老後に向けた資産形成ができる私的年金制度、iDeCo(イデコ)。加入を検討するなかで、リスクの少ない定期預金で運用しようと考えている人もいるのではないでしょうか。しかし、メリットやデメリットがわからなければ、なかなか始める勇気が出ませんよね。
そこで今回は、iDeCoで定期預金を運用するメリット・デメリットについて解説します。どんなときに定期預金を選べばいいかという具体的なケースも紹介するので、iDeCoを始める前に確認してみてくださいね。
2005年に女性向けFPオフィス(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。また、『Money&You TV』や「マネラジ。」「Voicy」などでも情報を発信しているうえに、全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。「はじめてのNISA &iDeCo」(成美堂出版)「1日1分読むだけで身につく お金大全100」(自由国民社)」など著書多数。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
iDeCoで運用できる商品には投資信託と元本確保商品の2種類があり、そこから自分で選んで組み合わせることになります。
決められた金利で運用される元本確保商品は、満期時に元本と利息がを受け取れる安全性の高い商品で、定期預金もそのひとつです。
一方の投資信託は、運用状況に応じて元本の変動があり、運用に失敗すると元本割れしてしまうリスクがあります。
まずは、iDeCoで定期預金を選ぶメリットから説明します。
iDeCoで定期預金をすると、投資信託と比べて安定した資産形成ができます。
定期預金は元本確保商品なので、元本割れの心配がなく老後に向けて貯めた資産が減ってしまう心配がありません。預金した金額よりもらえる金額が下がることはないため、老後資金を堅実に残すことが可能です。
投資信託で運用した場合は大きなリターンが期待できる一方、失敗すると資産価値が大きく下がるおそれもあります。運用期間が極端に短い場合や投資経験が少ない人は、資産を安定して積み上げられる定期預金で運用するのもよいでしょう。
どうしても投資をするのが怖い人は、定期預金でiDeCoを始めてみましょう。商品や資産配分の変更はいつでも行うことができます。
iDeCoで定期預金を運用すると、通常の定期預金と比べて実質的な利回りが大きくなるというメリットもあります。
元本確保商品は安定した資産形成ができる一方、利回りそのものは高くありません。堅実に積み立てられるものの、得られるリターンは少ないといえます。注目すべきは、税金などの出費を差し引いた実質的な利回りです。
iDeCoでは税制優遇を受けられるため、高い節税効果が期待できます。掛金は全額所得控除の対象となり、課税所得の金額を抑えて所得税や住民税などの税額を少なくすることが可能です。
月々30,000円をiDeCoで20年間積み立てた場合の節税効果を考えてみましょう。1年間で360,000円積み立てられるので、所得税と住民税がともに10%だとすると、1年間で税金が72,000円減額されます。会社員の場合、年末調整することで所得税分の36,000円は還付され、住民税分の36,000円は翌年分が減額されますよ。
同じ条件で20年間iDeCoを継続すれば、合計で144万円の節税が可能です。通常の定期預金を利用する場合はこのような節税効果がないので、iDeCoを利用したほうが節税できる分実質的な利回りが大きくなるといえます。
年間360,000円を拠出して、72,000円節税になるということは、実質利回りは20%となります。
iDeCoで定期預金を選ぶ際には、メリットの一方でデメリットもあることを確認しておきましょう。
iDeCoで定期預金を運用するデメリットのひとつは、手数料負けする可能性があることです。
iDeCoを運用するためには、国民年金基金連合会や運営管理機関に手数料を支払わなければなりません。定期預金で得られる運用益は少ないので、所得控除による節税額と合わせても手数料のほうが上回る可能性があるでしょう。
国民年金基金連合会には、加入・移換時手数料2,829円、加入者手数料105円、還付手数料1,048円を支払います。このうち加入者手数料と還付手数料は、掛金納付時や還付金受け取り時に都度支払わなければなりません。
運営管理機関である金融機関には、口座管理手数料などを支払う必要があります。とくに掛金が低い場合は、手数料負けする可能性が高まるため注意が必要です。
現在、定期預金の金利は、0.002%程度と低金利の状況にあり、定期預金に預けても利息は雀の涙程度です。そのため、運用益と節税額の合計が手数料を下回ってしまう可能性があります。
iDeCoで定期預金を運用すると、インフレによって資産が目減りするリスクがあります。インフレとは、物価が上がってお金の価値が下がることです。定期預金の金利はかなり低いので、受け取れる利子が物価の上昇についていけず、相対的に資産は目減りすることになります。
定期預金はインフレリスクに弱い資産なので、長期で運用する場合、資産価値が目減りした状態で年金を受け取る可能性が高いというリスクがあります。元本に利息を加えた金額を受け取れるとしても、インフレによって実質的な資産価値がマイナスになることもあるでしょう。
さらに、iDeCoは原則60歳までお金を積み立てる制度なので、インフレが進む前に中途解約ができません。定期預金がインフレリスクに弱い点とiDeCoが中途解約できない点は、物価の推移によっては大きなデメリットとなるでしょう。
近年、日本でもインフレが進んでいます。自分の資産形成のためにも、経済の動向には注目しましょう。
iDeCoの大きなメリットは運用益が非課税になることですが、定期預金で運用する場合は、その恩恵を十分に享受できません。
通常の投資では利息や運用益から20%ほどの税金が差し引かれますが、iDeCoでは税金がかからないので、利益をそのまま得られます。利益をまるまる元本に加えて再投資し、複利運用で効率的に増幅させられるのがiDeCoのメリットです。
しかし、投資信託に比べて運用益が大きくならない定期預金では、複利運用をしても利益の大幅な増加は期待できないので注意。複利運用の効果が薄く、せっかく運用益が非課税になってもそのメリットを活かしきれないのはデメリットといえるでしょう。
iDeCoの税制優遇のメリットを十分に活かせないため、定期預金で運用するのはもったいないという意見もありますが、自分のリスク許容度が低い場合は定期預金を選んでもよいでしょう。
リスク許容度とは、どの程度のリスクが取れるかを表す指標です。投資をする際に、どのくらいまでならマイナスを受け入れられるかという度合いを指します。
リスク許容度は今後の収入や資産形成の見通し・年齢・投資経験・性格など、さまざまな要素で変化するもの。投資によって想定以上の損失を出してしまい生活に影響が出ることを防ぐためにも、自分のリスク許容度を知ったうえで運用してください。
定期預金のような元本確保商品は利益が減ってしまうリスクが小さいので、リスク許容度が低くても運用しやすいでしょう。
例えば、50・60代の人で運用期間の終了が近づいている場合、定期預金を利用するのもよいですね。資産を減らすリスクを回避しながら、節税のメリットを受けられます。
ただし、昨今はiDeCoの加入期間や運用期間が長くなるように法改正が進んでいます。長生き時代に備えて、制度の動向を踏まえながら、商品を選択しましょう。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を解説しています。iDecoについて理解が深まったものの、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのかわからないという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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