住宅ローンを利用したときに、税金を差し引くことができる住宅ローン控除。住宅ローンは別の商品に借り換えることで負担を減らせる可能性がありますが、借り換え後でも住宅ローン控除を受けられるのか、必要な手続きにはどのようななものがあるのか、疑問に思っている人も少なくないはず。
そこで今回は、借り換え後に住宅ローン控除が受けられるかどうかや、年末調整のやり方についてわかりやすく解説します。控除を受けるための条件や具体的な控除額の計算式、申請時の書類の記入方法も解説するので、住宅ローン控除を受ける際の参考にしてみてください。

大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
住宅ローンを借り換えたあとは原則対象外となりますが、ある一定の条件を満たせば借り換えた場合でも対象となることがあります。
そもそも住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れして新しく住宅を建てたり所有したりする場合、または増築や改築をした場合に年末のローン残高の0.7%を所得税から控除する制度です。借り換えた場合は条件に当てはまらないため、住宅ローン控除を受けることができません。
しかし定められた2つの条件を満たせば、借り換えた場合でも住宅ローン控除の対象になるのがポイント。条件の具体的な内容は後述しますね。
以下では最新の控除制度についても紹介しているので、あわせて確認してみてください。
借り換え後に住宅ローン控除を受けるには、控除の適用要件を満たしており、今までのローン返済が目的であると証明する必要があります。どうすれば条件を満たせるのか、以下で詳しく確認しましょう。
借り換えの場合に住宅ローン控除を受けるには、住宅ローン控除本来の適用要件を満たす必要があります。住宅ローン控除の適用条件は以下の5つです。
自分で住む用ではない住宅は控除対象とならないため、他人に貸与するための住宅や投資用で所有している物件や土地のみの購入については適用されません。ただし転勤や単身赴任などで一時的に本人が住んでいない場合は、家族が住んでいることを条件に適用を受けることができます。
適用を受けられるのは、合計所得金額が2,000万円以下の年度のみです。合計所得金額とは、給与所得・事業所得・配当所得などの各所得を合計した金額のこと。住宅ローン控除を申請する人の、その年の純粋な儲けのことだと理解しておけば大丈夫です。
床面積は登記簿上の数字で判断されます。実際の面積と登記簿上の数字が違うといったことも起こりえるので、入念に確認しておきましょう。
借り換えた住宅ローンが、これまでの住宅ローン返済を目的としているものだと証明する必要もあります。住宅ローンの残高証明書など、これまでのローンを繰り上げて返済していると証明できるものを用意しておきましょう。
金融機関から残高証明書が届くのは、毎年10~11月頃が一般的です。証明できないと控除を受けられないので、紛失しないようにしっかり保管しておいてください。
住宅ローンを借り換えたからといって、控除が適用される期間が延長されない点には注意しましょう。住宅ローン控除を受けることができる年数は住宅に住み始めてから10年間で、居住を開始した時点からカウントされるからです。
例えば返済期間が15年の住宅ローンを組んで5年経過したあとに、12年の住宅ローンに借り換えた場合は、再び10年間の控除を受けられるわけではありません。すでに5年分の控除を受けているので、住宅ローン控除を受けられるのはあと5年分となります。
住宅ローンを借り換えたときの控除対象額は、借り換え直前と借り換え後の金額によって計算が変わります。控除額の上限も変化する場合があるため、以下で具体的な計算方法を確認しておきましょう。
借り換え直前と同じ金額、または少ない金額で借り換えた場合は、借り換え後の年末残高がそのまま控除対象額になります。借り換え後の年末残高に0.7%をかけた金額が、住宅ローン控除で控除できる上限額です。
例えば借り換え直前のローン残高が3,000万円、借り換え後も3,000万円の住宅ローンに変更した場合は、控除対象額は3,000万円。このときに控除できる上限額は、3,000万円×0.7%=21万円と求められます。
借り換え直前のローン残高が3,000万円、借り換え後の残高が2,800万円の住宅ローンに変更した場合は、控除対象額は2,800万円。このときに控除できる上限額は、2,800万円×0.7%=19万6,000円と求めることができます。
借り換え直前より大きい金額で借り換えた場合は、新しいローンの年末残高×借り換え前のローンの残高 ÷新しいローンの借入額で控除対象額を求めることができます。
例えば借り換え前のローン残高が3000万円、新しいローンの借入額が3200万円、新しいローンの年末残高が3100万円の場合、3,100万円×3,000万円÷3,200万円=2,906万2,500円が控除対象額。この金額に0.7%をかけた約20万3,000円が、控除できる上限額です。
上記の計算をしておかないと、本来の控除額よりも余計に住宅ローン控除ができると考えてしまう可能性があるため注意しましょう。
住宅ローンの借り換え後は、証明書の取得方法に応じて年末調整のやり方が変わります。電子交付を受けた場合と受けない場合で手続きが変わるため、以下で具体的な方法を確認しておきましょう。
住宅借入金等特別控除証明書を電子交付で取得した場合は、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書と合わせて、データか書面で勤務先の会社に提出しましょう。
住宅借入金等特別控除証明書は、税務署からの郵送や窓口で発行してもらうか、e-Taxにログインしてメインメニューの通知書一覧にアクセスすることで入手できます。住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書は、住宅ローンの借り入れ先の金融機関から郵送で毎年送られてくるので、送付される予定日を確認して受け取っておきましょう。
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書は、金融機関から送られてきたものをそのまま提出できますが、住宅借入金等特別控除証明書は自分で記入する必要があります。証明書の書き方は国税庁の公式サイトを参考にするか、以下のように金額を転記していけば大丈夫です。
まずは勤務先の会社名と自分の名前、それぞれの住所を記入しましょう。次に「新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高(①の欄)」に、年末時点の住宅ローン残高を記載します。
「住宅借入金等の年末残高(②の欄)」には債務の割合と、年末時点の住宅ローン残高に債務の割合をかけた金額を記入しましょう。例えば債務の割合が50%なら、住宅ローン残高に0.5をかけた金額を記載します。
「②と証明事項の取得対価の額又は増改築等の費用の額のいずれか少ない方の金額(③の欄)」には、上記②の欄に記入した数字と、この書類の最下部「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」に小さく書かれている、ロ・ホ・リの合計額を比較して小さいほうを記入してください。
「③×居住用割合(④の欄)」には、③の欄に記入した金額に居住用割合をかけた金額を記載しましょう。
その下の「住宅借入金等の年末残高等(⑤の欄)」には、④の欄の合計額を記入します。「年間所得の見積額」には、住宅ローンを借り入れした人の前年の源泉徴収票に記載された所得金額や、今年のおおよその所得金額を記入すれば大丈夫です。
「特定増改築等の費用の額(⑥の欄)」はバリアフリーや省エネ改修工事などを行って、特定増改築等住宅借入金等特別控除を受ける人のみ記載します。
1番下の「住宅借入金等特別控除額(⑧の欄)」には、⑤の欄の金額に1%をかけた金額を記入しましょう。この金額が住宅ローン控除の最大額です。2022年1月以降に不動産を購入した人は、控除率が0.7%に引き下げられるので注意しましょう。記入が終わったら勤務先の会社に書類を提出します。
電子交付を受けない場合は、税務署から送られてきた「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」に必要事項を記入し、勤務先の会社に提出します。
書類の名前は電子交付の住宅借入金等特別控除証明書と異なりますが、記載する内容は同じです。記入したあとは、金融機関から送付された住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書と合わせて、勤務先の会社に提出しましょう。
住宅ローンは変動金利や固定金利などさまざまな金利形態があり、人によって最適な商品が変わるのが現状です。自分に合った形で住宅ローンを組むなら、人気の住宅ローンを徹底比較した以下の記事もチェックしてみましょう。
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