新NISAのつみたて投資枠を検討中で、すでに特定口座を持っているという人も多いのではないでしょうか。つみたて投資枠口座と特定口座はどちらも投資用の口座ですが、課税方法や投資対象など大きく異なる点がいくつかあります。そのため併用時には注意が必要です。
そこで今回は、つみたて投資枠と特定口座の違いについて詳しく解説します。おすすめの併用方法や併用時の注意点についても解説するため、つみたて投資枠をはじめる人は参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
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つみたて投資枠と特定口座はどちらも投資商品を保有できる口座ですが、異なる特徴をもちます。2つの口座にどういった違いがあるのか、詳しく解説します。
つみたて投資枠と特定口座の最大の違いは、非課税枠があるかどうかです。つみたて投資枠には非課税投資枠がありますが、特定口座にはありません。
つみたて投資枠口座で投資した場合、年間120万円までの投資で得た利益に対しては課税されない仕組みです。非課税期間は無期限で、成長投資枠と併用すると最大で1,800万円の非課税枠を獲得できます。
特定口座で投資した場合、利益に対して20.315%の税金が課せられます。たとえば10万円の利益がでたとすると、税金として支払う金額は約2万円です。
投資対象商品にも違いがあります。つみたてNISAで選べる商品は金融庁の基準をクリアした、公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されています。販売手数料がかからなかったり信託契約期間が長かったりと、長期の積立投資に適した商品が厳選されており、比較的安定的な運用が期待できます。
一方、特定口座の場合は、投資対象に制限がなく自由な選択が可能。投資信託以外にも、株式・債券・REITなど幅広い商品から選ぶことができ、大きなリターンや短期の利益を狙うことも可能です。つみたてNISAで選べない商品に投資したい場合は、特定口座を利用しましょう。
つみたてNISAの場合、投資方法は積立に限定されています。積立とは、一定期間ごとに一定額分の金融商品を購入する投資方法です。設定できる期間や金額は、利用する金融機関によって異なります。
特定口座の投資方法は自由に選択できるため、積立投資のほか一括投資も可能です。投資の上限金額もなく、価格が下がったタイミングで多くの金融商品を購入できます。
特定口座では、つみたて投資枠ではできない損益通算や繰越控除が可能です。そのため、投資で損失が出た際に節税できます。
損益通算とは、1年間の利益と損失を相殺できる制度のこと。利益から損失を差し引けるため、最終的な所得金額が減り税金を減らせます。
損益通算をしても損失が残った場合は繰越控除ができ、最長3年間にわたり損失を繰り越すことが可能です。例えばある年に30万円の損失が出た場合、翌年に20万円の利益が出たとしてもそれを相殺し、10万円分の損失をさらに翌年に繰り越せます。
なお繰越控除を受ける場合、損失を繰り越す期間中は株式などの取引がない年でも確定申告を行う必要があるので気をつけましょう。
つみたて投資枠口座と特定口座を併用することは可能です。ここではケース別に、つみたて投資枠口座と特定口座の併用がおすすめかどうか解説します。
余裕資金が少ない人や投資初心者には、つみたて投資枠のみの運用がおすすめです。特定口座はリスクも難易度も高いため、併用しない方が無難でしょう。
余裕資金が少ない状態でつみたて投資枠と特定口座を併用しても、期待できるリターンは多くはありません。それどころか選ぶ銘柄や市場の状況によっては、大きな損失を被る可能性さえあります。非課税枠のあるつみたて投資枠のみの運用であれば、長期的に考えればある程度の確実なリターンを見込むことが可能です。
また特定口座で投資をする場合、銘柄を自分自身で選ぶ必要があります。つみたて投資枠であれば金融庁が厳選する比較的好条件(信託報酬が低い・信託契約期間が長期など)のファンドに投資できるため、投資初心者であっても安心して投資が可能です。
多くの余裕資金があり積極的な売買をしたい人には、つみたて投資枠と特定口座の併用もおすすめです。特定口座では、つみたて投資枠にはない株式や債券への投資や相場の状況に合わせた短期的な取引もできるため、大きな利益も期待できます。
つみたて投資枠で節税効果やリスク軽減の恩恵を享受しつつ、特定口座で積極的な投資もできるのが併用のメリット。ただし特定口座では大きな損失が発生する可能性があるため、必ず余裕資金のなかで運用しましょう。
つみたて投資枠と特定口座を併用する際の注意点を紹介します。併用を考えている人は参考にしてみてください。
つみたて投資枠と特定口座の間で損益通算はできないので注意しましょう。例えばA口座で50万円の利益、B口座で50万円の損失がでていたとします。A・Bともに特定口座の場合、損益通算の対象となり利益は0円で税金はかかりません。
しかしAが特定口座でBがつみたてNISA口座だった場合、損益通算はできません。そのためB口座で損失がでているにも関わらず、A口座の利益50万円に対して20.315%の税金が発生してしまいます。
特定口座で保有している投資信託は、つみたて投資枠口座へ移管できない点にも注意してください。たとえば特定口座で積み立てている投資信託が、つみたて投資枠でも取り扱われるようになったとします。その際、これまで特定口座で積み立てていた資産をつみたてNISAに移して運用することはできません。
同じ投資信託を新たにつみたて投資枠口座で買いなおせば、非課税枠内で積み立てることは可能です。そのため特定口座の投資信託をつみたて投資枠のみで運用したい場合、一旦特定口座内の投資信託を売却して、再度つみたてNISA口座で投資信託を購入する必要があります。
なお、つみたて投資枠口座内の投資信託を特定口座へ移管することは可能です。その場合、移管した時点での時価が取得金額となります。ただし特定口座へ移管すると利益に対して税金が発生するため、非課税期間終了前の移管はメリットは少ないでしょう。
つみたて投資枠と特定口座を併用する場合、確定申告が必要となるケースがあります。
併用時に確定申告が必要となるケースは、主に2つあります。1つ目は、源泉徴収ありの特定口座で損失が発生した場合です。確定申告をしないと特定口座の損失は繰り越されないため、損失を3年間繰り越せる繰越控除を利用する場合は確定申告をしましょう。
2つ目は源泉徴収なしの特定口座で20万円を超える利益が発生した場合です。利益が20万円以下の場合は、源泉徴収なしの特定口座であっても確定申告の必要はありません。
なお、つみたて投資枠だけで運用する場合は確定申告は不要です。
これから新NISA口座を開設するなら、各NISAの対象商品数が多い証券会社がおすすめです。各証券会社が用意している商品には違いがあり、成長投資枠・つみたて投資枠の対象商品の数も異なります。
成長投資枠・つみたて投資枠におすすめの証券会社・銘柄や、詳しい選び方は下記の記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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