローンの借り入れは早めにするとよいでしょう。
審査に通るためには、できるだけ借入希望額を下げるとよいでしょう。金融機関は返済能力を借入額と年収のバランスを見て判断します。借入希望額の目安は、返済比率から算出しておきましょう。
一般的な返済比率は25~35%ほどです。理想的な返済比率は手取り収入から考えましょう。手取り収入の20~25%ほどであれば無理のない返済が可能と考えられます。
事前に信用情報を確認して、できるだけ借入れやローンを返済しておきましょう。返済の滞納があると信用情報に傷がつき審査に通りにくくなります。
信用情報は、各金融機関が加盟する信用情報機関で調査可能です。未払いや滞納の有無をチェックして、ある場合は早めに返済しておきましょう。
住宅ローンを受けるなら、資金や返済の計画性ありと示すために頭金を準備しておきましょう。準備する頭金の目安は、住宅購入額の20%ほどです。
頭金が多ければ返済期間を短くすることにもつながります。しかし、生活費を頭金に回したり、いざというときの備えを利用したりするのは避けましょう。今後の生活に支障をきたさない範囲での準備がおすすめです。
住宅ローンの審査項目に勤続年数があるため、借入れ前の転職や退職はおすすめできません。収入が不安定で返済リスクありと判断されないためにも、申し込み前の転職はタイミングを慎重に検討しましょう。
手当たり次第に多くの住宅ローン審査に申し込むのは避けましょう。複数の審査に申し込むと履歴が信用情報に記録されます。ある金融機関の審査に落ちた情報を別の金融機関が確認すれば、何か問題があるのではと警戒してしまうでしょう。
金融機関に返済リスクがあると判断されないためにも、申し込みは1社に絞るのが賢明です。
提出書類に不備があると管理能力がない人という印象を持たれてしまい、審査結果に影響を及ぼす可能性があるため注意しましょう。また、故意に虚偽申告をしたわけではなくても受領した側は判断できないため、意図的に詐称したものと捉えられてしまう可能性もあります。
不備を防ぐためにも、チェックシートを利用して提出前に書類の内容を細かく確認することが大切です。
住宅ローン選びで悩んでいる人は、以下のページを確認しましょう。人気住宅ローンの商品をタイプ別に比較してランキング形式で紹介しています。ぜひ自分に合った住宅ローンを見つけてください。
本サイトは情報提供が目的であり、個別の金融商品に関する契約締結の代理や媒介、斡旋、推奨、勧誘を行うものではありません。本サイト掲載の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社及び情報提供者は一切の責任を負いません。
返済期間が長期にわたる住宅ローン。少しでも返済額を抑えるために、借り換えを検討している人も多いのではないでしょうか。本記事では、同じ銀行で借り換えができるのか、もしくはほかの銀行に借り換えたほうがメリットが大きいのかについて解説します。借り換えをしなくても負担を減らせる方法も紹介しているので、...
住宅ローン
「そろそろ家を買いたい...でも3,000万円の住宅ローンって返済していけるかな?」と疑問に思うことはありませんか?毎月の返済額や年収の相場ってなかなかわからないですよね。一生に一度しかない買い物だからこそ、疑問をすべてスッキリさせてから購入したいところ。そこで今回は、3,000万円の住宅ロー...
住宅ローン
住宅の購入時に多くの人が借りている、住宅ローン。年収800万円でいくらまで借りられるのか、返済負担率はどれくらいにすべきか気になっている人も多いでしょう。今回は、年収800万円で組める住宅ローンがいくらなのか、目安や平均の借入金額を紹介します。実際に住宅ローンを借り入れたときのプランシミュレー...
住宅ローン
フラット35は住宅を購入する際に人気の住宅ローンです。フラット35の利用を検討しており、審査基準が知りたいと考えている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、フラット35の審査基準や仮審査、本審査に落ちたときの対応などを詳しく解説します。万全の状態でフラット35に申込めるよう、しっかりと知...
住宅ローン
住宅ローンを利用したときに、税金を差し引くことができる住宅ローン控除。住宅ローンは別の商品に借り換えることで負担を減らせる可能性がありますが、借り換え後でも住宅ローン控除を受けられるのか、必要な手続きにはどのようななものがあるのか、疑問に思っている人も少なくないはず。そこで今回は、借り換え後に...
住宅ローン
住宅の購入を検討するときには、月々の返済額や金利など正確な数字が気になりますよね。難しそうで戸惑っている人も多いかもしれませんが、計算式がわかれば誰でも簡単にシミュレーションできます。そこで今回は、住宅ローンの管理に必要な計算方法をわかりやすく解説します。借入額ごとの返済月額と返済総額も一覧に...
住宅ローン
住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンを利用します。年収500万円の場合の借入額や、月々の返済額が気になっている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は年収500万円の場合の住宅ローンの借入額や、無理なく返済できる金額について解説します。年収500万円の場合の借入プランシミュレーションも行っ...
住宅ローン
住宅を購入する際、多くの人が利用する住宅ローン。年収450万円の場合いくらまで借入れが可能か、月々の返済額はどのくらいか気になっている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、年収450万円の場合の住宅ローンの借入額や、無理なく返せる金額について解説します。年収450万円の場合の借入プランシ...
住宅ローン
住宅を購入する際、多くの人が利用する住宅ローン。年収400万円の場合いくらまで借りられるか、月々の返済額はいくらくらいか気になっている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、年収400万円の場合の住宅ローンの借入額や無理なく返済できる金額について解説します。年収400万円の場合の借入プラン...
住宅ローン
物価の上昇や子どもの成長などで家計を見直すときには、住宅ローンの返済額を少しでも下げたいと思いますよね。できるだけ金利の低いプランに借り換えたいと考えている人も多いでしょう。そこで今回は、住宅ローンの借り換えにおすすめのタイミングとその理由を解説します。審査のポイントや注意点も解説するので、ぜ...
住宅ローン
毎月の返済額や支払い総額を減らせる方法のひとつが、住宅ローンの借り換え。しかし、金利タイプなどをしっかり理解しておかないと、失敗して後悔する可能性があります。そこで今回は、住宅ローンの借り換えで失敗しないためのポイントを解説します。失敗例や後悔しないための注意点も解説するので、ぜひ上手な借り換...
住宅ローン
住宅を購入する際に借入ができる、住宅ローン。マイホーム購入に住宅ローンを利用したが、新たに2軒目を購入して住宅ローンを組みたいと考える人もいるでしょう。本記事では、1軒目で住宅ローンの借入の返済が残っていても、2軒目の住宅ローンは組めるのかを解説します。2軒目の借入を検討するときに気をつけるポ...
住宅ローン
預金業務は行わず、融資をメインで取り扱うノンバンク。ノンバンクに怖いイメージを持っている人や、そもそもノンバンクについてはあまり知らない人は多いのではないでしょうか。本記事では、ノンバンクを利用して住宅ローンを組むメリット・デメリットを解説します。フラット35を中心に、どんな人にノンバンクが向...
住宅ローン
住宅の購入を検討しているものの、世帯の収入状況などを考えると夫婦で分担して返済を進めたいと考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、夫婦で住宅ローンを組むにもどのように申し込めばよいのか分からない人や、どんな落とし穴があるのかと悩んでいる人もいるでしょう。本記事では、夫婦で住宅ローンを組...
住宅ローン
住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンを利用します。年収700万円の場合の借入額や、月々の返済額が気になっている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は年収700万円の場合の住宅ローンの借入額や、無理なく返済できる金額について解説します。年収700万円の場合の借入プランシミュレーションも行っ...
住宅ローン