今回は、世帯年収が900万円ほどの世帯を対象に、年収900万円で組める住宅ローンの借入可能金額や、借入金額の目安を紹介します。返済計画を立てる際のポイント、実際の借入シミュレーションなども解説するので、ローンを組む際の参考にしてみてくださいね。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
最初に、年収900万円の世帯ではどのくらいの借入が可能なのかや、借入額の目安を解説します。
住宅ローンの借入限度額は金融機関によって異なりますが、年収900万円の人は8,000万円が目安です。ローンの借入限度額を決める基準には、多くの場合で返済負担率が用いられます。
返済負担率とは、年収に占めるローン返済額の割合で、限度額の基準は年収の30〜35%がポピュラーです。例えば、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資を行なうフラット35では、年収400万円以上の返済負担率は35%が上限になります。
8,000万円の住宅ローンを、固定金利を1.54%、返済期間を35年にして組んだ場合、月々の返済額は24万6,518円です。
年収900万円の人の手取り収入は、社会保険料・所得税・住民税などを差し引くと約655万円になります。ボーナスなどを加味せず12等分すると、月の手取りは54万円です。毎月24万6,518円を、年収900万円の月の手取り54万円で払うには、返済負担率が約45%になるので負担が大きいといえるでしょう。
借入額の目安は、年収の約5〜7倍が適正です。どのくらい借りられるかを知るには、年収倍率を用いるとよいでしょう。
年収倍率とは、購入したい住宅が年収の何倍になるかを比率で表したものです。フラット35が発表している「2021年度 フラット35利用者調査」によれば、新築の年収倍率は6.5〜7.5倍で、中古は5〜6倍が目安とされています。
年収900万円で試算してみると、新築で5,850〜6,750万円(年収倍率6.5〜7.5倍)、中古で4,500〜5,400万円(年収倍率5〜6倍)です。毎月の返済額に置き換えると、新築で約18万〜20万7,000円、中古で約13万8,000〜16万6,000円になります。
ボーナスなどを加味した返済額の目安を知りたい人は、住宅保証機構株式会社が提供している「返済額の試算」で詳細なシミュレーションを行えるので、試してみてください。
例えば、年収900万円の手取り月収は54万円なので、返済負担率が25%なら月の返済額は13万5,000円で、20%なら10万8,000円です。返済負担率25%の月13万5,000円を返済額に設定し、返済期間35年、固定金利1.54%でシミュレーションすると、住宅ローンの借入可能額は約4,381万円になります。
住宅ローンの返済額だけではなく、住宅に関する費用を考慮して返済計画を立てていくことも重要です。
マンションと戸建て共通の関連費用としては、固定資産税が挙げられます。土地や家屋の評価額によっても異なるものの、年間で10〜15万円程度かかると考えておきましょう。加えて、年間数千〜数万円程度と少額ですが、火災保険料や地震保険料の支払いも発生します。
上記を合算すると、住宅に関する費用は年間で50万円ほど必要になる計算です。住宅ローンだけでなく、関連費用がどのくらいかかるかをしっかり確認しておくと、借入で失敗するリスクが少なくなります。
次に、借入額を決める際に押さえておきたいポイントを解説します。
住宅ローンの借入期間は1〜35年が一般的で、借入期間が長いほど月々の負担が小さくなります。たとえば、4,000万円を10年かけて返すのと、30年で完済するのを比べてみると、後者のほうが月々の返済額を3分の1まで軽減可能です。
住宅ローンの金利タイプには、全期間固定金利型・固定金利選択型・変動金利型の3つの金利があり、それぞれのメリットに応じて選ぶことが重要です。3つの金利タイプは固定と変動に分類できます。全期間固定金利型は固定金利タイプ、固定金利選択型と変動金利型は変動金利タイプです。
固定金利選択型は、ローンを組んでから5年や10年などの一定期間で固定金利を適用し、期間後に変動金利に切り替わります。変動金利型に比べると金利は高いものの、全期間固定金利型よりも低い金利を適用しつつ、リスクをなるべく抑えたい人に固定金利選択型がおすすめです。
計画的に返済したい人には、全期間固定金利型がおすすめです。全期間固定金利型は、借入当初の金利が全期間を通じて固定されているので、借入時点で返済額が確定し、返済計画を立てやすいのが特徴といえます。
金利の上昇によって、返済額が増加するリスクを回避できるのもメリット。借入から完済まで金利負担率も変わらないので、安定している金利タイプだといえるでしょう。
一方、固定期間の終了後に金利が上昇してしまうと、返済額が増えるリスクがあります。固定期間の終了後には、住宅ローンで定められた125%ルールが適用されない点に注意が必要です。
125%ルールとは、金利が上昇した場合に、大幅に返済額が増加しないよう、今までの125%までの金額しか上げられない決まりのこと。固定期間終了後に金利が上がるケースは、125%ルールの適用外なので、大幅な金利上昇があると返済額が大きく増加してしまう可能性があります。
変動金利型を利用する際には、金利が上昇しても対応できるだけの貯蓄を用意したり、返済負担率をなるべく低くしたりするなどの準備が必要だといえるでしょう。
ただし、変動金利型は、金利が上昇してからすぐに返済額が増えるわけではありません。5年間は毎月の返済額を変えてはいけない、5年ルールが設けられています。また、125%ルールも適用されるため、返済額がすぐに増加することはありません。
住宅ローンを変動金利型で組む際には、5年ルールや125%ルールが適用されない金融機関もあるため、事前に確認しておきましょう。
住宅ローンは、契約する前に返済額や返済期間などをしっかり考えておくことが重要です。以下では、年収900万円の人が、35年・30年・25年の借入期間で住宅ローンを組んだときのシミュレーションを紹介します。
借入期間が35年で、借入額が4,381万円、金利1.54%の全期間固定金利型の場合をシミュレーションしてみると、月々の返済は13万4,999円になります。総返済額は5,669万9,558円です。年収900万円の手取り月収54万円に対する返済負担率は、24.9%になります。
総返済額は、30年と25年に比べて高くなるものの、月々の返済負担が少ない点はメリットだといえるでしょう。
借入期間が30年のときの、借入額が4,381万円、金利1.54%の全期間固定金利型の月々の返済額は、15万2,039円になります。総返済額は5,473万4,022円です。年収900万円の手取り月収54万円に対する返済負担率は、28.1%になります。35年に比べて、月々の返済額は2万円程度上がるものの、総返済額は約192万円抑えられる結果となりました。
借入期間が25年のときの、借入額が4,381万円、金利1.54%の全期間固定金利型では、月々の返済は17万6,036円になり、総返済額は5,281万861円です。年収900万円の手取り月収54万円に対する返済負担率は32.5%。
月々の返済額は、35年に比べると4万円、30年よりも2万円ほど上がります。総返済額は35年と比較して約388万円、30年なら約192万円の減少になりました。
続いて、年収900万円世帯の借入プランを、全期間固定金利型・10年固定金利・変動金利型の3つのタイプ別にシミュレーションします。
全期間固定金利型で金利を2.13%にし、借入期間を35年、借入額を4,381万円でシミュレーションしてみると、毎月の返済額は14万8,066円、総返済額は6,218万7,497円になります。年収900万円の手取り月収54万円に対する返済負担率は27.4%になりました。
固定金利期間選択型で、10年の当初金利を1.115%、残りの期間を1.541%、借入期間35年、借入額4,381万円で試算すると、当初10年間の返済額は12万6,031円で、10年以降は13万2,550円。総返済額は5,488万8,593円です。年収900万円の手取り月収54万円に対する返済負担率は、当初10年が23.3%、以降は24.5%になりました。
全期間をとおして、全期間固定金利よりも月々の返済額が低くなり、総返済額も800万円ほど減るものの、変動金利ほどは返済額が減少しません。
変動金利型で0.537%の金利の場合、借入期間を35年、借入額を4,381万円でシミュレーションした結果は、月々の返済額が11万4,442円で、総返済額は4,806万5,493円です。年収900万円の手取り月収54万円に対する返済負担率は21.1%になりました。
全期間固定金利と比べて、1,000万円以上も返済額を抑えることができます。ただし、上記の計算は0.537%の金利が35年間変わらず続いた場合なので、実際には金利の上昇リスクがある点には注意してください。
夫婦で住宅ローンを組むと節税できたり、借入額を増やしたりできるケースがあるため、選択肢に入れてみるといいでしょう。以下では、夫婦で住宅ローンを組むときに押さえておきたいポイントを解説します。
住宅ローン控除を2人とも受けられるのが、ペアローンのメリットです。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅の購入や増改築をした場合、年末のローン残高の0.7%が、所得税から最大で13年間控除される制度です。所得税で控除しきれない金額になる場合は、翌年の住民税からも一部が控除されます。
ペアローンのデメリットは、住宅ローンを2本契約するので、事務手数料などの諸費用が2倍になることです。ほかにも、収入が不安定なパートタイムや契約社員、フリーランスの場合は、返済能力が不安視されて審査が通りにくくなります。
申込者が1人だけなので、ペアローンと違い事務手数料などの諸費用が、1本分だけになるのがメリットです。パートナーが契約社員やパートタイムでも、ペアローンに比べて審査に通りやすいといわれています。
共働き世帯では、どちらか一方の収入のみで、無理なく返済していける借入額にするのが重要です。例えば、出産をしたら働けなくなる期間が生じますし、職場復帰をしても育児に時間がかかります。時短勤務などになると、以前の給与水準を維持するのは難しいでしょう。
総務省統計局が発表している「高齢者世帯・特定世帯の家計」によると、高齢者世帯の毎月の実支出は平均26万846円とされています。26万846円に10万円の住宅ローン返済が加わると、毎月の総支出は36万円です。
厚生労働省の「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、夫婦が2人とも厚生年金の場合は、月に約29万円が支給されます。毎月の総支出が36万円だとすると、7万円が不足する計算です。毎月7万円が貯蓄から減っていくと考えると、負担は重いといえるでしょう。
また、退職金を住宅ローンの返済に充てようと考えている人は、注意が必要です。想定している退職金よりも金額が少なくなってしまうと、貯蓄を切り崩して埋め合わせるなど、返済計画を修正しないといけなくなる可能性も。
住宅ローンは、金融機関ごとに様々な商品が用意されています。金利タイプや総返済額の低さなど、商品ごとに違いがあるため、自分にはどれが向いているのか悩んでしまう人も少なくありません。
以下の記事では、人気の住宅ローン55商品をランキング形式で紹介しています。選び方のポイントもより詳しく解説しているので、住宅ローンを組む際の参考にしてみてくださいね。
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