自分で老後の資産を積み立てられる私的年金制度、iDeCo。現在公務員として働いており、iDeCoへの加入を検討している人もいるのではないでしょうか。将来の年金額を確保しやすい公務員でも老後は不安ですし、資産形成に役立つなら利用したいですよね。
そこで今回は、公務員がiDeCoに加入するメリットについて解説します。さらに、公務員がiDeCoを利用する場合の注意点も紹介するため、参考にしてみてくださいね。
FP(ファイナンシャルプランナー)、IFA(独立系投資アドバイザー)として福岡を中心にお金の専門家として活動。金融や運用のことをより分かりやすく、イメージしやすいように例話を用いて伝えることがモットー。金融商品は使い方、選び方そして受取り・出口が重要になるため、一生涯の担当者として利用者と付き合いをするように心がけている。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
現状、公務員のiDeCo加入者は増えています。iDeCoはもともと自営業者や企業年金のない会社員が加入する制度でしたが、2017年に公務員や専業主婦(主夫)、企業年金のある会社員なども加入できるようになり、加入者数が大きく伸びました。
2016年12月時点で加入者は約31万人でしたが、対象が拡大された2017年3月には約43万人に増加。2022年3月には約238万人と、対象拡大前から5年間で8倍ほどになっているというデータがあります(参照:大和総研レポート「対象者拡大から5年、iDeCo普及の足跡」)。
上記データを基に算出すると、2020年2月時点で加入者数を加入対象者数で割ったiDeCo加入率は、公務員が7.4%と高い数値でした。同じ加入区分である会社員は企業年金なしが3.4%、企業年金ありが1.1%と低い加入率であり、公務員のiDeCo加入者が増えているのがわかります(参照:大和総研「個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況」2ページ)。
掛金を月額2万円拠出するとiDeCoの掛金は年間で24万円になるため、所得税と住民税率が10%の人は、所得税・住民税どちらも24,000円ずつ、合計48,000円の節税になりますよ。
なお、所得税は年末調整で毎年還付され、住民税は6月から翌年の5月まで給与天引きに。よって還付ではなく、節税分が調整されて住民税が差し引かれます。
年金資産を比較的確保しやすい公務員も、iDeCoに加入したほうがいいといえます。その理由を確認しましょう。
2015年10月に改正が行われ公務員がもらえる年金が少なくなったことは、公務員がiDeCoに加入したほうがいい理由のひとつです。
現在は公務員も厚生年金に加入しますが、以前は「共済年金」という独自の制度が存在。厚生年金よりも保険料率が低く設定され、さらに職域加算という年金制度の3階部分が存在したため、公務員は会社員よりも優遇されていました。
しかし、官民格差の是正を目的とした改正が2015年に行われた結果、共済年金は厚生年金に一元化。これにより職域加算がなくなり、保険料率が引き上げられています。
民間の企業年金に相当する年金として新たに「年金払い退職給付」が導入されましたが、職域加算に比べて支給額は1割ほど少なくなりました。結果的に公務員が受け取れる年金が少なくなり、公務員も老後の資産確保のために自助努力をする必要性が高まったているのが現状です。
年金だけでなく、公務員の退職金が減少傾向にあることも、豊かな老後を送るための自助努力としてiDeCoに加入すべき理由です。
60歳の地方公務員1人当たりの退職金額を比較すると、2013年度は2,425万6,000円であったのに対し、2020年度は2,123万6,000円となっています(参照:総務省「令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果」)。7年間で300万円以上も退職金が減少しており、今後も急激に金額が増えるとは考えにくいでしょう。
年金に加え退職金も少なくなる状況を考えると、老後に安定した生活を送るためには自助努力も必要。毎月掛金を拠出して老後に備えられるiDeCoは、公務員の老後を支えるために役立つでしょう。
公務員は自営業者よりも掛金上限額が低く設定されていますが、それでもiDeCoへの加入によって得られるメリットがあります。
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象になるため、節税が可能です。
所得税や住民税の税額は、年収からさまざまな控除を差し引いた課税所得をベースとして算出されます。iDeCoで毎月拠出した掛金は全額が所得控除となり、年収から差し引くことができるので、課税所得を少なくして所得税と住民税の負担を抑えることが可能です。
たとえば月々の掛金が20,000円であり、所得税と住民税の税率が10%だった場合を仮定して、節税額をシミュレーションしてみましょう。1年間でiDeCoの掛金は240,000円になるため、所得税と住民税でそれぞれ24,000円、合計48,000円節税できます。
iDeCoで積み立てを10年間続けると480,000円、30年間続けると1,440,000円節税可能です。支払わなければならない税金を抑えられるのは、大きなメリットといえるでしょう。
iDeCoで得た利益は非課税なので、一般的な株式投資などと比べると効率よく運用できるというメリットもあります。
通常の場合、株式などの金融商品を運用すると、運用益の20.315%が税金として徴収されます。たとえば、10万円の利益が出たとしても20,315円税金が差し引かれるため、手元に残る利益は79,685円だけ。これに対し、iDeCoで運用する場合は税金が差し引かれないので、10万円すべてが残ります。
また、iDeCoは運用で得た利益を元本に加えて再投資できる制度なので、加入期間が長くなればなるほど得られる複利効果が大きくなります。
たとえば毎月掛金を12,000円拠出し、利回り3.0%で30年間運用した場合に得られる運用益は262万4,556円です。積み立てた元本が432万円になるため、合計すると694万4,556円となります。長年続けるほど利益が大きくなり、効率的に老後に備えられるといえるでしょう。
株式や債券、不動産などを投資対象として長期、分散、積立で継続していくことが資産を増やすコツです。
投資信託で運用する場合は、本人のリスク許容度、運用期間、資産残高などによって運用商品を選んでください。
例えば、運用コストが低いインデックスファンドで運用していく方法や、アクティブファンドで運用コストを差し引いた手取りの成果を狙う方法などがあります。また、運用商品がパッケージになっているバランス型ファンドを選択して長期分散の運用を継続していくのも良いでしょう。
iDeCoでは掛金を拠出するときだけでなく、積み立てたお金を受け取る際も一定額まで税控除を受けられます。退職金として一時金受け取りをする場合は退職所得控除、年金として数年かけて受け取る場合は公的年金等控除が適用されるので、税金の負担軽減が可能です。
一時金受け取りをする場合は、iDeCoの加入年数によって退職所得控除の金額が決定。加入年数が20年以下の場合は「40万円×加入年数」で、20年を超える場合は、「800万円+70万円×(加入年数-20年)で計算できます。
ただし、退職所得控除はその年に受け取ったすべての退職所得の合計額に適用されるため、公務員としての退職金をiDeCoの一時金と同じ年に受け取ってしまうと節税効果が減ってしまうこともあるので注意しましょう。
年金受け取りをする場合は、公的年金等の収入額から公的年金等控除を差し引きます。65歳未満であれば年間60万円以下、65歳以上の場合は年間110万円以下が非課税です。
iDeCoの年金資産の受取り方法は、大きく分けて一括で受取るか、年金として受取るかです。年金資産が多い人には退職所得控除が使えるので、一時金としての受取のほうが有利になります。
また、iDeCoで運用は最長75歳まで可能なため、受取時期をいつにするかも重要になります。
年金受取の場合は、公的年金をいつから受給するかによってiDeCoの年金収入と合算した収入になります。そのため、公的年金などの控除も確認しながら受け取ることで、手取りを多くできますよ。
公務員のiDeCo掛金上限額は20,000円です。制度の改正で掛金上限額が月12,000円から20,000円に引き上げられましたが、自営業者や専業主婦(夫)よりは低く抑えられています。
また、引き上げ後も年金払い退職給付との合算で55,000円までしか拠出できません。年金払い退職給付の掛金が月額35,000円より少なければiDeCoは上限金額まで拠出できるため、金額を確認しておきましょう。
公務員はiDeCoの掛金上限額が少ないにもかかわらず、手数料はほかの加入者と同様にかかるため注意が必要です。
iDeCoを利用するためには、国民年金基金連合会と運営管理機関に手数料を支払わなければなりません。国民年金基金連合会に支払う加入・移換時手数料や加入者手数料などは金額が固定されているので、拠出する金額が少なければその分手数料の負担が大きくなってしまいます。
一方、運営管理機関である金融機関に支払う手数料は、どこで申し込むかによって変わわります。手数料の負担をできるだけ抑えるためにも、手数料が安い金融機関でiDeCoに申し込むのがおすすめです。
金融機関に支払う手数料としては、運用管理手数料や信託報酬などがあるため、公式サイトなどでそれぞれの金額を確認しましょう。一般にネット証券は、手数料が安い傾向にあります。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を紹介しています。iDecoについて理解が深まったものの、金融機関と商品の選び方がわからないという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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