住宅ローンの借り換えは、現在のローンをほかの金融機関で組み変えることを指します。借り換えを行うことで毎月の支払額を減らせるなどのメリットを得られるケースもあるため、借り換えたほうがよいのか悩む人もいるでしょう。
本記事では、住宅ローンの借り換えにかかる手数料や負担を減らす方法について解説します。また、支払いについても紹介するので、借り換えを検討している人はぜひ参考にしてみてください。

大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
住宅ローンの借り換えを行った場合、トータルで30~100万円ほどの手数料がかかります。手数料は、借り換えの手続きにかかるものと契約中のローン完済にかかるもの、登記の手続きにかかるものがあるので、それぞれの内容を確認しておきましょう。また、それ以外にかかる費用についても解説します。
借り換えの手続きを行う際、保証料や事務手数料、印紙代がかかります。それぞれの詳細は以下のとおりです。
保証料は、保証会社に対して保証してもらうために必要な費用です。住宅ローンの支払いができなかったときに建て替えてもらわなければいけません。そのため、保証料は必要だと考えられています。
保証料の相場は借入額や返済期間などによって異なりますが、5~60万円程度です。金利上乗せ方式と一括前払い方式のどちらかによっても変動するため、あらかじめ確認しておきましょう。
しかし最近は、建て替えてもらっても住宅ローンを返済しなければいけない義務は残ります。保証料を支払っても意味がないと考え、保証料をゼロとしている銀行も増えているようです。
住宅ローンの借り入れや借り換えを依頼した金融機関に支払う費用が事務手数料です。事務手続きをするときにかかります。定額型と低率型の2種類があり、地方銀行や都市銀行は定額型、ネット銀行は低率型を取り入れているケースもあるでしょう。
事務手数料の金額は定額型が銀行ごとに決まっていて、定率型は借入金額斯×2.2%という式を使って算出されます。定率型は借入金額によって大きな差が生まれるでしょう。
契約書や領収書などの文書に課税される印紙税も支払わなければいけません。印紙代は、住宅ローンの借入額(契約書に記載されている金額)によって異なるので確認が必要です。
ただし、紙の契約書を発行しないネット銀行などを利用する場合は、契約書に印紙を貼付しないので印紙代を支払わずに済みます。
印紙代は以下のとおりです。
<借入額/印紙代>
手数料のなかには、現在契約している住宅ローンを完済するために必要なものもあります。それが、全額繰上返済手数料や保証会社事務手数料です。続いては、ローン完済にかかる手数料の概要を確認していきましょう。
住宅ローンの借り換えを行う際、現在契約しているローンを返済しなければいけません。そのための手続きをしてもらう場合にかかるのが全額繰上返済手数料です。金融機関によって手数料の金額は異なります。
手数料の金額は、以下のとおりです。ここで紹介したのは一例なので、利用を考えている金融機関に確認してみてください。
→SMBCダイレクト:5,500円
→窓口(専用のパソコン):11,000円
→窓口(書面):22,000円
→変動金利期間中:無料
→固定金利期間中:3万3,000円
→みずほダイレクト:無料
→店頭:33,000円
全額繰上返済時に保証料の返戻手続きも行われます。返戻手続きを行うための事務手数料が保証会社事務手数料です。一括前払い型は決められた計算式に基づいて算出された保証料が戻ってきますが、保証料金利上乗せ型の場合だと基本的に返戻金はありません。
ここでは一例をご紹介します。金融機関によって金額が異なるので依頼予定の銀行に確認するのが確実です。
住宅ローンの借り換えをする場合、登記に関する手続きも必要不可欠です。そのときにも手数料がかかるので確認しておきましょう。
住宅ローンの完済後は抵当権の抹消が必要であり、その手続きにかかるのが登録免許税です。金額は、不動産1つあたり1,000円。
司法書士に依頼して手続きを行うケースもあります。依頼すると、司法書士への報酬も追加されるので確認しておきましょう。依頼した場合の費用は、2万円ほどが相場です。
抵当権設定費用は、住宅ローンを契約するときに必要な抵当権を設定するための手続きにかかる費用を指します。抵当権を抹消するときと同じく設定登記にも登録免許税が必要で、税額は借入金額×0.4%です。
手続きを司法書士に依頼するケースもあるでしょう。依頼したときは、別途で報酬を支払います。抵当権を設定する手続きを依頼した場合の報酬は6~10万円が相場です。
住宅ローンの借り換えには手数料がかかりますが、それ以外にも用意しておくべき費用があります。たとえば、団体信用生命保険料や火災保険料です。
団体信用生命保険は、住宅ローンを契約している人に万が一のことがあったとき、保険金で残債を完済させることが可能です。住宅ローンを組む際の条件として、団体信用生命保険への加入を求める金融機関は多くみられます。
近年は、三大疾病団信(がんや脳卒中、心筋梗塞になった場合に保険金が出る)、全疾病保障(精神障害を除く病気やケガが原因で就労できなくなったときに返済が保障される)などもあるのでチェックしてみましょう。
保険料はどのような保障をつけるかで変わってくるので、必要なものを見極めてください。団体信用生命保険は保険料としての支払いは発生せず、金利に上乗せされるのが一般的です。なかには無料で加入できるものもあります。
建物と家財を対象としているのが火災保険です。地震や噴火、津波などが原因で建物や家財に損害が生じたときに保険金が支払われるという仕組み。
火災保険の相場は、建物のタイプや保険期間、補償範囲などによっても異なります。たとえば、保険期間1年の戸建で最低限の補償であれば3,500円程度、保険期間5年の戸建で地震補償までカバーしたタイプなら150,000円程度など、幅広くあります。
保険金額は、保険の対象となる建物などと同額で契約するケースが一般的です。建物の構造や築年数などの条件によって支払われる保険金額に差が生まれるため、契約前に確認しておきましょう。
借入状況などを仮定して手数料はどのくらいになるのかみていきましょう。以下の条件で手数料を計算します。
・借入状況
ローン残高1,500万円、金利0.6%、返済期間15年、元利均等返済、ボーナス払いなし
総返済額:15,688,800円
・借り換え後の条件
借入希望額1,500万円、変動金利型0.475%、返済期間15年、元利均等返済、ボーナス払いなし
総返済額:15,543,540円+諸費用530,000円
この条件で試算すると、諸費用を含めると総額は38万4,740円増加。増加してしまうのは、借り換えにかかる手数料が発生するためです。しかし、金利は下がるので毎月の返済額(初回)は807円、年間の返済額(1年目)は9,684円軽減します。
住宅ローンを借り換えようとすると、どうしても手数料が発生してしまいます。その負担を少しでも軽減したいと考える人は多いでしょう。そこで続いては、住宅ローンの借り換え手数料の負担を軽減するための方法をご紹介します。
住宅ローンの借り換え手数料の準備が難しいときは、いくつかの金融機関を比較し、手数料が安い住宅ローンを探してみてください。手数料のなかでも、事務手数料と保証料は大きな割合を占め、金融機関によって差が出る部分なのでチェックすべきポイントです。
数ある金融機関のなかでも新生銀行は、借り換え手数料が安く設定されています。多くの金融機関は借入額の2.2%と設定しているので、3,000万円だと事務手数料が66万円。しかし新生銀行の場合は、事務手数料が5万5,000円です。
住宅ローン選びで迷ったときは、以下の記事を参考にしてみてください。
住宅ローンの借り換え手数料を準備できない場合、戻し保証料を手数料に充てることも可能です。戻し保証料は、一括前払い型を選択した人が繰上返済したときに保証会社から支払われます。戻し保証料の金額は、多い場合だと数十万円程度です。
そのお金を借り換え手数料に充てても問題ありません。自己資金が少なく、まとまったお金を用意できない場合におすすめです。
住宅ローンの借り換え手数料や保証料は、支払い方法を選択できます。住宅ローンに含めて支払う分割払い型と初期費用として支払う一括支払い型の2種類です。最後に、それぞれの特徴をご紹介します。
住宅ローンを契約する際、手数料や保証料を含めて支払う方法が分割払い型です。分割払い型で1,000万円の借入を行い、手数料が30万円かかった場合は、合算した1,030万円のローンを組めます。
自己資金に余裕がない場合や現金の持ち出しをできるだけ減らしたい場合におすすめ。住宅ローンを契約するときの負担は軽減しますが、毎月の返済額や総返済額は大きくなる点に注意してください。
分割払いを選択すると、繰上返済しても戻し保証料は受け取れません。それもふまえたうえで検討しましょう。
一括支払い型は、住宅ローンを契約するときに保証料などをまとめて支払います。35年の住宅ローンの場合だと借入金額×2%が目安。繰上返済を行った場合、短縮された分の保証料が返ってくるのは一括支払い型ならではのメリットです。
分割払い型のように住宅ローン残高が増えることもありません。しかし、住宅ローン契約時にまとまった資金を用意しなければいけないので、自己資金がないと選びにくい方法です。
住宅ローンの借り換えを行う際には、金利や融資のスピード、利便性などを比較することが大事です。こちらの記事では、借り換え住宅ローンのおすすめ人気ランキングを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
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