個人事業主が老後資金を貯めるときに、選択肢に挙がるのがiDeCoと国民年金基金。しかし、違いがよくわからず、どちらで積み立てるべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、個人事業主の資産形成にあたって、iDeCoと国民年金基金のどちらを選べばよいかについて解説します。それぞれの制度の特徴や具体的な違いも説明するので、ぜひ参考にしてくださいね。
K&Bプランニング代表。保険会社の勤務経験を活かし2012年よりファイナンシャルプランナーとして活動を開始。Webや書籍などで記事執筆、セミナー講師、家計相談などを行う。得意分野は初心者向けの資産運用、保険の見直し、貯蓄。著書に「本物の節約・残念な節約」(河出書房新社)
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
iDeCoと国民年金基金は、公的年金だけでは足りない老後資金を補うための資産形成ができる制度ですが、目的や対象者・仕組みに違いがあります。まずは、その違いを確認しましょう。
iDeCoはと、老後資金を形成することを目的として作られた私的年金制度です。60歳以降の受け取れる老齢給付金のほか、病気や障害を負った時に受け取れる障害給付金や、自分がなくなったときに遺族が受け取る死亡一時金もあります。
申し込みや掛金の拠出・運用などをすべて自分で行う必要があり、加入は任意。自分自身で資産を運用し、その結果に基づいた給付を受け取ることができる制度です。
以前は加入資格者が自営業者と一部の会社員に限定されていましたが、2017年の改正によって会社員や専業主婦(主婦)なども利用できるようになり、多くの人が利用しています。
国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者のために作られた公的年金制度です。
会社員は国民年金に上乗せできる厚生年金に加入しますが、自営業者やフリーランスは加入できません。
そこで、厚生年金の代わりに年金制度の二階部分として用意されたのが国民年金基金です。個人事業主が国民年金基金に加入すれば、国民年金に上乗せして受け取る年金を確保できます。
一方、iDeCoは自営業者や会社員、専業主婦(主夫)など幅広く利用できる制度です。
先述の通り、iDeCoと国民年金基金は対象者や制度の目的が異なります。そのため、両制度の内容を比較すると、細かい違いがいくつかあります。以下では、両者の違いを具体的に確認しましょう。
iDeCoと国民年金基金では、受給額の決まり方が違います。
iDeCoは、自分で資金を運用する制度。投資する商品の選定や資産配分の変更などを自ら行わなければなりません。iDeCoでは運用次第で利益が生まれることも元本割れすることもあり、それによって将来の受給額も変化します。
一方の国民年金基金では、加入時の年齢やプランに応じた掛金を支払えば受給額が確定。将来受け取る受給額があらかじめ分かっているのが、iDeCoとの大きな違いです。
iDeCoと国民年金基金は、年金として受け取る場合の条件も違います。
iDeCoで受け取る年金は有期年金で、原則として60歳から受給を開始し5年以上20年以下の期間、年金を受け取れます。金融機関によっては終身年金として受け取れる場合もありますが、多くの場合は有期年金だと考えておくとよいでしょう。
一方、国民年金基金は口数制で、終身年金と確定年金を組み合わせて受け取ることが可能。1口目は65歳から一生涯給付が続く終身年金と決まっていますが、2口目以降は終身年金と確定年金(受給期間が定まっている年金)のいずれかが選べます。
なお、年金受給中に契約者が死亡した場合、iDeCoでは資産を売却して遺族に死亡一時金が支払われ、遺族が継続して年金の形で受け取ることはできません。これに対して国民年金基金では、契約者の生死にかかわらず決められた期間中、年金を受け取ることが可能です。
iDeCoと国民年金基金、どちらにも節税効果がありますが、内容が少し異なります。
iDeCoは、掛金全額が所得控除の対象になり課税所得から差し引けるので、所得税や住民税の金額を抑えることが可能。さらに、通常の投資であれば運用益に課税されますが、iDeCoの運用益は非課税扱いになり全額を再投資できます。
また受給時にも、iDeCoを年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除を利用して節税可能です。
一方、国民年金基金は掛金全額が社会保険料控除の対象になり、所得税や住民税が軽減される点はiDeCoと変わりません。受け取り時に公的年金控除の対象となって税金額を抑えられるのも、iDeCoと同様です。
ここまでで紹介した通り、iDeCoと国民年金基金にはさまざまな違いがあります。どちらに加入したほうがよいかは自分の状況によって異なるので、以下でそれぞれおすすめのタイプを確認しましょう。
国民年金基金よりもiDeCoに加入したほうがよいのは、20〜30代の若い人や収入が安定している人、投資に興味があり学ぶ意欲がある人です。
iDeCoは投資なので、運用期間が長いほど安定した成果が見込めるため、20〜30代の若い人におすすめです。元本に運用益を加えて再投資する複利運用によって、大きな利益を生み出せる可能性があります。
また、収入が安定して余剰資金を確保できる場合は、ハイリスク・ハイリターンの商品を選んで大きな利益にチャレンジすることも可能です。もちろん、リターンが高い商品はリスクも高いため、元本割れする可能性も高まりますが、余剰資金で運用すれば万が一資金を失った場合でもダメージは最小限で済ませられるでしょう。
iDeCoは自分で口座を開設する金融機関や運用商品などを選んで、自己責任で投資をする制度です。投資に興味や関心があって学ぶ意欲がある人には、適切な運用で利益を大きくできる可能性がありますよ。
iDeCoよりも国民年金基金に加入したほうがよいのは、安定的かつ長期的に年金を受け取りたい人や、より多くの所得控除を受けたい人です。
国民年金基金は自分で運用指示を出す必要がなく、加入時の年齢やプランに応じた掛金を支払うことで一生涯年金を受け取れます。金額もあらかじめ決まっているので、元本割れしてしまう心配がありません。
iDeCoでも控除を受けられますが、国民年金基金は社会保険料控除の対象なので、配偶者の掛金を支払った場合も所得控除を受けられます。配偶者の掛金も支払う予定で、結果的により多くの所得控除を受けたい人は国民年金基金を選ぶのがよいでしょう。
一方、iDeCoで受けられる「小規模企業共済等掛金控除」は配偶者の掛金を控除することはできません。配偶者の掛金を負担している場合は、国民年金基金のほうがより多くの所得控除が受けられる可能性があります。
iDeCoと国民年金基金のどちらに加入すべきか迷っているのであれば、併用するのも選択肢のひとつです。
個人事業主はiDeCoと国民年金基金の両方に加入できます。掛金の合計が68,000円を超えない範囲で併用できるため、それぞれに掛金を拠出して良いとこ取りをするのもよいでしょう。
それぞれの掛金額は、今後のライフプランを踏まえて決める必要があります。何歳まで働く予定なのか、老後資金はいくら必要なのかを考え、適切な掛金額を決めましょう。ある程度リスクを取れるのであればiDeCoへの拠出を、確実性を重視するのであれば国民年金基金への拠出を多くするのがおすすめです。
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