お得な税制優遇が魅力のiDeCo。加入を検討している、もしくはすでに加入している人のなかには、年末調整や確定申告をする理由がわからない、所得控除でいくら得するのか知りたいなど、さまざまな疑問を抱えている人も少なくないでしょう。
本記事では、iDeCoの年末調整や確定申告の必要性を解説します。年末調整・確定申告の方法や手続きを行う際の注意点なども紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
2005年に女性向けFPオフィス(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。また、『Money&You TV』や「マネラジ。」「Voicy」などでも情報を発信しているうえに、全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。「はじめてのNISA &iDeCo」(成美堂出版)「1日1分読むだけで身につく お金大全100」(自由国民社)」など著書多数。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
iDeCoの掛金は、年末調整などで申告すれば所得控除の対象になります。拠出した掛け金を課税所得から差し引けるため、所得税と住民税を減額することが可能です。iDeCoに加入するだけで自動的に税制優遇を受けられるわけではないので、注意しておきましょう。
会社員と公務員の場合、iDeCoで所得控除を受けるためには、年末調整または確定申告を行う必要があります。年末調整は、従業員の所得税を精算する仕組みのことです。
勤務先に小規模企業共済等掛金払込証明書を提出すればあとの手続きは勤務先が担ってくれるため、会社員や公務員の場合は年末調整でiDeCoの申告をしてしまうのが楽といえます。
年末調整の手続きを忘れたときや、iDeCoの初回掛金引き落としが年末調整の期限に間に合わないときは、自分で確定申告を行わないといけません。会社に属さない自営業・フリーランスなどはそもそも年末調整の仕組み自体がないので、確定申告でiDeCoの所得控除を行う必要があります。
iDeCoの年末調整でいくら戻るかは、課税所得の金額によって異なります。年末調整でiDeCoの所得控除を行うと、拠出した掛金と同じ額だけ課税所得が減るので、そのぶん払いすぎていた所得税の還付を受けることが可能です。
所得税の計算式は「課税所得 × 所得税率 - 税額控除額」。所得税率と税額控除額は、課税所得に応じて変動することを覚えておきましょう。
たとえば、課税所得が1,000~1,949,000円の場合は所得税率5%で税額控除額が0円、課税所得が1,950,000~3,299,000円の場合は所得税率10%で税額控除額が97,500円です。全部で7段階に分かれているので、詳しく知りたい人は国税庁公式サイトをチェックしてみてください。
年収400万円の会社員がiDeCoで月23,000円(年間276,000円)を拠出した場合は、年末調整によって13,800円の還付を受けることができます。具体的な計算は次のとおりです。
年収400万円のiDeCo未加入者の場合、各種控除を差し引いた課税所得は1,704,400円と試算できます※。上記の計算式を当てはめると、「1,704,400円 × 5% - 0 = 85,220円」が所得税です。
iDeCo加入者の場合は、1,704,400円からさらに年間の拠出額276,000円を控除できるので、最終的な課税所得は1,428,400円に。所得税は、「1,428,400 × 5% - 0 = 71,420円」です。この85,220円と71,420円の差13,800円が年末調整で還付されます。
30歳から65歳までの35年間継続すれば所得税控除だけで483,000円も得するため、iDeCoはできるだけ早めにはじめるのがおすすめです。
基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除を適用した場合
iDeCoは他の制度に比べて税制優遇が大きい制度といえます。特に掛金が全額所得控除に算入できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
次に、iDeCoの年末調整・確定申告での記入方法を詳しく解説します。
会社員や公務員の場合、iDeCoの掛金を所得控除するには、年末調整もしくは確定申告を行う必要があります。勤務先の年末調整で手続きを行うのが一般的ですが、年末調整を忘れてしまったときなどは確定申告を行いましょう。
まず、国民年金基金連合会から毎年10月頃に「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届くので、年末調整や確定申告の時期まで大切に保管しておきましょう。小規模企業共済等掛金払込証明書はiDeCoの掛金がいくらだったかを証明するもので、手続きを行う際には原本が必要です。
年末調整の場合は、給与所得者の保険料控除申告書に小規模企業共済等掛金払込証明書を添付して勤務先へ提出します。給与所得者の保険料控除申告書は、各種保険やiDeCoの掛金を所得から控除するために勤務先から配布されるものです。
申告書の右下にある「小規模企業共済等掛金控除」の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」と「合計(控除額)」の欄に、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載の合計金額を記入しましょう。
確定申告の場合は、国税庁が配布している確定申告書Aに源泉徴収票・小規模企業共済等掛金払込証明書を添付して税務署に提出する必要があります。
確定申告書Aの第一表にある「小規模企業共済等掛金控除」に、小規模企業共済等掛金払込証明書の合計金額を記入してください。
第二表にある「小規模企業共済等掛金控除」の「掛金の種類」に「個人型確定拠出年金」と記入、「支払掛金」と「合計」に小規模企業共済等掛金払込証明書の合計金額を記入しましょう。
iDeCoを始めるには、金融機関に口座を開設する必要がありますが、一般的に手続き完了まで1か月半〜2か月半かかります。
小規模企業共済等掛金控除証明書の発行時期は、初回の掛金の引き落としが10月だった場合は、11月下旬ごろ。11月が初回の掛金の引き落としの場合は、12月末ごろです。引き落としが10月の場合は年末調整に間に合うものの、11月以降になると翌年の扱いになる可能性があります。
また、金融機関よっては10月引き落としでも年末に証明書を受け取れないことも。9月までに初回の掛け金の引き落としができるよう、早めに準備することが大切です。
自営業やフリーランスの場合はそもそも年末調整の仕組み自体がないので、確定申告で所得控除の手続きを行う必要があります。自営業者の確定申告は、確定申告書Bに小規模企業共済等掛金払込証明書を添付して税務署に提出すれば手続き完了です。
確定申告書Bは国税庁の公式サイトなどで入手でき、小規模企業共済等掛金払込証明書は国民年金基金連合会から郵送されるので、手続きをはじめるまで大切に保管しておきましょう。
確定申告Bの第一表にある「小規模企業共済等掛金控除」に、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載の合計金額を記入します。
第二表にある「小規模企業共済等掛金控除」の「掛金の種類」に「個人型確定拠出年金」と記入、「支払掛金」と「合計」に小規模企業共済等掛金払込証明書の合計金額を記入しましょう。
これまでは、所得の種類など申告者の状況に応じて、確定申告書Aと確定申告書Bが使い分けられていましたが、2023年から確定申告書の様式が統一されます。
iDeCoの年末調整が必要かどうかは、掛金の支払い方法によって異なります。
iDeCoの掛金を支払う方法は、加入者自身が支払う個人払込と事業主に天引きして払ってもらう事業主払込の2種類です。事業主払込で掛金を支払っている会社員や公務員は、iDeCoの所得控除に要する手続きを勤務先が担ってくれるため、年末調整を行う必要はありません。
事業主払込を選択する場合、勤務先によっては引き落とし口座が指定されるなどの条件があるので、これからiDeCoを始める人は早めに相談しておくとよいでしょう。
年末調整や確定申告を行う際に必要な「小規模企業共済等掛金払込証明書」の原本を誤って破棄したり、紛失したりした場合は再発行しなければいけません。
iDeCoの掛け金を証明する小規模企業共済等掛金払込証明書は、毎年10月頃に国民年金基金連合会から届くので、手続きが始まるまで保管しておきましょう。
再発行が必要な場合や発送時期が過ぎても届かない場合は、小規模企業共済等掛金払込証明書再発行申請書を口座がある金融機関に提出しましょう。
多くの場合、申請書の様式はiDeCoの口座を開設している金融機関の公式サイトから入手でき、提出後2~3週間程度で小規模企業共済等掛金払込証明書が届きます。
小規模企業共済等掛金払込証明書の発送予定日は基本的に毎年10月頃ですが、掛金が引き落とされた時期によって異なります。
iDeCoの掛金を証明する小規模企業共済等掛金払込証明書は年末調整や確定申告の手続きに必要なので、事前に各金融機関の公式サイトなどで確認しておきましょう。
毎月定額で掛金を拠出している人であれば、1~9月までに引落がある場合は同年10月下旬、10月に初回引落がある場合は同年11月下旬、11月に初回引落がある場合は同年12月下旬、12月に初回引落がある場合は翌年1月下旬が目安です。
払込証明書の内容と払込実績に差が生じた場合は、追加発行されることもあります。イレギュラーなケースが生じる場合は、各金融機関へ早めに問い合わせておくのがよいでしょう。
年末調整の方法や申告期限は勤務先によって異なるので、場合によってはスケジュールに余裕がないことも。申告期限はあらかじめ担当者に確認し、書類の作成に向けて早めに準備しておくことをおすすめします。
iDeCoの年末調整が間に合わなくても、確定申告を行えば所得控除を受けられるので焦る必要はありません。
iDeCoの年末調整が間に合わないときの主な原因は、年末調整を忘れた場合、初回掛金の引き落としが遅くなった場合、小規模企業共済等掛金払込証明書を紛失・破棄した場合です。
確定申告を行う際は、源泉徴収票・小規模企業共済等掛金払込証明書・マイナンバーカードなど本人確認書類の写しを用意しましょう。
小規模企業共済等掛金払込証明書をなくした場合は、小規模企業共済等掛金払込証明書再発行申請書をiDeCoの口座がある金融機関に提出すれば再発行できます。
次に、確定申告書を税務署や国税庁公式サイトから入手し、必要事項を記入。小規模企業共済等掛金控除の額は、小規模企業共済等掛金払込証明書の合計額を転記しましょう。最後に、用意しておいた書類を添付し、税務署に提出すれば手続きは完了です。
確定申告書の受付期間は、原則毎年2月16日から3月15日までです。直接税務署に足を運ばなくても、パソコンやスマートフォンなどによる電子申請も可能なので有効に活用しましょう。
年末調整で、生命保険料控除などの所得控除を申請している場合、確定申告はiDeCoの分のみ行えば問題ないですよ。
以下の記事では、iDeCoにおすすめの金融機関・商品や選び方を紹介しています。iDeCoについて理解が深まったものの、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのかわからないという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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