2024年1月開始の新NISA制度では、旧制度よりも投資枠が拡大。新NISAの利用を検討中の人のなかには、年間いくらまで投資できるのか、最大限活用するにはどうすればよいのか気になる人もいるでしょう。
今回は、新NISA制度の年間投資枠や生涯で投資できる限度額を紹介します。上限を超えた場合の対処法も解説するので、新NISAのスムーズな活用に役立ててください。
保険代理店に7年間勤務。その後、お金の不安や迷いがない人生をお客様に歩んでもらうことを実現させるためにFPとして独立をする。現在は、「高齢出産夫婦が家を買って、2人目を出産しても、子どもが希望する進路をあきらめさせない家計を実現させる相談業務」を中心に活動中。また、子育て世代のための資産運用のサポートも行っている。『書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方』(翔泳社)など書籍の出版も手掛ける。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
新NISA制度では、2023年12月末までのNISA制度に比べて年間投資枠が大きく拡大されました。非課税保有限度額とあわせて上限を確認し、新NISAでどれくらい投資できるかイメージしましょう。
2023年12月で終了したNISA制度は、つみたてNISAと一般NISAの選択制。つみたてNISAを選んだ場合の年間投資額は40万円、一般NISAは年間120万円まででした。年間投資枠の大幅な拡大は、制度改正における大きな変更点といえるでしょう。
なお旧制度と同様に、年間投資枠を使い切れなかった場合、翌年への持ち越しはできません。たとえば、2024年につみたて投資枠で100万円分買付した場合、余った20万円は翌年の投資枠にプラスできず、2025年の投資枠は120万円です。
とはいえ、生涯に投資できる非課税金額に達するまでは年数関係なく非課税で投資を続けられます。投資できる非課税金額が少なくなるわけではないため、1年間に投資できる金額を使いきれなかったとしても気にすることはありません。自分のペースで投資を続けましょう。
新NISAでは、1,800万円の生涯非課税投資限度額が設定されます。このうち成長投資枠の上限は1,200万円までと決まっており、成長投資枠で1,200万円を利用した場合、残りの600万円はつみたて投資枠でしか使えません。つみたて投資枠は、単独で1,800万円を使い切ることも可能です。
新NISA口座で買付した金融商品を、無期限で保有できるのも大きな変更点です。旧NISA制度では非課税保有期間に制限があり、つみたてNISAは20年、一般NISAは5年でした。つまり、実質的な投資上限額は、つみたてNISAでは年間40万円×20年で800万円、一般NISAでは年間120万円×5年で600万円です。
また、新NISAでは制度が恒久化。旧NISA制度では、口座開設できる期間が2023年までと制限があり、保有期間の終わりを考慮して売却タイミングを検討したり、上限まで活用するために急いで口座開設したりする必要がありました。新NISAでは期間の制限がないので、自分のペースで長期的に資産形成できるでしょう。
ちなみに旧制度の投資商品は、新NISAへロールオーバーできません。旧NISAと新NISAは別々の制度であり、引き継げないことを覚えておきましょう。
旧制度で保有している商品は、新規投資はできないものの、非課税期間満了まで引き続き運用することはできます。旧制度で保有している商品はそのまま保有し続け、一方で新NISAで新しく投資をはじめると非課税枠を最大限活用できます。
いち早く新NISAの限度額まで投資するなら、つみたて投資枠・成長投資枠の年間投資枠を目一杯利用しましょう。月々の具体的な投資額を紹介するので、上限まで活用したい人は参考にしてください。
スポット購入や積立注文の増額設定を取り入れて、年間投資枠を使い切る方法もあります。毎月一定のペースで積立しながらピンポイントで買付額を増やすなど、より自由度の高い投資ができるでしょう。
たとえば、月8万円を積立投資しながら、年2回のボーナス時に12万円ずつ増額すると、年間投資額は8万円×12+12万円×2で120万円。つみたて投資枠を上限いっぱい使えます。増額設定ができるかどうかは金融機関によって異なるため、事前に確認してください。
成長投資枠なら積立のほか、好きなタイミングで商品を買付するスポット購入にも対応可能です。年間投資枠240万円の範囲で、株式や投資信託などの気になる商品に一括投資する方法を取り入れられます。
なお、スポット購入や増額設定は、金融商品の値動き次第で損失が大きくなる可能性がある点に注意しましょう。
積立投資であれば、値上がりした際には少なく、値下がりした際には多く買うことで買付の平均価格を下げられますが、価格変動リスクがあるスポット購入では慎重な判断が大切です。
新NISAの年間投資枠や非課税保有限度額を超えそうなときは、状況に応じて投資のタイミングをずらしたり、売却によって投資枠を設けたりしましょう。上限を超えたらどうしたらよいのか気になる人は、これから紹介する3つの対処法をチェックしてください。
なお、成長投資枠では、つみたて投資枠の対象商品も買付できます。つみたて投資枠で積立設定を目一杯行ったものの成長投資枠が余っているなら、成長投資枠で積立を検討するのもよいでしょう。
たとえば、500万円で買付した商品を600万円で売却すると、500万円分の投資枠が再び活用できることに。ただし復活した投資枠が利用できるタイミングは、翌年以降です。投資枠が復活しても、つみたて投資枠・成長投資枠の年間上限は超えられないので注意しましょう。
株式投資や投資信託のスポット購入で利益が出て利益を確定させたい場合は、売却して非課税投資枠を復活させるとよいでしょう。
ただし積立の場合は、積み立てた資産を売却して非課税投資枠を復活できたとしても、翌年も同じ商品で積立をするなら売却するメリットはありません。自分の投資スタイルに合わせた運用を行いましょう。
翌年の年間投資枠の使用や、売却による限度額の復活が待てない場合や、そもそも1800万円以上を投資したい場合、超過分を課税口座で取引する手があります。NISA口座では上限を超えて買付できないものの、課税口座(特定口座・一般口座)なら購入可能です。
NISA口座は非課税ですが、課税口座では株式の売却益や配当金、投資信託の売却で得た利益や分配金に20.315%の税金がかかります。
新NISAの超過分は課税口座扱いになる点は各金融機関で共通しているものの、詳細な対応が異なる場合もあるので事前に確認しましょう。たとえば金融機関によっては、つみたて投資枠の上限を超えると成長投資枠を消費し、成長投資枠も上限に達すると課税口座で取引する決まりがあります。
分配金とは、運用結果に応じて投資家に支払われるお金のことで、投資信託の商品は分配金あり・分配金なしの2つに大別できます。分配金ありの投資信託を購入した場合、商品によっては再投資に回す設定が可能です。
再投資すれば元本が増えるため、利益が出たときのメリットが大きいものの、再投資によって新NISAの投資枠が消費されます。投資枠の上限を超えた分は課税口座での取引が基本であるため、年間投資枠ぎりぎりで積立する場合にはより注意が必要です。
たとえばつみたて投資枠を毎月10万円ずつ利用する場合、再投資によって上限を超える可能性があります。再投資による上限超過が心配な人は、もともと分配金なしの投資信託を選ぶのもよいでしょう。
新NISA制度を上限いっぱいまで利用すると、非課税メリットや複利効果をより活かせる可能性があります。継続的な資産形成に向けて、制度を最大限に活用する利点を確認しましょう。
たとえば100万円の利益が出た場合、税金を単純計算すると約20.3万円。投資額を2倍に増やして利益が200万円出たときの税金は、約40.6万円です。NISA制度を利用すればどちらのケースでも非課税で、利益が大きいほど節税効果も大きくなるといえるでしょう。
ただし投資である以上、損失が生じる可能性がある点には注意してください。上限まで投資したからといって、必ず利益が出るわけではない点を覚えておきましょう。
複利とは、運用で生じた利益を元金に加えて投資に回すこと。もともとの投資額だけで運用する単利よりも、利益を増やしやすい方法です。
金融庁の資産運用シミュレーションを使って、複利で積立投資した場合の運用状況をイメージしてみましょう。
たとえば利回り3%の投資信託商品を月5万円ずつ買付した場合、10年後の資産額は約699万円。投資額600万円に対し、99万円の利益がある計算になります。一方、積立額が月2.5万円で20年間運用すると、資産額は約820万円。投資元本は10年運用した場合の600万円と同額であるのに対して利益は約120万円多くなる計算です。積立期間が長くなるほど利益が膨らむのは、複利効果が効いている証拠といえます。
ただし、シミュレーションはあくまでも予測です。実際の運用結果とは異なる点に注意しましょう。
新NISA制度を利用する際には、上限にこだわりすぎず、無理なく投資を続けることが大切です。制度改正によって非課税保有期間が無期限化されたため、焦って枠を使い切る必要はありません。
どんな目的で投資するのか、どれくらい資産を増やしたいのかを考え、生活に無理のない範囲で投資額を決めるとよいでしょう。
20~30代のうちはコツコツ少額を積み立てておき、やりくりに余裕が出たら投資額を増やす、教育費や住宅ローン繰上げ返済のために毎月いくら積み立てるなど、ライフスタイルも考慮してみてください。また、一括投資の場合、どの程度の損失であれば耐えられるのかを事前に決めておけば、売却時の冷静な判断に役立ちます。
なお、投資を続けて資産形成するためには、新NISA口座を開く金融機関選びも重要です。金融機関ごとに新NISAの取扱商品や取引コストが異なるので、以下のコンテンツを参考に自分にぴったりな金融機関を選んでみましょう。
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