FX 取引を行うとき、担保として必要となるのが証拠金です。しかし、証拠金とは何なのか、どうやって計算するのかわからない人も多いでしょう。
そこで今回は、FXの証拠金について詳しく解説します。具体的な計算方法や証拠金維持率と呼ばれる重要な指標についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
FXの証拠金とは、取引をするためにFX会社へ預け入れる担保金のようなものです。差金決済取引を採用しているFX取引では証拠金が必要になります。差金決済取引とは、証拠金を預け入れることで約定時に取引の対象となる資産(通貨や現金)を受け渡さず、決済時の損益のみを口座内で受け渡す取引です。損失は証拠金から差し引かれ、利益は証拠金に加算される仕組みになっています。
実際にFX取引の売買について具体例をみていきましょう。FX取引では、口座に最低限入れなければならない証拠金の割合を指す証拠金率が決まっています。
証拠金率4%と仮定したFX取引では、まず1ドル=100円のときに1万ドルを4万円(100万円×4%)の証拠金で購入。1ドル=101円のときに101万円(101円×1万通貨)で売却すると、利益は101万円−100円=1万円です。100万円に相当する1万ドルを4万円で購入できること、購入した1万ドルは自由には使えないことが特徴として挙げられます。
一方、銀行の場合は1ドル=100円のときに1万ドルを100万円(100円×1万通貨)で購入。1ドル=101円のときに101万円(101円×1万通貨)で売却すると、こちらも利益は101万円−100万円=1万円です。1万ドルを100万円の現金で購入すること、購入した1万ドルの使途は自由であることが特徴として挙げられます。
上記からわかるように、FXは銀行取引と比べて圧倒的に少ない資金で外貨を購入できるため、資金効率が良い投資方法といえるでしょう。
必要証拠金とは、実際にFX取引をする際に口座に最低限入れなければならないお金のことです。FX会社や取引通貨ごとに一定の比率が定められており、この比率を証拠金率と呼びます。必要証拠金の計算式は「現在の為替レート×取引数量×証拠金率」または「現在の為替レート×取引数量÷レバレッジ」です。
レバレッジとは自己資金以上の取引ができる仕組みをいいます。例として、1ドル=100円で1万ドル取引するケースにおいて、レバレッジごと(1倍・10倍・25倍)の必要証拠金を計算してみましょう。
必要証拠金の額は、レバレッジ1倍では100円×1万通貨÷1=100万円、レバレッジ10倍では100円×1万通貨÷10=10万円、レバレッジ25倍では100円×1万通貨÷25=4万円です。レバレッジを高めるにつれて必要証拠金は少なくなりますが、損益の幅も大きくなるため高リスク高リターンになります。
金融庁は利用者保護のため国内FX会社に対して各種規制を設けており、証拠金率は4%以上、レバレッジは最大25倍が規制値です。
証拠金維持率とは純資産に対する必要証拠金の割合をいい、ロスカットと呼ばれる仕組みに関わる重要な指標です。証拠金維持率について詳しく解説します。
証拠金維持率とは、純資産に対する必要証拠金の割合のことです。純資産とはFX口座に預け入れた金額に損益を加えた金額のことで、証拠金維持率は「純資産÷必要証拠金×100」で計算できます。例えば、純資産が8万円、必要証拠金が4万円の場合の証拠金維持率は、8万円÷4万円×100=200%です。
証拠金維持率は100%を下回らないことがひとつの目安です。数値が高いほど運用が健全であり、100%のときは「純資産=必要証拠金」の危険な状態といえます。
証拠金維持率が下がると、ロスカットの可能性が高まるので注意しましょう。ロスカットとは、損失が一定水準に達したときに、ポジションと呼ばれる約定済で未決済の状態が強制的に決済される仕組みです。
ロスカットは利用者の保護を目的に取り入れられています。レバレッジを利用できるFXでは、ロスカットがなければ際限なく損失が拡大する恐れも。ロスカットが発動すると、保有するすべてのポジションが強制的に決済されるため、その時点で損失が確定します。
ロスカットが発動するのは証拠金維持率が一定水準を下回ったタイミングです。基準となる証拠金維持率はFX会社によって異なり、50〜100%が一般的とされています。
FXの仕組みである証拠金取引では、資金効率を高められるのが最大のメリットです。通常、少額の取引では利益も少額ですが、FXではレバレッジをかけることで最大25倍のリターンが得られます。
実際にレバレッジ倍率ごと(1倍・5倍・25倍)に計算し、資金効率を検証してみましょう。5万円の証拠金で1ドル=100円のときにドルを購入し、1ドル=110円のときに売却するケースで計算します。
「必要証拠金=現在の為替レート×取引数量÷レバレッジ」の計算式に当てはまると、レバレッジ倍率ごとの取引数量は1倍で500ドル、5倍で2,500ドル、25倍で12,500ドルです。
レバレッジ倍率1倍では、1ドル=110円のときに500ドル売却するので、利益は110円×500ドル−100円×500ドル=5,000円となります。レバレッジ倍率5倍では2,500ドル売却するので、利益は110円×2,500ドル−100円×2,500ドル=25,000円です。レバレッジ倍率25倍では12,500ドル売却するので、利益は110円×12,500ドル−100円×12,500ドル=125,000円となります。
どのケースも証拠金は5万円で共通ですが、レバレッジ倍率を高めるだけで利益が最大25倍になることがわかります。
証拠金取引では、預けた資金を上回る損失が出る可能性があるので注意しましょう。基本的に、損失が一定水準に達するとロスカットが発動しますが、場合によってはロスカットが遅れて預けた資金以上の損失が発生することがあります。ロスカットが遅れる原因は、相場の急変やシステムトラブルなどです。
ただし、ロスカットの前に追加証拠金を求められるケースもあります。追加証拠金とは損失によって不足した証拠金のことで、追加証拠金を支払うとロスカットの回避が可能です。多くのFX会社では、証拠金維持率が○%以下で追加証拠金を請求、○%以下でロスカット発動などと段階的なルールが設けられています。追加証拠金の通知はロスカット直前であることを意味しているので、すみやかに納めましょう。
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