毎月一定額を積み立てて老後に備える私的年金制度、iDeCo。掛け金は月々5,000円から設定できますが、最低金額で積み立てても意味がないと考えて、始めていない人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、月5,000円だけでもiDeCoに拠出する意味はあるのかについて解説します。5,000円しか拠出できなくても得する方法や、掛け金が少ない場合の注意点についても説明するので、これからiDeCoを始めるための基礎知識として役立ててくださいね。
FP(ファイナンシャルプランナー)、IFA(独立系投資アドバイザー)として福岡を中心にお金の専門家として活動。金融や運用のことをより分かりやすく、イメージしやすいように例話を用いて伝えることがモットー。金融商品は使い方、選び方そして受取り・出口が重要になるため、一生涯の担当者として利用者と付き合いをするように心がけている。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
iDeCoでは、月5,000円の掛け金でも、早めに運用することに意味があります。その理由を説明します。
iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象になるため、月5,000円からでも節税効果が大きいといえます。
所得控除とは、毎年支払う所得税や住民税を計算する際に、課税所得(課税対象となる所得額)から一定額をマイナスできる仕組み。iDeCoの掛け金は全額所得控除として計上できるため、月5,000円拠出すると年間60,000円を所得から差し引くことが可能です。
所得税の税率は、課税所得が195万円未満であれば5%、195万から330万円未満であれば10%、330万から695万円未満であれば20%です。住民税は自治体によって異なるものの、ほとんどが10%に設定されています。所得税と住民税それぞれの税率をiDeCoの掛け金額にかけることで、具体的な節税額を算出可能です。
iDeCoで月5,000円を拠出すると、課税所得195万円未満の場合は年9,000円、330万円未満の場合は年12,000円、695万円未満の場合は年18,000円の節税になります。最低金額で積み立てを始めても、十分な節税効果があるといえるでしょう。
iDeCoでは、運用期間が長くなるほど受け取る年金額が多くなります。iDeCoには元本変動型があり、投資信託で年金となる資金を運用できるためです。
複利運用とは、運用によって得た利益を元本に加えて、再投資していく方法を指します。そのため、運用成果次第ではあるものの、運用額が増えるほど、得られる利益が増幅するのがメリットです。複利運用の効果は運用期間が長くなるほど大きくなるため、最低金額の月5,000円から拠出を始めても、長く続ければ利益が大きくなるといえます。
たとえば、月々の掛け金5,000円で、年利回り3%の運用商品を購入した場合の積立額と運用益をシミュレーションしてみましょう。運用期間が10年の場合、積立額は600,000円、運用益は97,239円で合計額は697,239円。運用期間が20年になると、積立額は1,200,000円、運用益は434,272円で合計額は1,634,272円となります。
運用期間が30年の場合、積立額は1,800,000円、運用益は1,093,565円で合計額は2,893,565円です。運用期間が40年になると、積立額は2,400,000円、運用益は2,185,949円で合計額は4,585,949円となります。
月々5,000円の掛け金でも、長期間の運用で一定のリターンが確保できれば大きな利益になるのがわかるでしょう。なお、実際の運用成績によって運用益は変わることがあるため、シミュレーション結果はあくまで参考程度としてくださいね。
iDeCoは原則60歳まで解約できないため、月5,000円ずつであっても強制的に老後資金を確保できるというメリットもあります。
公的年金だけでは老後の生活が厳しいといわれている今、さまざまな方法で老後に備える人が増えています。とくに自営業やフリーランスの人は公的年金の受給額が少ないため、私的年金で老後に備えることが大切です。
長期的にお金を積み立てる方法はiDeCo以外にもありますが、いつでも引き出せる制度の場合はライフイベントや日々の出費のために使ってしまう可能性があり、老後資金が思うように貯まらないおそれもあります。
60歳になるまでお金を引き出せないiDeCoなら、途中で積み立てたお金を使うことができず、十分な老後資金の確保につなげることが可能です。月5,000円でも積み立てておけば、何もしない場合よりもより確実に年金額を増やせます。
月5,000円の掛け金でも、iDeCoをお得に活用できます。そのための方法を詳しく説明します。
少ない掛け金をお得に活用するためのポイントは、iDeCoの運用先を慎重に選定すること。iDeCoでは、運用先の金融機関を自分で選ばなければなりません。
投資信託や定期預金などの元本確保商品のなかから、どの商品を運用するかも自分で決めなければならないため、金融機関を決める前に用意されている商品を確認することが大切です。商品の選び方によっては、月5,000円の掛け金でも利益が大きくなる可能性が高まります。
さらにiDeCoでは、加入・移換時手数料や加入者手数料、還付手数料などの手数料を国民年金基金連合会に支払いますが、それに加えて金融機関にも口座管理手数料や給付手数料などを支払わなければなりません。
手数料を抑えられれば月々の掛け金が少なくてもお得に運用できるため、金融機関ごとの手数料の種類や金額を確認しておきましょう。SBI証券や楽天証券など、ネット証券では手数料が安い傾向にあります。
iDeCoの運用商品は、元本確保型の定期預金や保険と、元本変動型の投資信託に分かれます。
投資経験のない運用初心者は元本確保型商品も選択肢のひとつですが、元本変動型の投資信託のなかにも、運用リスクが小さい商品、バランス型商品などがあるので、リスク許容度に応じて自分に合った複数の運用商品で運用することが可能です。
また、1年に1回程度は運用商品の確認と見直しを行うと良いでしょう。
退職金の有無や年金資産額に応じて、適切な受け取り方を選ぶと、月々の掛け金が少なくてもお得にiDeCoを活用できます。
iDeCoで積み立てた年金資産は、受取時に一定額まで控除を受けられ、その分には課税されません。受け取り方には、一時金受け取り・年金受け取り・一時金と年金併用受け取りの3種類があり、適切な受け取り方を選択することで定められた控除の枠を最大限活用し、より大きな節税メリットを得られます。
一時金受け取りは、原則60歳に到達したあと75歳になるまでのあいだに一括で受け取る方法です。退職所得控除の対象となり、退職金とiDeCoの合計額から控除額が引かれるので、退職金の少ない会社員やそもそも退職金のない自営業者には一時金受け取りが適しています。
年金受け取りは、5年以上20年以下で受け取り回数を指定する方法です。公的年金等控除の対象となり、公的年金やiDeCoなどの年間合計額から控除額が差し引かれます。退職所得控除ほど枠は大きくありませんが、退職金が多くて退職所得控除の枠が残らない人には年金受け取りがおすすめです。
一時金と年金を併用する場合は、両方の控除を活用できます。年金資産の残高が多い人は、2つの枠を活用できる併用が適しているでしょう。
月5,000円の掛け金でもお得に活用できる一方、所得が少ない場合はiDeCoの大きなメリットである節税効果が得られないこともあるため注意が必要です。
専業主婦(主夫)や無職の人、所得の少ない自営業の人などは、課税所得がゼロになるケースもあります。所得控除した残りが課税所得になるので、課税所得がなければiDeCoを掛けても、節税効果が得られません。
掛け金で節税できるというメリットを活かせない場合、iDeCoの効果は運用益が非課税になる点だけです。そうなると、所得控除の対象にはならないものの手数料がかからない新しいNISAの成長投資枠や、新しいNISAのつみたて投資枠のほうがお得になります。
収入がない場合は安易にiDeCoを始めるのは避け、より適切な方法で老後資金を積み立てるようにしましょう。
最初は月5,000円の掛け金で積み立てを始めても問題ありませんが、iDeCoの掛け金額は定期的に見直すのがおすすめです。
月々5,000円からでも積み立てておくと老後に備えられますが、老後資金として必要な金額には届かない可能性があります。60歳の時点でいくら必要か考え、逆算して月々の掛け金を設定することで、十分な資金を準備できるでしょう。
年収が高くなると所得控除による節税効果が高くなるため、年収が変化したときは掛け金の見直しに適したタイミングです。年収アップによって生活に余裕が出てきたら、掛け金の変更も検討してみましょう。iDeCoの掛け金額は、1年に1回変更可能です。
老後資金を目的にするなら、原則60歳まで引き出しができないiDeCoを活用することは非常にメリットがあります。
年収や家族構成によりますが、月額のiDeCoの掛け金を年収300万のときは5,000円、400万円なら1万円、500万以上なら2万円と上げていくことで、将来の資金をより確実に貯めるが可能です。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を紹介しています。iDecoについて理解が深まったものの、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのかわからないという人は、ぜひ参考にしてみてください。
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