資産形成の第一歩として、多くの人の関心を集めているNISA。利益が非課税になることをはじめメリットが多いことはわかったものの、一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、一体どっちを選べば良いか迷っている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、一般NISAとつみたてNISAの違いをさまざまな角度から徹底的に比較します。iDeCoとの違いやおすすめの証券会社も紹介するので、自分に合った投資方法を見つける参考にしてください。
K&Bプランニング代表。保険会社の勤務経験を活かし2012年よりファイナンシャルプランナーとして活動を開始。Webや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。得意分野は初心者向けの資産運用、保険の見直し、貯蓄。著書に「本物の節約・残念な節約」(河出書房新社)
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
NISA口座おすすめTOP5
NISAとは、国民の資産形成を後押しするために始まった少額投資非課税制度のこと。通常、投資で得た利益は約20%課税されてしまいますが、NISAを利用して得た利益は課税されずにすべて自分の手元に残せます。
たとえば、50万円を投資したとして、1年間で10万円の利益が出た場合について考えてみましょう。通常は10万円の利益に対して約20%課税されることで2万円が税金として引かれ、手元に残る金額は合計58万円に。
NISAを利用すれば、10万円の利益をそのまま受け取れるため、合計60万円を手元に残すことが可能です。
NISAは、銀行や証券会社にNISA口座を作り、その口座に入金した資金で株式などの金融商品を買うことで開始できます。非課税で運用できるといっても、NISAは投資金額や非課税期間に上限がある点には注意が必要です。
非課税期間や投資金額によって、一般NISAとつみたてNISAの2種類に分かれます。20歳未満が利用できるジュニアNISAもありますが、2023年をもって廃止することが決定済です。現行制度では一般NISAとつみたてNISAは併用することはできないため、どちらか一方を選択する必要があります。
一般NISAの非課税期間は5年で、つみたてNISAは20年です。この期間に得た利益が、非課税の対象になります。ある程度短期で利益を出したいなら一般NISA、長期でコツコツと投資をして利益を出したいならつみたてNISAを選択すると良いでしょう。
NISAの非課税期間は5年ですが、終了後はロールオーバーと呼ばれる制度を利用して、さらに非課税期間を5年間伸ばすことも可能です。つみたてNISAにはロールオーバー制度がないため、20年以上伸ばすことはできません。ロールオーバーについては、あとの項目で詳しく解説します。
いずれの場合も、非課税期間内で利益が出ているうちに売却すれば、確定した利益に対して課税されることなく受け取りが可能です。
現行の制度では、一般NISAは1年間に投資できる金額の上限が120万円で5年間合計すると最大600万円、つみたてNISAは1年間の上限が40万円で20年間の合計で最大800万円まで投資が可能です。ただし、2024年からスタートの新NISAでは、非課税で投資できる金額が1人あたり1,800万円に設定されていますよ。
一般NISAのほうが1年で投資できる金額が多いため、高いリターンを期待できますが、その分リスクも高まります。非課税期間の違いと合わせて考えると、投資できるまとまった資金がある人や個別株も運用したい場合は一般NISAがおすすめ。長期的にコツコツと資産を増やしたい場合は、つみたてNISAが有利です。
1年間に投資できる金額は、投資商品を売却しても増えることがない点には注意してください。たとえば一般NISAで上限の120万円まで投資をし、その後70万円分を売却したとしても、非課税枠が70万円分戻るわけではありません。一度投資したら、その分の枠が戻ることはないことは覚えておきましょう。
2024年から始まる新NISAでは、投資商品を売却した場合、非課税枠の再利用が可能となります。
一般NISAは通常の投資と同じく、好きなタイミングと金額で金融商品を購入できます。いわゆるスポット投資と呼ばれるやり方でも、積立方式でもどちらでもOKです。
対してつみたてNISAは、基本的に毎月同じ商品を同じ額で購入する積立方式しか選択できません。相場を見て買いのタイミングを見極めながら投資したい場合は、一般NISAを選んでください。自動で積立投資をするなら、つみたてNISAでも問題ありません。
あまり知識がなく、タイミングを見て売買するようなやり方に難しさを感じるのであれば、つみたてNISAを選んでみてください。
投資できる金融商品は、一般NISAのほうがより多くの種類から選択できます。具体的には、国外株式・外国株式・投資信託・REIT・ETFなどから幅広く投資することが可能です。金融商品に詳しく、投資したい金融商品が明確な人は、一般NISAをおすすめします。
一方つみたてNISAの金融商品は、投資信託がメイン。投資信託とは、運用のプロが一定のルールで投資金の運用を行う金融商品です。つみたてNISA対象の投資信託は、低コストで長期運用に向いた商品を国があらかじめ選定しているので、投資にあまり詳しくなくてもリターンを期待できます。
あまり投資知識がなく、簡単に始めたい人にはつみたてNISAがおすすめです。
現行の一般NISAには、5年間の非課税期間が終わったあとも、投資した金額と運用益を次の非課税期間に延長できるロールオーバー制度があります。
たとえば、NISA口座で120万円を投資して5年で20万円の利益が出た場合、本来はこの時点で非課税期間が終了しますが、ロールオーバーの手続きをすることで合計140万円をさらに5年間非課税で運用できることに。
ロールオーバーができる金額に上限はないため、1年間の上限である120万円を超えていても、全額をロールオーバーさせて非課税枠に移せます。
ただし、ロールオーバーするとその年の非課税枠を使うことになるため、120万円以上をロールオーバーした場合はその年に新たな投資をすることはできず、資産を保有しているだけの状態になる点には注意しましょう。
たとえば、80万円ロールオーバーした場合は、6年目は残り40万円分だけ新たに投資できますが、120万円ロールオーバーした場合は6年目に新たに投資できる枠はゼロです。
つみたてNISAにはロールオーバー制度がないので、投資してから20年が経過した場合は課税枠で運用するか、売却することになります。
また、2024年に開始の新NISAでは非課税保有期間が無期限となるため、ロールオーバーが不要。ただし現行制度から新制度へのロールオーバーは不可能なため注意しましょう。
2024年からは新NISAとして、「非課税枠の拡大」と「非課税期間の無期限化」を中心とした制度変更が予定されています。現行の一般NISAだと非課税で投資できるのは年間120万円までで、期間は5年間。つみたてNISAでは年間40万円の非課税枠を20年間利用できます。
制度変更にあたって年間の投資枠は、通常の投資枠が240万円・つみたて投資は120万円に拡大する見込みです。そして、新NISAでは現行の制度だと不可能な、一般投資の枠とつみたて投資の枠の併用が可能に。合算すると毎年360万円まで非課税で投資できるようになるので、現行の制度に増して節税効果が上がります。
新NISAでは、保有期間が無期限化するのも注目すべきポイント。数十年スパンでの運用が可能なので、時間分散によるリスクヘッジと複利効果、両方のうまみをこれまで以上に受けられます。加えて、現行制度と違い非課税枠の再利用が認められるため、NISAを利用した売買がしやすくなり、老後まで見据えた資産形成を実現できるでしょう。
2022年末まで検討されていた一般・つみたてNISA合算で120万円まで非課税投資できる「2階建て構造」の新NISAは廃案になり、2023年年始時点では恒久化案での調整が進んでいます。恒久化案も確定ではないので、NISA制度の活用を考えているなら今後の動向を追うことが大切ですよ。
次に、それぞれのNISAがどんな人におすすめかについて解説します。
つみたてNISAがおすすめなのは、投資の知識があまりなく、着実にリターンを得たい人です。つみたてNISAは、利益を出しやすい長期少額投資方法に則った設計で、20年積立することができればある程度の利益を出せる可能性が高いといえます。
投資に回せる金額が多くない場合も、つみたてNISAがおすすめ。証券会社によっては100円や1,000円の少額から積立設定を行えるため、まとまった資金が捻出できなくても挑戦しやすい投資制度といえるでしょう。
つみたてNISAは買うタイミングに悩む必要がなく、コツコツ積み立てていくだけでいいので、安心して投資が進められるのも魅力です。難しいことはよくわからない、なるべく簡単に投資がしたいという人は、つみたてNISAを選びましょう。
投資の知識がある程度あり、投資に回せる金額も多めに用意できる場合は、一般NISAがおすすめです。選択できる金融商品も多く、つみたてNISAと違い毎月決まった金額を投資する必要がないため、好きなタイミングで自由に金融商品を売買できます。
通常の株式と同様に、株の売買によって利益を狙いたい場合や、値動きを見ながら自分で好きに投資がしたい場合には、一般NISAのほうが手応えが感じられるはずです。
まとまった資金があり、短期で利益を出すための知識をもっているなら、一般NISAで資産形成に取り組むと良いでしょう。
iDeCoは、老後の資金作りを目的に月々数万円を金融商品へ投資し、60歳以降に資金を受け取るために作られた個人向け年金制度です。iDeCoも税優遇を受けながら金融商品に投資できる制度ですが、内容はNISAと異なります。
iDeCoのメリットは、iDeCoに投資した金額がすべて所得控除されることです。所得税は、その年の所得に対して課税されますが、iDeCoに投資している場合は、投資した金額を課税対象の所得から全額差し引くことができます。結果、所得税の負担を減らせる仕組みです。
たとえば、課税対象の所得が200万円の場合、所得税は単純に計算して約10万円発生しますが、iDeCoに年間10万円投資をしていた場合は、課税所得が190万円になり所得税が5000円減り95000円となります。課税所得やiDeCoの掛け金が大きくなればなるほど、受けられる恩恵も大きくなるのが特徴です。
上限額は職業や状況に応じて定められており、会社員であれば月々12,000〜23,000円、自営業であれば6万8,000円に設定されています。
運用益はNISAと同様に非課税ですが、現金化して受け取る際に大きく課税されてしまうこともあります。課税されるかどうかは、受取時の合計所得、企業での勤続年数によって変わるため、状況に合わせて受け取り方を工夫することが必要です。
iDeCoのデメリットは、60歳になるまで資金の受け取りができないこと。60歳までに資金を受け取りたい方はNISAの活用がおすすめです。
これからNISA口座を開設するなら、各NISAの対象商品数が多い証券会社がおすすめです。各証券会社が用意している商品には違いがあり、NISA対象商品の数も異なります。
また、一般NISAであれば株式売買時の手数料などコストの違い、つみたてNISAであれば積立できる最低金額が証券会社を選ぶ基準のひとつです。NISA・積立NISAでおすすめの証券会社は下記の記事で確認できるので、ぜひチェックしてください。
NISA口座おすすめTOP5
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