住宅ローンを借りようとするとき気になる事務手数料。金額の多さや、必要性が気になる人もいるでしょう。
本記事では、住宅ローンの手数料の種類やチェック方法を解説します。事務手数料以外の諸経費や手数料をできるだけ少なめにする方法なども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
住宅ローンを組むとき、事務手数料が金額に含まれており気になっている人もいるかもしれません。事務手数料は住宅ローンの諸経費のなかで大きな割合を占めるもの。金額は定率型や定額型で決められます。
なお、以下では住宅ローンの選び方について解説しているので、あわせて確認してみてください。
住宅ローンの事務手数料は、金融機関の申し込みなどを処理する手間に対して住宅ローンの利用者が払う手数料のことで、諸経費のなかでも大部分を占めます。事務取扱手数料・融資事務手数料など呼び方は金融機関ごと異なり、手続きの範囲の取り決めもとくにないため、数万円程度の場合もあれば数十万円かかることもあるなど、金額はバラバラです。
住宅ローンの諸費用の相場は、新築住宅やマンションの場合は物件価格の10%程度で、中古住宅の場合7%程度です。それらの諸費用のなかでも事務手数料は大きな割合を占めます。注意したいのは、事務手数料は借入金額に含まれるのではなく、上乗せでかかる点。住宅ローン購入で見落とされがちですが、数十万円の別途負担が発生する可能性もあるため、金額は欠かさずチェックしておきましょう。
住宅ローンの事務手数料は定率型と定額型があり、定率型の相場は借入金額の2.2%、定額型の相場は33,000円程度です。定率型はローンの総額に手数料率をかけて金額を決める方法、定額型は融資額にかかわらず一律の金額で請求される方法。定率型と定額型の2つのタイプを自分で決められる銀行もあります。
借入金額が3,000万円で2.2%の定率型のローンの場合、事務手数料は660,000円。定額型の場合、2,000万円でも3,000万円でも一律33,000円です。一見定額型のほうが圧倒的にお得に見えますが、定額型は保証料が別途でかかるケースや、金利が高い傾向にあるなど、結果的に定率型のほうがお得になるケースも少なくありません。
住宅ローンを組むときは事務手数料と保証料をセットでチェックしておきましょう。事務手数料は保証料とセットで比べられますが、両者はどのように違うのでしょうか。以下で、詳しく解説します。
事務手数料は金融機関に対して支払うもの、保証料は保証会社に対して支払うものです。どちらも住宅ローンを組むときに必要ですが、支払い先が違えば支払う意味も異なります。事務手数料は金融機関のローンの貸し出し事務手続きに関する手数料であり、保証料は保証会社にローンの支払いの保証をしてもらうために払う手数料です。
ローンの返済ができなくなった場合、保証がないと金融機関に担保にした住宅を差し押さえられてしまいますが、保証契約があることで、契約者が返済不能になったときに保証会社が一時的に代位弁済をしてくれます。代位弁済とは、その人に代わって金融機関に借金を返済すること。ただし、保証会社が金融機関に代位弁済しても、その人のローンの返済の必要がなくなる、もしくはローンが減ることはありません。代位弁済では、ローンの債権が金融機関から保証会社に移って、その人は保証会社にローンの残りを支払うことになります。
事務手数料と保証料の支払方法は、事務手数料のみを支払うタイプ、事務手数料と保証料の両方を支払うタイプ、事務手数料と保証料の支払いがない代わりに金利が高くなるタイプの3通りです。それぞれのタイプの仕組みや特徴、向いている人を解説します。
保証料の支払いがなく事務手数料のみが発生するタイプで、「事務手数料型」と呼ばれます。事務手数料型の場合、融資を受ける際に一括で手数料を支払うのが一般的です。金利が低く設定されている傾向にあるため、頭金を潤沢に用意でき、月々の返済額を減らしたい人に向いています。
事務手数料と保証料の両方を支払うタイプは、保証料型と呼ばれます。事務手数料が数万円と安めに、保証料が数十万円と高めに設定されているのが一般的です。
保証料型の場合の保証料の支払方法は、外枠方式と内枠方式の2種類があります。外枠方式は借入時に保証料を全額払う一括前払いの方式、内枠方式は金利に上乗せして払う金利上乗せの方式のことです。
外枠方式は一括での支払のため初期の負担が大きいものの返済総額が少なく済むのがメリットです。そのため、頭金を用意でき、月々の返済を抑えたい人に向いています。
反対に内枠方式は、初期費用は少なく済むものの総額が多くなる傾向にあるため、融資を受ける時点で資金の用意が難しい人に向いているでしょう。
ローン契約時には事務手数料と保証料がどちらも無料になるタイプもありますが、金利が高い傾向にあるため、どの程度の金銭的負担になるか注意してみることが重要です。
このタイプでは、事務手数料と保証料のない代わりに、保証料分がローンの返済時の金利に上乗せされます。初期費用はありませんが、その分、金利が大きくなり、毎月の返済額も高くなるでしょう。金利の上乗せ分は0.2%になる金融機関が多くあります。
金利がある程度高くても初期費用を払いたくないと思う人は、事務手数料と保証料の支払いがないタイプを選ぶとよいでしょう。当然、金利が高い分返済の負担が大きくなるため、滞りなく返済できそうか事前にシミュレーションしておきましょう。
住宅ローンではマイホーム取得費用だけ払えばよいものではありません。事務手数料と保証料のように必要な費用がわりと多く発生します。では、どのような費用がかかるのでしょうか。住宅ローンで事務手数料や保証料のほかにかかる主な費用を紹介します。
印紙税はローンの契約書をかわすときに必要です。印紙税の支払いは印紙を購入して契約書に貼りつける方法で行います。売買契約書、建築請負契約書などにも必要です。
住宅ローンの借り入れは「金銭消費貸借契約」という印紙税が必要な契約。印紙税は住宅ローンを借りた金額に応じた金額を納税しなければいけません。印紙税は印紙を契約書1通ごとに貼り付け、消印を押すことで納税を行います。印紙は郵便局や法務局で購入できますが、印紙を買ってお金を払っただけでは納税したとはいえません。
団体信用生命保険とは、住宅ローン返済中ローン契約者に万が一のことがあったときに、保険金で残りの住宅ローンが弁済される保障です。ローン契約者が病気やけが、死亡や重度障害などで働けずローンを払えなくなったとき、団体信用生命保険(団信)に入っていればローン相当額を代わりに払ってもらえます。 その保障を受けるために保険料を払わなければいけません。
団体信用生命保険の保険料は、その相当額を住宅ローンの金利に含むことで支払われるのが一般的です。ただし、住宅ローンとは別途で保険料を支払う場合もあります。価格の相場は10万~12万円です。
火災保険料や地震保険料は、住宅ローンで買うマイホームに保険をかけるために払うものです。建物だけでなく家財も保障します。
火災保険は、火災で住宅が燃えてしまったとしてもローンは残るため、その備えとして入る保険です。住宅ローンの担保になっている住宅が火災で価値が下がると金融機関側も困るため、その対策で火災保険の加入がローンを組むときの条件になります。マイホームを取得するならば必ず加入したい保険のひとつです。
なお、火災保険は火災による損害を基本に、風災や水災、落雷などの自然災害、爆発、盗難などを補償範囲にしている保険ですが、地震や噴火、津波による損害については補償されません。そのため、地震や噴火などの災害に備えるためには地震保険に加入する必要があります。
火災保険に単独に入る場合、戸建てのマイホームだったら1年間あたりの保険料は5万円程度が目安です。火災保険と地震保険をセットにして入る場合、1年間の保険料は10万円程度の保険会社が多くなります。
不動産取得税は、土地や建物を取得したときにその土地建物がある都道府県に支払う必要がある地方税です。マイホームを購入する場合、住宅ローンを組まない人も不動産取得税を支払わなければいけません。
税額の計算式は「固定資産税評価額×4%」です。ただし、2024年3月31日までに取得した場合、税率が3%に軽減される特例があります。また、要件を満たしている住宅の場合にはさらに軽減されることがあるため、税務署や不動産会社で詳しく聞いてみましょう。要件は新築と中古、土地と建物によって異なります。
登記の際にかかる税金である登録免許税は国に納付する国税であり、正確には金融機関でかかる経費ではありません。住宅ローンを組む際に、そのローンで買う住宅を金融機関が担保にするための手続き時にかかる税金です。住宅ローンを組むときには必ず必要になります。
登録免許税の計算式は「住宅ローンの借り入れ金額 × 0.4%」。3,000万円のローンの場合、「3,000万 × 0.4% = 12万円」です。
司法書士手数料は、住宅ローンを組む金融機関の担保にする登記手続きをしてくれる司法書士に支払う手数料のこと。住宅ローンを組むためには、そのローンで取得する住宅を金融機関の担保にする必要があります。そのためには登記手続きをしなければいけませんが、司法書士ではない素人が手続きをするのは難しいため、司法書士への依頼が必須です。
司法書士への手数料は、ローンの設定後に残金を決済し、その物件を引き渡したときに支払います。司法書士手数料の相場は5万〜10万円前後ですが、金額の決まりはなく担当の司法書士によって変わるため、目安程度に考えておきましょう。
不動産仲介手数料は、不動産売買の仲介を行う不動産会社に売買が成立したときの成功報酬として支払う手数料です。とくに中古物件の場合、不動産会社は売主と買主借主の間に入り、不動産の案内から契約手続きや引き渡しまでをサポートするため、その不動産会社のサポートの対価として不動産仲介手数料を払います。
直接または販売代理として不動産会社から売り出している新築マンションの場合、仲介されることもなく仲介手数料も発生しません。ただし、新築でも住宅を建てて売る住宅販売会社が売主になっている建売住宅は仲介手数料が発生する場合があります。不動産仲介手数料は売買契約を交わすときに半額を支払い、物件を引き渡すときに残額を支払うことと標準的な媒介契約書で決まっているものです。
仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法で決まっています。売買価格に対する比率の上限は、売買額が200万円以下では「売買価格の5%+消費税」、200万円超400万円以下の場合には「売買価格の4%+消費税」、400万円超の場合には「売買価格の3%+消費税」です。
400万円以上の物件を買ったときの計算式は面倒なため、「売買価格×3%+6万円+消費税」で速算します。2,000万円の中古物件の売買が成立した場合の仲介手数料は、2000万円×3%+6万円+消費税20万円=72.6万円です。
住宅ローンの諸経費は種類が多く、ローン自体と比べて一つひとつはそこまで多くないものの、合わせるとそれなりの額になってしまいます。住宅ローンを組むときには、以下のような方法で諸経費を節約しましょう。
火災保険の費用を抑えるには、水災、盗難、破損・汚損の補償のようなオプションを必要以上につけないのがおすすめです。火災保険の保険料は諸費用のなかで事務手数料や保証料に次いで高いため、ここの費用を抑えることが節約につながります。
不要なオプションを探すためには、まず住む場所の地域の災害情報を見てみましょう。たとえば、ハザードマップを確認して、購入する住宅に洪水の可能性がなければ、水災の保険オプションはつけなくてもOKと考えます。盗難については、自宅のセキュリティや治安次第で必要ないかもしれません。
また、火災保険は金融機関から勧められたもの以外のものに加入することも可能です。シミュレーションを活用して、必要以上に高い保険料を支払わなくて済むよう適切な火災保険料を見つけましょう。
なお、以下では人気の火災保険を保険料・補償内容を軸に徹底検証した結果をランキング形式で紹介しています。補償範囲をどこまでに設定するか選ぶ基準も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
保証料は、ローンに組み込んで月々の返済で支払うよりも一括払いで契約の日に支払うほうが節約できます。
保証料の支払い方法は一括払いと金利上乗せ型の2種類ありますが、金利上乗せ型は総支払額が大きくなってしまうものです。さらに、金利上乗せ型で保証料を払うときにも、できるだけ頭金や繰り上げ返済などで借入金額を低くしたり、返済期間を短くしたりすることで、総支払額を抑えられます。
頭金を多めに準備することで総返済額を減らすことができ、総返済額にかかる事務手数料を抑えやすくなります。住宅の取得金の中の借入金額は、頭金を入れることでその金額分だけ減るものです。そのため、総返済額に手数料率をかける定率型の場合、手数料も減ります。
事務手数料の相場は借入金額の2.2%のため、3,000万円の住宅の場合、頭金で総借入金額を減らすことで10万円単位の事務手数料を減らせるでしょう。以下では、頭金の有無でどのくらい事務手数料が安くなるかシミュレーションします。
<頭金なし>
3,000万円×2.2%=66万円
<頭金300万円>
3,000万円-300万円=2,700万円×2.2%=59.4万円
<頭金600万円>
3,000万円-600万円=2,400万円×2.2%=52.8万円
このように、頭金で総借り上げ金額を減らせると、事務手数料を削減できます。ただし、頭金を準備することが大変で資金を集めるのに期間がかかる場合には、無理に準備せず、そのほかの諸費用や手元の資金とのバランスを考えて決めましょう。
住宅ローンの手数料についてよくある質問をまとめています。住宅ローンの手数料について気になる質問があったら見てみましょう。
住宅ローンの手数料は、住宅ローンに組み込んで月々の返済で払うことも、現金で払うことも、どちらもできます。また、金融機関によっては現金一括で払ったあとの残りをローンに組み込むことも可能です。手数料を住宅ローンに組み込めれば初期費用を抑えられ、現金で先に払えばローンの利息負担も軽減できるでしょう。
事務手数料は、基本的に物件の引渡日、つまり住宅ローンが実行される日に支払います。先述したとおり、支払いは現金一括もありますが、住宅ローンのなかに組み込む、もしくは諸費用ローンを組んで月々の返済で払うことも可能です。
住宅ローンを組むときには事務手数料や保証料などの諸経費が気になるもの。住宅ローンを組むなら、諸経費が安くなるように工夫をしましょう。また、よい住宅ローンを選ぶことも大切です。こちらの記事で住宅ローンの人気商品をチェックし、自分に合うローン商品を選びましょう。
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