老後に向けた資産形成の重要性が高まるなか、注目が集まるiDeCo。会社員に比べて年金額が少ない個人事業主や自営業者で、加入を検討している人も多いのではないでしょうか。しかしiDeCoのメリットやデメリットがよくわからず、加入まで踏み切れないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、iDeCoを個人事業主や自営業者におすすめする理由について詳しく解説します。iDeCoのデメリットやiDeCo以外の私的年金制度についても解説しますので、個人事業主・自営業者・フリーランスの人は、ぜひ参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
iDeCoは個人事業主や自営業者におすすめです。その理由をご紹介します。
iDeCoの掛金は全額、所得控除の対象となり、所得税・住民税の減額につながるため、個人事業主や自営業者に加入をおすすめします。
iDeCoの拠出限度額(掛金の上限)は、公的年金の区分によって異なります。第1号被保険者に当てはまる個人事業主の場合、月額6.8万円、年額81.6万円まで掛金を設定可能です。
一方、企業年金に加入していない会社員は月額2.3万円(年額27.6万円)、企業年金に加入している会社員や公務員は月額2.0万円(年額24.0万円)が掛金の上限です。個人事業主や自営業者は企業年金に加入していない会社員の2倍以上、公務員の3倍以上も掛金を設定できる計算に。この拠出限度額の高さからも、個人事業主にとってのiDeCoの節税効果はほかの職業よりも高いことが分かりますね。
2018年10月時点のiDeCoの加入等の集計によれば、個人事業主が設定している掛金額で1番多いのは1万円代、次いで1万円未満、3番目に6万円代となっています(参照:iDeCo公式サイト)。上限額に近い6万円代を拠出して、最大限の節税効果を狙う人も多いことがうかがえます。
個人事業主や自営業者にとって不安が大きい、老後に備えて計画的な試算形成ができる点もiDeCoの魅力です。個人事業主や自営業者が加入できる公的年金は、国民年金(基礎年金)のみです。会社員や公務員なら受けられる厚生年金に該当するものがないので、代わりにiDeCoのような私的年金制度を活用する必要があります。
厚生労働省年金局が発表したデータによると、令和2年度の国民年金受給者の平均年金月額は56,358円です(参照:令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況「表20 国民年金 受給者の平均年金月額の推移」)。一方、厚生年金受給者の平均年金月額は146,145円となっています(参照:同上「表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移」)。つまり個人事業主や自営業者は、会社員に比べて月に約9万円ほど受給できる年金が少ないことがわかります。
個人事業主や自営業者が加入できる私的年金は、iDeCoのほかに国民年金基金などがあります。iDeCo以外の私的年金について後ほど詳しく紹介するので、自分にあった私的年金を選んでみてください。
節税効果が期待できたり老後の資金を作れたりとメリットが多いiDeCoですが、いくつかのデメリットもあります。メリット・デメリット、どちらも理解したうえで加入することが重要です。
iDeCoは投資をして資産を積み立てていく制度のため、運用次第で元本割れする可能性があります。運用成績によって受け取れる額が変わるため、思ったよりも給付額が少ないという場合もあるでしょう。
iDeCoで元本割れを避けたいなら、定期預金や保険商品といった元本確保商品の運用がおすすめです。元本確保商品とは原則として元本が確保されている運用商品のことで、掛金に所定の利息が上乗せされます。
ただし元本確保商品には、投資信託に比べてリターンが少ないというデメリットがあります。どれくらいのリスクを許容できるのか、どれくらいのリターンを狙いたいのか、iDeCo加入期間や経済状況、年齢などを鑑みて適切な運用商品を選ぶのがポイントです。
iDeCoの資産は、原則60歳になるまで受給できない点にも注意が必要です。老後の資産形成を目的とした年金制度のため、途中解約や60歳前に資産の引出しができないように設計されています。
個人事業主や自営業者は、収入が安定していない職種です。売上によって収入が上下するほか、病気や怪我で収入が途絶えてしまうことも考えられます。そのため途中で資産を引き出せないことは、個人事業主や自営業者にとって大きなデメリットといえるでしょう。
なお、iDeCoは通算加入者等期間(年金資産の受給資格を得るために必要な期間)に応じて受給できる年齢が変わります。60歳の時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始の年齢が最大65歳まで繰り下がるため注意してください。
具体的には、通算加入者等期間が10年以上の場合は60歳から、8年以上10年未満の場合は61歳から、6年以上8年未満の場合は62歳から、4年以上6年未満の場合は63歳から、2年以上4年未満の場合は64歳から、1月以上2年未満の場合は65歳から受給可能です。例えば59歳でiDeCoに加入した場合、通算加入者等期間は1月以上2年未満となるため、65歳~75歳の間に受給を開始することになります。
iDeCoの運用商品や成績によっては利益よりも手数料が上回り、手数料負けしてしまう可能性があります。手数料負けを防ぐためにも、リターンが多い商品を運用することと手数料を抑えることがポイントです。
iDeCoに必要な手数料は、国民年金基金連合会の手数料と運営管理機関の手数料にわけられます。国民年金基金連合会で必要な手数料は、加入・移換時の手数料(初回1回のみ:2,829円)、加入者手数料(掛金納付の都度:105円)、還付手数料(その都度:1,048円)です。運用管理機関の手数料は機関によって異なるため、なるべく手数料が安い機関を選ぶことをおすすめします。
iDeCoと併用できる制度、付加年金・国民年金基金・小規模企業共済について解説します。
私的年金について気になっている個人事業主や自営業者には、付加年金への加入がおすすめです。国民年金とあわせて、老後の資産を形成できます。
付加年金は国民年金保険料(令和4年度:月額16,590円)に付加保険料(月額400円)を上乗せして納めることで、受給できる年金を増やせる制度です。老齢基礎年金を受給する際は、年額で200円×付加保険料納付月数のお金を受給できます。
例えば40歳から60歳まで付加年金に加入した場合、納付総額は400円×240か月(12か月×20年)=96,000円です。年金受給を開始すると1年あたり200円×240か月=48,000円受け取れるため、2年で支払った付加年金を回収できることがわかります。このように、付加年金は掛金が少ないにも関わらずリターンが大きいことが特徴です。
付加年金の加入対象は、個人事業主や自営業者などの国民年金の第1号被保険者に限られています。なお国民年金基金に加入している場合は、付加年金を納められないため注意してください。
国民年金基金は国民年金とセットとすることを前提とした、老後の資産形成に役立つ公的年金制度です。個人事業主や自営業者などの国民年金の第1号被保険者が加入することができる制度で、会社員との年金額の差を解消することを目的としています。
国民年金基金とiDeCoの大きな差は、国民年金基金が終身年金かつ確定給付型の年金制度であることです。生涯お金を受け取ることができるうえ将来の給付額が確定しているため、安定した年金収入となります。掛金はiDeCoと同様、全額が所得控除の対象となることも魅力的です。
国民年金基金の掛金の上限は、iDeCoと合算して月額68,000円です。そのためiDeCoと国民年金基金を併用する場合は、リスクとリターンを鑑みて配分を決定する必要があります。
小規模企業共済は小規模企業の経営者や役員が、廃業時や退職時にお金を受け取れる退職金制度で、個人事業主や自営業者も加入可能となっています。
掛金は月額1,000円から70,000円の間(500円単位)で自由に選択でき、年額の上限は84万円です。掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、iDeCoの所得控除と合わせると高い節税効果が期待できます。ただし事業上の損金や必要経費としては算入できないため、注意してください。
小規模企業共済の最大の特徴は、貸付制度があることです。掛金の納付期間に応じた貸付限度額のなかで、事業資金や福祉機器購入金などを低金利(1.5%もしくは0.9%)で借り入れられます。
iDeCoに加えて小規模企業共済に加入しておけば、事業資金が足りなくなったときや病気や怪我で働けなくなったときに、一定の条件下でまとまったお金を借りることが可能。経済ショックや不況など、様々な原因で売上が減少する可能性があります。そんなときにいつでも借入ができるという安心感は、個人事業主や自営業者にとって大きなメリットといえるでしょう。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を比較・解説しています。iDecoについて理解が深まったものの、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのかわからないという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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