老後の資産形成に役立つとして注目されている私的年金制度、iDeCo。節税効果の高さや投資への関心の高まりから、加入を検討している人も多いのではないでしょうか。しかしiDeCoには元本割れのリスクがあると聞き、不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、iDeCoは元本割れする可能性があるのか詳しく解説しています。元本割れの対処法や元本確保型と元本変動型の商品の違いについても解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
明治大学法学部卒業後、ITエンジニアとして自治体や金融機関のシステム開発に従事。その後、国内生保にて法人の福利厚生等のコンサルティング営業に転身。2009年より独立系FPとして開業し、一般的な個人向けFP相談の他、法人オーナー対象のコンサルを行っている。現在はコンサル経験を活かした金融ライターとしても活動中。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
iDeCoでは商品の種類に関係なく元本割れのリスクがあり、一部ではiDeCo加入者の8割は元本割れしているとの意見もあり、投資の難しさが伺えます。
iDeCoの運用商品は大きく分けて、元本確保商品と元本変動型の2種類です。ここではそれぞれの運用商品で、元本割れする理由について解説します。
元本変動型商品の投資信託では、元本が確保されていないため、運用成果によっては元本割れするリスクがあります。
投資信託とは複数の投資家から集めた資金を元手に、運用のプロが株式や債券などを投資・運用する金融商品。運用成果に応じて、それぞれの投資家に利益が分配されます。
運用成果は市場や経済情勢、政治情勢など様々な要因によって変動し、景気悪化や災害などの理由から、資産が大きく減る可能性もあります。逆にいうと価格が上がる可能性もあるということで、リスクが高い分、ハイリターンを狙えるとも言えますす。
投資信託の商品には、大きく分けると投資対象となる資産や地域によって国内債券型・外国債券型・国内株式型・外国株式型があります。⼀般的に債券より株式のほうが価格変動リスクが⾼く、元本を割るリスクも⾼いと考えられます。許容できるリスクと求めるリターンのバランスを考慮して、商品を選ぶことが重要です。
元本確保商品でも、元本割れする可能性があるため注意しましょう。元本確保商品とは原則として元本が確保されている運用商品で、代表的なものに定期預金や保険商品があります。積み立てた掛金に所定の利息が上乗せされて資産となり、信用信託よりも安全なことが特徴です。
元本確保商品で元本割れが発生するのは、手数料が利息を上回る場合です。元本確保商品はリスクが低い分リターンも少なく、一般的に得られる利息収入は少ないと考えられています。しかしiDeCoの運用には様々な手数料がかかるため、結果として元本割れしたような形になってしまいます。
iDeCoで必要な手数料は、国民年金基金連合会の手数料と運営管理期間・信託銀行手数料です。国民年金基金連合会の手数料は、加入・移換時手数料(2,829円)・加入者手数料(掛金納付の都度105円)・還付手数料(還付の都度1,048円)の3つです。運営管理機関の手数料は、利用する機関によって異なり、無料の場合もあります。資産を預かる信託銀行の手数料の目安は月額66円です。
長引く低金利で定期預金の金利も0.002%程度と、資産を増やす効果は期待できません。
しかし、投資信託での利益を確保したい場合、元本確保型に切り替えることによって、値上がりした資産の利益の受け皿として活用できますよ。
iDeCoの節税効果を考慮すれば、元本割れしても問題ない場合があります。iDeCoには3つの節税メリットがあり、運用による損失分を節税額で補えば、結果的にお得になる可能性があるためです。
1つ目は掛金が全額所得控除になること。掛金はすべて所得控除となるため、所得税・住民税が軽減されます。
2つ目は、運用益が非課税となることです。株式などの一般的な投資の場合、運用益に対して20,315%の税金が課されるのに対し、iDeCoの場合は運用益の全額が非課税になり、利益がそのまま再投資されます。
3つ目は、資産を受け取る際にも税控除が受けられることです。iDeCoの受け取り方法は年金か一時金かを選択でき、年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除が受けられます。
運用成果も大事ですが、最終的には節税も含めてトータルで考えるようにしましょう。
ひとつ目は、iDeCoで元本割れしたとしても、焦らずに同じ商品に投資し続ける対処法です。iDeCoに限らず、一般的に金融商品の価格は上下を繰り返す習性があります。そのため一時的に運用商品が値下がりしたからといって、値段が下がり続けることは考えにくいので長期の視点で見ることが必要です。
iDeCoでは、ドルコスト平均法を意識する必要があります。ドルコスト平均法とは、同じ金融商品を定額で定期購入する投資手法です。ドルコスト平均法で投資をすることで、金融商品が値下がりしているときは多くの口数を、値上がりしているときは少ない口数を購入可能です。
結果的に毎月の平均買付額を抑えることができ、価格変動のリスクを下げる効果があります。iDeCoは原則60歳まで資産の引き出しができないため、多くの人は長期的な投資を行います。意識せずともドルコスト平均法での投資ができるiDeCoは、価格変動に関わらず同じ商品を買い続けても問題になりにくいと言えるでしょう。
米国株式の代表的な指標であるS&P500の1988年12月から2018年12月までの30年のリターンは年率7.6%です。途中はマイナスとなる局面もありますが、長期で運用すれば安定した利益が期待できます。
なお、ドルコスト平均法は同じ商品を買い続けることで得られるものです。短期的な値動きが思わしくなくても、安易に商品を入れ替えないようにしましょう。値動きが気になりすぎる人は、しばらく運用から離れるのも1つの方法です。
元本割れした際に、リスクの低い商品に資産配分を変更するという対処法も考えられます。先述したとおり、iDeCoに対してドルコスト平均法が有効といわれています。しかし許容範囲を超えて元本割れが進んだ場合や、年齢的に投資期間が限られている場合は、資産配分の見直しを検討するのもひとつの手です。
資産配分を変更する方法は、スイッチングと配分変更の2種類です。それぞれ特徴が異なるため、状況や運用方法によって有利になるほうを選択しましょう。
スイッチングとは、これまで運用してきた商品を売却して別の商品を購入する手法です。スイッチングすると売却した商品の利益が確定されるため、値下がりのタイミングで売却すると損失が確定してしまう点には注意してください。
配分変更とは、今後購入する商品や割合を変更する手続きです。スイッチングと異なり、これまで運用してきた商品は変更されないという違いがあります。
iDeCoで元本割れを防ぐためのポイントを紹介します。ポイントを押さえて、有利に運用できるようにしてみてください。
資産配分は定期的に見直し、必要があればスイッチングや配分変更を行うようにしましょう。長期的な運用が前提のiDeCoでは、相場の変動によって加入当初と比べて資産配分が大きく変わっている場合があるためです。
資産配分のタイミングは自由ですが、年に一度は運用状況をチェックすることをおすすめします。運用状況は運営管理機関から送られてくる資産額のお知らせや、運営管理機関のマイページから確認できます。定期的に資産配分を見直して、想定するリスクやリターンに見合った配分に都度変更しておきましょう。
もちろん想定内の運用状況であれば、資産配分を無理に変更する必要はありません。しかし、年齢や状況によって許容できるリスクや運用目標は異なります。資産配分が変わっていなくても、年齢が上がったのでリスクの低い商品に配分変更するなど、市場の状況やライフステージに合わせて検討してみてください。
iDeCoの運用では、元本が確保されている、元本確保型商品を有効活用しましょう。ただし、iDeCo運用当初から元本確保型商品を利用していると、大きなリターンを期待できません。投資信託の商品で運用をはじめて、途中で元本確保型商品に切り替える方法をおすすめします。
例えば信託商品で利益が大きく出たタイミングでスイッチングして、元本確保型商品に切り替えると、利益を確保したまま安定した運用が可能。利益を確定すると値下がりする心配がないため、元本割れを防ぐ効果も期待できます。
資産配分における、元本確保型商品の割合を増やす方法も有効です。一般的に年齢が上がると許容できるリスクの範囲が狭まると考えられるため、年齢が上がるにつれて徐々に元本確保型商品の割合を増やすことをおすすめします。50歳から投資信託の割合を減らしていき、給付金の受け取りとなる60歳前(場合によっては65歳前まで)で、元本確保型商品の割合を最大限にするなど方法は様々です。
元本確保型商品と投資信託をうまく組み合わせることで、iDeCoをより効果的に運用できます。シュミレーションを行って、自身にあった配分を検討してみてください。
積立投資を長く続けるほど、元本割れする可能性が低くなる傾向にあります。そのため、iDeCoではなるべく長期間の運用を心がけましょう。
金融庁の調査によると、積立投資において保有期間が5年だと元本割れのリスクが高まる傾向がある一方で、保有期間20年になると、元本割れする出現頻度が減ると発表されています(参照:金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」)。
調査結果からわかるとおり、頻繁に運用する商品を変更してしまうと損する可能性が高まります。金融商品の価格は変動しますが、これらの動きに惑わされず保有することがポイントです。
先述した通り、iDeCoには同じ金融商品を定額で定期購入するドルコスト平均法が向いています。元本割れを防ぐほか、リターンを高めるという観点からも長期的な投資が有効です。
できる限り手数料が安い金融機関を選んで、手数料負けするリスクを抑えることもポイントです。iDeCoで必要な手数料は、国民年金基金連合会の手数料と運営管理機関の手数料にわけられます。運営管理機関の手数料は機関によって異なり、楽天証券のように運営管理手数料が無料の機関もあります。
ただし、手数料だけに注目するのは危険。運営管理機関によって取り扱う運用商品や特徴が異なるため、トータルで考えて自分に合った機関を選ぶようにしましょう。運営管理機関を選ぶ際は、iDeCo公式サイトの運営管理機関一覧ページも参考にしてみてください。
金融機関の手数料はもちろん、iDeCoで投資信託を活用する場合、できるだけ信託報酬の安い商品を選びましょう。投資信託のコストはリターンに影響するため、少しでもコストが低いほうが安定したリターンにつながります。
たとえば、元本が100万円の場合、信託報酬が1%なら10年で10万円かかります。しかし、0.1%であれば1万円で済み、リターンもそれだけ多くなるのです。
一般的に信託報酬が低いのはインデックスファンドですが、資産の種類によって基準が異なります。国内や先進国の株式や債券に投資するインデックスファンドなら0.2%未満の商品が多く、その範囲で選ぶとよいでしょう。新興国の株式や債券に投資するインデックスファンドの場合、0.2%から0.3%程度が目安となります。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を比較・解説しています。iDecoについて理解が深まったものの、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのかわからないという人は、参考にしてみてくださいね。
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