毎月の返済額や支払い総額を減らせる方法のひとつが、住宅ローンの借り換え。しかし、金利タイプなどをしっかり理解しておかないと、失敗して後悔する可能性があります。
そこで今回は、住宅ローンの借り換えで失敗しないためのポイントを解説します。失敗例や後悔しないための注意点も解説するので、ぜひ上手な借り換えに役立ててください。

大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
まずは住宅ローンの借り換えでよくある失敗例を紹介します。
よくあるのが、審査が通らなかったり融資額が減額されたという事例です。その代表的な原因は次の4つです。
ひとつめは、借り換え前に転職し、現職の勤続年数が短くなったことが原因で審査に落ちてしまった事例です。勤続年数を住宅ローンの審査項目に入れている金融機関は多く、短期間に何度も転職を繰り返している人や、転職前に空白期間が長い場合は、厳しく審査されることが多くなります。
金融機関によっては、2〜3年以上の勤続年数がないと申し込めないところもあるので注意が必要。しかし、6か月程度で申し込める場合や、前職との合算で勤続年数を計算してもらえるケースもあるので、職務経歴書をもとに金融機関と相談してみてください。
転職や勤務先の業績悪化などで、最初の借入時より収入が下がった場合も、審査に落ちてしまうことがあるので注意が必要です。
金融機関にとって、年収に占める年間返済額の割合は重要なチェックポイント。そのため、収入が下がると返済の負担率が上がってしまい、審査に不利になることがあります。
また転職したばかりの人は、直近の給与から見込みの年収額が算出されます。ボーナスなどの状況により、見込み額が低く計算される可能性があるので、合わせて注意が必要です。
年齢や病気など健康上の問題で団信(団体信用生命保険)の審査が通らないために、借り換えができないというケースも見られます。
一般に、民間の金融機関で住宅ローンを組む際は団信の加入が必須。過去3か月以内に治療や投薬を受けた場合や、過去3年以内に特定の病気で治療を受けた場合には、団信の加入審査に落ちてしまうことがあるので要注意です。
たとえ収入が高くても、健康上の理由で団信に加入できないと住宅ローンの対象外となってしまうことがあるので、借り換えを行う際に注意が必要です。
新築で買った物件でも、借り換えのときには中古物件として扱われるので、担保価値が下り借入可能額が少なくなることがあります。
借り換えの審査では、住宅の不動産価値がローン残高を上回っていることが求められます。物件の担保価値が下がってしまうと、借入の上限に影響するので注意が必要です。
地価の変動や築年数だけでなく、近隣に魅力的なマンションができたなど、環境変化によっても評価額が下がることがあります。
基本的な金利タイプの違いを理解していなかったために利息が増えてしまったという失敗もあるので、注意が必要です。
全期間金利固定型は、完済するまで同じ金利で返済を行う方法。一般的に金利は高めですが、返済額が確定しているので計画を立てやすく、低金利のときに契約するとお得です。
固定金利期間選択型は、契約時に3年・5年・10年などの期間を選び、固定金利で返済するタイプ。終了後は、その時点の金利水準に合わせ変動金利型に切り替えるか、再び金利固定型を選ぶかを決定します。
変動金利型は経済情勢などに応じて、通常半年ごとに金利が見直される返済方法。低金利がローンに反映されると支払い額が少なくなるメリットがありますが、ローンを組んだ時点で支払総額がいくらになるのか、わからないというデメリットがあります。
低金利を期待して変動金利型を選ぶ場合、景気や金融政策によって金利が上昇するリスクがあります。目先の金利に捕われてしまうと、将来的に、返済額が増えてしまう可能性があるので、十分な検討が必要です。
借り換え時に団信の保障内容が薄くなってしまったというのも、代表的な失敗例です。
団信の基本的な保障内容は、死亡と高度障害。高度障害は両目の失明や、両手首から先の機能が永久的に失われるなどの状態をさします。
ただし団信のなかには、ガンと診断されただけで残債がなくなるガン団信や、介護状態と診断された場合に適用される介護団信などがあります。現在の団信にこれらの特約がついている人は、乗り換え後の団信が死亡・高度障害しか対象にしないものになると、保障が薄くなってしまうので、しっかり確認する必要があります。
もうひとつ代表的な失敗例が、借り換え時に発生する諸経費が、想像以上にかかってしまったというケースです。
例えば現在の残債が2,000万円で、1.4%の金利で20年で完済する予定だとします。この場合、支払い総額は22,942,080円。1.15%のローンに乗り換えると支払い総額は22,397,520円になり、544,560円の減額です。
しかしこの額の借り換えの場合、一般に借り換え手数料などで60万円以上かかるとみられ、結果的に支払う額が多くなってしまうことがあります。
ここからは、住宅ローンの借り換えで失敗しないための注意点を解説します。
ライフステージによって金利タイプのメリット・デメリットは変わるので、特性をよく理解して選ぶ必要があります。
例えば子どもの教育費がかかるうちは、金利の低い変動型を選びたくなるかもしれませんが、上昇リスクに注意が必要です。そのような場合、子どもが成長するまでは期間固定タイプを選ぶとよいでしょう。子どもが成長し、共働きが可能になってから、変動型に変えたり、繰上げ返済をして利息を減らしたりすることも可能です。
また、資金に余裕があり金利が上昇した場合に備えて貯蓄を確保しておける人は、変動型を選び利子を低く抑える方法が有効です。
子どもの成長や働き方の変化など、住宅ローンの上手な借り換えにはライフステージの変化に応じた金利タイプの選択が不可欠です。
ローンの借り換えでは、金利や返済総額だけでなく事務手数料などの諸費用も合わせて計算する必要があります。
借り換え時に発生する代表的な手数料として、事務取扱手数料が数万〜数十万円程度、繰上返済手数料や司法書士費用が数万円程度、そして1,000万〜5,000万円の借入の場合、印紙税が20,000円かかります。
借入金額や金融機関にもよりますが、手数料の合計が80万円程度になることもあります。手数料が返済軽減の効果を上回らないよう、借り換え時には必ずトータルで計算してください。
借り換えにはタイミングの見極めも重要です。固定金利の期間終了や変動金利の見直しで金利が高くなる場合は、借り換えを検討すべきタイミングといえるでしょう。
住宅ローンの契約から数年経っている場合は、経済情勢の変化などで、契約時にはなかった好条件のローンが出ている場合があります。金融機関がキャンペーンを行うこともあるので、現在より条件のよい商品を見つけたら、まずは相談してみてください。
ただし、借り換えには必ず審査があります。転職を予定している人や、収入が下がる可能性がある人は、早めに行動することをおすすめします。
団信は借入後に変更や見直しができません。新たにローンを組み直す借り換え時は、団信の見直しができる唯一のチャンスといえます。この機会に保障内容をしっかり見直しましょう。
通常は死亡・高度障害を保障する団信ですが、特約にはガン・心疾患などの八大疾病をカバーするものや、病気やケガで働けなくなった場合を含む全疾病を保障するものなどがあります。もしもの場合の備えを希望する人には、保障内容が充実しているプランがおすすめです。
ちなみに、民間の金融機関では団信の加入が必須となっているケースがほとんどですが、住宅支援機構提供のフラット35は任意加入です。健康上の理由で加入できない人は、団信が必須ではない住宅ローンをチェックしてください。
返済額のシミュレーションを入念に行うことも失敗を防ぐための大切なポイント。手数料を払い手間をかけて借り換えをしても、思ったような効果が出なかったのでは意味がありません。
多くの金融機関が公式サイトにシミュレーションツールを用意しており、残債・金利・ローン期間・借り換え後の希望金利などを入力すると、手数料も合わせてどの程度の差額が生じるかを確認できます。
何社かで試算してみたあとに金融機関に行き、正確な金額を算出してもらうと、スムーズに進むでしょう。
以下の記事では、大手住宅ローンサービスを、金利の低さや利便性で比較検証しています。借り換えの流れや組み直しのポイントも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
借り換えの際には税金にも注意が必要です。住宅借入金等特別控除(通称住宅ローン控除)の適用期間が残っている人は、借入期間が10年を下回ると控除の要件から外れてしまうので気をつけましょう。
住宅ローン控除はマイホーム購入やリフォームの際に、条件を満たせば一定期間、ローン残高に応じた金額が所得税から差し引かれ、還付される制度です。適用要件は残返済期間が10年以上であること。借り換えで繰上げ返済を行い、残りの返済期間が10年以下になると税金の控除が受けられないのでご注意ください。
借り換え効果を計算するときには、控除額も計算に入れ、トータルでお得になるのかを見極める必要があります。
一般的に残りの返済期間が10年以上でローン残高が1,000万円以上、そして金利が1%以上低くなる場合に、借り換えのメリットがあるといわれます。ひとつの目安として参考にしてください。
ただ、残返済期間や残高がとくに大きい場合は、0.3%程度の金利差でもメリットがあるといわれています。借り換えのタイミングは早ければ早いほどよい場合があるので、まずは料金シミュレーションを試すことから始めてみてください。
金利上昇のリスクを考え、固定金利型への変更を検討している人は、以下の記事を参考にしてください。固定金利のメリットや金利の見極め方を詳しく解説しています。
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