住宅ローンは毎月決まった金額を返済するのが基本ですが、ボーナス月に追加で返済を行う「ボーナス払い」を併用する方法があります。ボーナス払いを利用することで支払期間を短縮できるなどのメリットがありますが、本当に得になるのか、デメリットはあるか、と迷っている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、ボーナス払いのメリットやデメリット、ボーナス払いを利用するうえでの注意点を解説します。住宅ローンでボーナス払いをすべきか検討中の人は、ぜひ参考にしてください。

大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
住宅ローンのボーナス払いとは、ボーナス月に毎月の返済額に上乗せしてボーナス払い分を返済する方法です。毎月の返済額を10万円、ボーナス払いを20万円に設定している場合、ボーナス月には10万円+20万円 = 30万円を返済します。
全体の借入金額に対するボーナス払いの割合は金融機関によって上限・下限が異なり、多くの金融機関が定めているボーナス払いの上限割合は、借入額の40〜50%です。上限がない金融機関もあれば、「100万円以上10万円単位」などの範囲内で決められる金融機関もあります。
一例として、3,000万円の借り入れに対してボーナス払いの割合を20%に設定した場合、600万円をボーナス払いで返済するという計算です。ボーナスが年に2回支給される場合は、600万円を2回に分けて返済します。
ボーナス払いのメリットとして、毎月の返済額が軽減されること、返済期間が短くなることがあげられます。
月々の返済に加えてボーナス払いをすると、その分、月々の返済額を減らすことができます。
次の条件でローンを組み、ボーナス払いを設定した場合と設定しなかった場合の返済額を比較してみましょう。なお、ここで紹介する返済額は簡易シミュレーションによるもので、実際の返済額は条件によって異なります。
借入額:3,000万円
返済期間:35年
借入金利:年1.5%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等方式
ボーナス返済の割合が0%(ボーナス払いなし)の場合、毎月の返済額は91,855円です。一方で、ボーナス返済の割合を30%に設定すると毎月の返済額が64,298円になり、ボーナス払いを設定しなかった場合に比べて27,557円少なくなります。
毎月の返済額を減らさずにボーナス払いを設定すると、返済期間を短縮できます。
ここでもシミュレーションを行って比較してみましょう。毎月の返済額を10万円に設定し、ボーナス払いをそれぞれ、ボーナス払いなし・ボーナス払い10万円・ボーナス払い20万円・ボーナス払い30万円に設定したときの返済期間の違いは、次のようになります。
ボーナス払いなし:31年5か月
ボーナス払い10万円:26年0か月
ボーナス払い20万円:22年1か月
ボーナス払い30万円:19年4か月
ボーナス払いを30万円に設定すると、ボーナス払いなしの場合に比べて返済期間を約12年短縮することが可能です。
また、住宅ローンなどの各種ローンは、一般的に借入期間が長くなるほど利息が増えるため、返済期間を短くすることで総返済額を減らす効果も期待できます。
ボーナス払いを設定して毎月の返済額を減らすと、ボーナス払いなしの場合に比べて総返済額が高くなります。ローンの返済時には、毎月の返済額に加えて「利息」を支払いますが、利息は返済期間が長くなればなるほど増えていくのが一般的です。
ボーナス払いを設定して毎月の返済額を減額した場合、減らした分はボーナス払いでまとめて支払うことになります。結果的に返済を先延ばしするのと同じことになり、利息が増えてしまうのです。
次の条件で、ボーナス払いあり、ボーナス払いなしの場合の総返済額を比較してみましょう。
返済期間:35年
借入金利:年1.5%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等方式
<ボーナス払いあり(30%)の場合>
毎月の返済額:64,298円
ボーナス払い返済額:165,731円
総返済額(利息込み):38,606,455円
<ボーナス払いなしの場合>
毎月の返済額:91,855円
総返済額(利息込み):38,579,007円
総返済額は、ボーナス払いありのほうが27,448円高いという結果になりました。
ボーナス払いを設定して毎月の返済額を減らすと家計の負担が軽減できますが、その分、総支払額が増えてしまう点には注意が必要です。
会社や個人の業績次第ではボーナスが想定より下がったり、支給されなかったりすることもあり、ボーナス払いの負担が大きくなることも考えられます。
住宅ローンは長期にわたって支払い続けるものなので、ボーナスが減額あるいはカットされた場合のことも想定したうえで、ボーナス払いを利用するかどうか決めましょう。
ボーナス払いは、子どもが生まれて養育費が必要になる、転職によってボーナスが少なくなるなど、生活に大きな変化があった場合に対応しづらいデメリットがあります。
住宅ローンは、20年、30年のように長期で返済することになるため、ライフスタイルの変化やライフイベントがあったとしても無理なく返済できる金額に設定することが大切です。
住宅ローンでボーナス払いを選択するときは、次のポイントを押さえましょう。
ボーナスが減額されたり、支給自体がなくなったりしても、無理なく支払い続けられる額を設定しましょう。ボーナスに頼った支払計画を避けて、日頃から余裕を持った家計管理を心掛けることが大切です。
普段から決まった金額を貯金しておけば、ボーナスの不支給や減額にもあわてず対応できます。
貯金が難しい場合はボーナス払いを選択せず、資金に余裕があるときに追加で支払いを行う「繰上返済」を行うのもおすすめ。繰上返済のタイミングは自分で決められるため、ボーナス払いのようなプレッシャーがないのがメリットです。
急な出費に備えるための貯金も、普段から意識して行いましょう。
ボーナスの不支給や減額以外にも、不測の事態は起こるものです。住宅ローンでボーナス払いを設定すると、急な出費があった場合にボーナスで対応しづらくなります。無理のない返済計画を立て、余裕を持った家計管理を行うことが大切です。
ボーナス払いを選択したいなら、定年前に住宅ローンを完済できるよう返済計画を立てましょう。
定年退職すると、当然ボーナスの支給もなくなります。また、退職金で住宅ローンを完済する計画を立てていても、退職金の金額が想定より低く、住宅ローンが残ってしまうことがある点に注意が必要です。
年金で住宅ローンを支払い続ける場合も、公的年金は65歳から支給が開始されるため、60歳で定年を迎えると5年間は年金を受け取れないことを考慮しなければなりません。
老後のさまざまなリスクを考えると、住宅ローンは定年前に完済できるよう計画するのが賢明といえます。
住宅ローンを借り入れている金融機関に相談することで、ボーナス払いの金額を変更できる可能性があります。返済が難しくなった理由を正直に話してみましょう。
ボーナス払いができないときには、ボーナス払いを止めるのではなく、ボーナス払いの割合を減らす方法があります。金融機関に申し出て審査に通過すれば、ボーナス払いの内容を変更することが可能です。
ほかの金融機関の住宅ローンに借り換えることで、ボーナス払いをなしにしたり、割合を減らしたりすることが可能になります。利用中の金融機関でボーナス払いの内容変更に関する審査に通らなかったときは、借り換えを検討しましょう。
「借り換え」とは、ほかの金融機関でローンを組んでお金を借り、借りたお金で最初のローンを完済する方法です。新規で住宅ローンを組み直すことになるため、申し込み時に希望のボーナス払いの方法を申請し、審査に通過すれば支払内容を変更できます。ただし、審査の結果によっては借り換えができないこともあるので注意が必要です。
借り換えについて知りたい人は、借り換え住宅ローンのおすすめランキングを参考にしてください。
借入額に対するボーナス払いの割合は平均で20%程度といわれています。借入先の金融機関で設定可能な範囲内なら、自由にボーナス払いの割合を決めることも可能です。
ボーナス払いの支払額の平均はボーナスの30%程度。そのくらいの割合ならば、ボーナスの不支給や減額があっても支払いが可能と考える人が多いようです。
ボーナス払いの引き落とし月は、会社からのボーナス支給月に合わせるのが一般的です。会社のボーナス支給月に変更があった場合や転職した場合は、金融機関に申し出ることで支払月を変更できます。
ただし、年2回のボーナス引き落とし月のうち、一方のみの変更はできません。また、変更手続きに手数料がかかる金融機関もあります。
住宅ローンのボーナス払いは、金融機関に申し出て審査に通過すれば、途中でやめたり内容を変えたりすることもできます。ただし、金融機関によっては手数料がかかるので注意しましょう。
ボーナス払いの変更に関する手数料は、金融機関によって異なるもの。たとえば、「auじぶん銀行」のボーナス払いの変更には、条件変更手数料として5,500円(税込)がかかります。ソニー銀行の場合は、変更手数料550円(税込)、りそな銀行の場合は、変更契約書に貼る収入印紙代として200円が必要です。
なお、フラット35の場合は、ボーナス払いの変更に手数料はかかりません。
ボーナス払いが遅れると、信用情報機関に「延滞・遅延」として情報が記録されます。信用情報機関にマイナスの情報があると、クレジットカードの新規申し込みや各種ローンなど、ほかの審査に影響する可能性も。また、遅延損害金も発生するので注意が必要です。
また、金融機関に連絡することなく3か月を超えて返済が遅れると、ローン残高の一括返済を求められることがあるので気をつけましょう。支払いが難しくなる可能性が出てきた段階で、速やかに相談することが重要です。
以下の記事では、人気の住宅ローンを徹底比較しています。変動金利・固定金利・フラット35とタイプ別にランキングを設けているので、住宅ローン検討中の人はぜひ参考にしてみてください。
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