老後資金を積み立ながら節税もできる、お得な私的年金制度、iDeCo(イデコ)。始めてみようと考えているものの、運用利回りがどのくらいなのか気になっている人もいるのではないでしょうか。どの程度の運用成果が見込めるのかわからないと、なかなか手を出しにくいですよね。
そこで今回は、iDeCoの運用利回りについて具体的な金額をシミュレーションしながら解説します。さらに、利回りを高めるための資産運用のポイントも紹介するため、iDeCoを始めるための知識として役立ててくださいね。
大手金融機関に入行後、海外赴任を含め10年以上勤務。その後、2009年8月にファイナンシャル・プランナー資格取得。現在は、独立系FPとして契約者の立場に立って真剣に対応することをモットーに、個人相談やセミナー講師、執筆活動を行っている。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
運用利回りとは、投資金額に対して発生する収益の割合を指す言葉。一般的には、1年間の年利回りを利回りと呼びます。年何%で資産を運用できたかを表す指標として、リターンやトータルリターンと表現されることもあり、投資全般の実績を表すために用いられるのが基本です。
運用利回りと混同しやすいものに「利率」がありますが、利率は、預貯金額などに対して受け取る利息の割合がいくらか表す言葉で、利回りとは意味が異なります。
投資の最終的な資産額は、運用利回り・月々の積立額・運用年数によって計算できます。運用利回りが異なれば最終的に得られる金額も変わるため、iDeCoを利用する場合も、商品ごとの運用利回りを確認したうえで、得られる資産額をシミュレーションすることが大切です。
ここで運用利回りによって、最終的な資産額がどのくらい変わるかシミュレーションしてみましょう。iDeCoで運用利回りが1%、3%、5%の商品をそれぞれ選び、月々10,000円の掛け金を拠出して運用した場合を想定。30歳から積み立てを始め、65歳までの35年間運用した場合、どうなるでしょうか。
積立元金はいずれも35年間で4,200,000円になりますが、運用利回り1%で運用した場合は運用益が826,329円になり、最終的に得られる金額は5,026,329円。運用利回り3%の場合は運用益が3,215,637円で、最終的な金額が7,415,637円です。
運用利回り5%の場合は運用益が7,160,924円で、最終的な金額は11,360,924円となります。運用利回りが1%と5%の場合の合計金額を比較すると、受け取れる金額に600万円以上もの差が出るという結果になりました。
運用利回りは、投資にかかるコストや税金などが加味されているかどうかによって、表面利回りと実質利回りの2種類に分けられます。
表面利回りは、投資信託を運用するためにかかる手数料や信託報酬、税金などが加味されていない指標です。表面利回りだけをみて運用商品を決めると、想定していたよりも得られる利益が少なく感じるでしょう。
一方実質利回りは、手数料や信託報酬、税金などが加味された指標です。iDeCoで運用する商品を選ぶときは、さまざまなコストを考慮した実質利回りの数値を確認しましょう。
iDeCoでは運用商品を自分で決めますが、選べるのは元本確保商品と投資信託の2種類です。それぞれ特徴が異なるため、確認したうえで各商品の割合を決める必要があります。
定期預金や保険商品などの元本確保商品は、元本が確保されているので大きな損をする心配がありません。ただし、ローリスクのためリターンが低く、運用益を大きくするのは難しいでしょう。
一方の投資信託は、投資家から集めたお金を運用のプロが株式や債券などに投資して運用する商品です。運用成績によって利益が得られることもあれば、損失が出ることもあります。
投資信託のリスクやリターンは商品によって大きく異なり、一般的に国内債券型はローリスクローリターン、外国株式型はハイリスクハイリターンという傾向があります。
投資信託の運用方法には、パッシブ型とアクティブ型があることも覚えておきましょう。パッシブ型は日経平均株価などの市場平均と同じ動きを目指す方法で、信託報酬が低い傾向にあります。一方アクティブ型は市場平均を上回る収益を目指す運用方法ですが、必ずしも高い利益が保証されているものではありません。
長期運用できる時は、運用益非課税のメリットと複利効果を活かして値動きのある投資信託で運用していくとよいでしょう。
60代などに入り運用期間が短くなってきたときは、利益の出ている商品を売却して元本確保型の商品へ切り替えて、受け取る年金を確定しておくこともできます。
年代によって資産運用で許容できるリスクも変わってくるため、iDeCoで保有する金融商品を変えながら出口戦略を考えていくと良いですね。
iDeCoは自力で株式投資などを行う場合に比べ、実質利回りが高くなりやすいというメリットがあります。その理由をを説明します。
運用益に税金がかからず、得た利益を複利運用して増幅させられるiDeCoは、実質利回りが高くなる傾向にあります。
一般的な投資では利息や運用益が発生した場合に税金がかかりますが、iDeCoでは運用益に税金がかからず、そのまま利益として得られるという優遇が受けられます。
さらに、原則として途中解約ができないiDeCoでは、長期にわたった複利運用が可能です。運用益を元本に加えて再投資していくので、利益が増えればその分たくさん投資をして、さらに利益を増やすことができます。
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり、各種税金が軽減されるため実質利回りが高くなりやすいといえます。
毎年支払わなければならない所得税や住民税は、年収から各種控除等を差し引いた課税所得の金額から算出されます。控除を増やして課税所得を抑えれば、所得税や住民税の金額も安くなります。
iDeCoで毎月拠出した掛金は、全額所得控除として計上可能です。そのためiDeCoの掛金が多いほど課税所得を少なく抑え、税金を安くすることができます。実質利回りは各種手数料や税金などを加味した指標なので、税金が軽減されれば利回りが高くなります。
着実に資産を形成するためには、目標金額・積立期間・掛金から運用利回りの目標を設定し、それに応じた運用をする必要があります。
老後の資金不足は近年大きな問題とされているため、なんとなく毎月お金を積み立てるのではなく老後にいくら必要なのかを具体的に考えて目標を立てることが大切です。60歳までにいくら準備したいかという目標金額を決め、達成するための計画を立てましょう。
目標金額を決めたら、積み立てられる期間や拠出できる掛金を考慮し、目標の運用利回りを決めます。60歳までに必要なお金が1,000万円だとしたら、それを得るために利回りが何%の商品をどのくらいの配分で買う必要があるか考えてみてください。
iDeCoで着実に資産運用をするためには、リスクも見込んで購入商品を決める必要があります。リスクとリターンは比例するので、利回りが高い商品を購入すると得られる利益も高くなりますが、損をする可能性も高くなることを頭に入れて考えましょう。
安易に利回りが高い商品を選ぶのではなく、自分のリスク許容度も考えたうえで商品を決めることが大切。リスク許容度は今後の収入の見通しや支出と貯蓄の状況、年齢、ライフスタイルなどさまざまな面から総合的に判断してください。
iDeCoの利回りを高めるためには、定期的に資産配分をチェックし、適宜変更することが重要です。iDeCoでは加入時に運用商品を決めますが、途中で変更できます。ライフイベントや年齢などに応じて、1年に1回は資産配分に問題がないか確認する習慣をつけましょう。
資産配分を変更する方法としては、配分変更とスイッチングがあります。配分変更は、購入する商品の種類や配分割合を変えること。リスクやリターンが大きい運用から小さい運用に変えたり、その逆に小さい運用から大きい運用に変えたいときに行います。配分変更をした場合でも、これまで積み立ててきた資産の割合は変わりません。
一方のスイッチングは、これまで積み立ててきた資産の商品構成などを変更することを指します。全体の資産残高は変わらないものの、商品の一部を売却して別の商品を購入するなどして資産配分の割合を調整するのが特徴です。
たとえば、受給年齢が近くなったときに、運用で利益が出た分を売却して元本確保型の商品を購入して利益を確定するなどといった使い方が可能。スイッチングを行って資産配分割合を調整することを、リバランスと呼びます。
iDeCoの運用で発生する信託報酬や口座管理料を安く抑えると利回りが高まるので、より効率のよい資産形成が行えます。
iDeCoを利用するためには、国民年金基金連合会や運営管理機関に手数料を支払わなければなりませんが、国民年金基金連合会に支払う手数料は金額が決まっています。加入や移換の際に発生する手数料は2,829円、掛金納付のたびに発生する加入者手数料は105円、還付金が戻ってくるときに発生する手数料は1,048円です。
一方、運営管理機関に支払う手数料の金額は金融機関によって異なるので注意が必要。手数料には、口座を管理してもらうための運営管理手数料や、投資信託の運用や管理に対し発生する信託報酬などがあります。
運営管理手数料は金融機関、信託報酬は商品によって異なるため、金融機関や商品を選ぶときに必ず金額を確認しましょう。各種手数料を安く抑えることで実質利回りを高められます。
投資信託を選ぶにあたり、自分の許容できるリスク(値動きの幅)に応じた投資対象を選ぶとよいでしょう。
リスクの高い(値動きの幅が大きい)商品はリターンが大きくなる一方、損失も大きくなる可能性が高くなります。
一般的なリスクの高さを比べると、下記のようになり、右側の方がリスクが高いといえます。
そのうえで、同じ投資対象のなかで運営管理手数料(信託報酬などのコスト)が安い投資信託を選ぶことも大切です。
たとえば、日経株式の指標に連動する投資信託の信託報酬が
投信A: 0.176%
投信B: 0.187%
だとすれば、安い方のAを選ぶという具合です。
投資信託は運用期間中に手数料がかかりますが、そのコストを抑えることが運用利回りの向上につながりますよ。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を紹介しています。iDecoについて理解が深まったものの、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのか迷っているという人は、ぜひチェックしてみてくださいね。
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