公務員としての働き方も選べる薬剤師。薬剤師を目指している人や、薬剤師として働いている人のなかには、公務員薬剤師の働き方が気になっている人もいるのではないでしょうか。
今回は、公務員薬剤師の年収や仕事内容などを解説します。公務員薬剤師がきついといわれる理由や、公務員薬剤師になる方法も紹介するので、公務員薬剤師に興味がある人は参考にしてみてください。
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公務員薬剤師として働く場合、どれくらいの収入が得られるのか気になる人は多いでしょう。ここでは公務員薬剤師の平均年収や初任給を解説するので、公務員薬剤師の給与事情をイメージしてみてください。
公務員薬剤師の平均年収は、薬剤師全体の平均年収よりも高めの水準です。
総務省の「第5表 職種別職員の平均給与額」によると、公務員薬剤師の給与月額合計は約39万円、1年間では約468万円。人事院の給与勧告に基づく公務員のボーナスは4.4か月(※1)です。給与と合わせると、平均年収は約640万円と算出できます。
1.令和4年以降
一方で、薬剤師全体の平均年収は約583万円(※2)です。薬剤師の主な職場別に見ると、平均年収の目安は病院勤務で約430~490万円、調剤薬局勤務で約490〜520万円、ドラッグストア勤務で約510〜560万円といわれています。
2.職業情報提供サイトjobtagを参照
よって公務員薬剤師の平均年収は、薬剤師全体やほかの職場の平均よりも高いことがわかるでしょう。
公務員薬剤師の初任給は、ほかの職場に比べると低い傾向があります。
一般的な目安として、病院勤務の初任給は約18~25万円、調剤薬局勤務は約22〜35万円、ドラッグストア勤務は30万円前後です。一方、公務員薬剤師の初任給は約20万円(※1)なので、ほかの職場よりも低めだといえます。
1.令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果を参照
ただし、公務員薬剤師は基本的に昇給が毎年あるため、長期間の勤務により年収が上がりやすいのが特徴です。初任給は低めでも、長期的な視点で見ると安定した収入が見込めるでしょう。
公務員薬剤師は、国家公務員薬剤師・地方公務員薬剤師・麻薬取締官の3つに大別されます。各職種の仕事内容を紹介するので、どの職種が自分に向いているかを考えてみてください。
国家公務員薬剤師は、厚生労働省に属する薬系技官として働きます。主な仕事は、国民の暮らしや健康に関する制度の整備、安全に医療を提供するための仕組み作りなどです。
薬系技官の担当分野は、薬事・保健医療・食品安全・化学物質・研究開発・その他行政の6つに分類されます。
薬事分野の主な業務は、医薬品・医療機器などを国民が安全に使うためのルール作りです。保健医療分野では医療体制を整えることを目的として、診療報酬の検討、医薬品の価格の評価などを行います。
食品安全分野で行うのは、食品の添加物や包装などのリスク管理です。化学物質分野では、新規・既存の化学物質のリスク評価や、毒物・家庭用品などの安全対策を実施します。
研究開発の主な業務は、大学・企業が開発に取り組みやすい環境を整備したり、研究予算を確保したりすることです。その他行政では、感染症対策や災害・テロ対策などを担当します。
分野が多岐にわたることから、薬系技官は幅広い業務に関われる仕事といえるでしょう。一般的な薬剤師とは異なる仕事を経験できるのが特徴です。
地方公務員薬剤師の主な仕事は、公立病院・保健所といった地方自治体の施設に関わる業務です。職場によって具体的な仕事内容は異なります。
例えば公立病院の基本的な仕事は、調剤・服薬指導・病棟業務などです。保健所では、飲食店・施設への立ち入り検査や、新規開設許可などを行います。
そのほか衛生研究所・都道府県庁・市町村役場なども、地方公務員薬剤師が活躍できる職場です。仕事内容には、製造メーカーなどへの立ち入り検査、製造・販売に関する許可、食品衛生・環境衛生の監視や指導などがあります。
地方公務員薬剤師の働き方は、一般的な薬剤師としての仕事ができるケースと、行政に関する仕事がメインのケースに分かれるのが特徴です。
麻薬取締官は、薬物犯罪に関する仕事を担当します。麻薬取締官も国家公務員薬剤師に含まれますが、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部に勤務するのが特徴です。
麻薬取締官の主な仕事内容は、薬物の取り締まりや立ち入り検査、薬物乱用防止の啓蒙活動、薬物に関する相談の対応など。特別司法警察員として犯罪捜査を行うこともあります。
公務員薬剤師を目指す際は、知っておきたい注意点がいくつかあります。注意すべきポイントを事前に把握しておけば、就職する前とあとのギャップを埋められるでしょう。
公務員薬剤師は異動や転勤が多い職業です。幅広い業務を経験するために、目安として国家公務員薬剤師はおよそ2年、地方公務員薬剤師は3〜5年ごとに部署異動があるとされています。
異動や転勤が多いと、職場環境の変化によってストレスを抱えてしまい、仕事に影響が出る可能性があります。プライベートにおいても、新しい土地で生活を始める際は慣れるまでに時間がかかるでしょう。
また、地方公務員は転勤先の地域が限られますが、国家公務員の転勤先は全国が対象です。場合によっては、家族と離れて暮らすことも考えられます。国家公務員薬剤師を目指すのであれば、異動や転勤について家族と話し合う必要があるでしょう。
現在住んでいる地域や家族から離れたくない場合は、地方公務員薬剤師を検討するのが得策といえます。
一般的な薬剤師としてのキャリアアップが難しいことも、公務員薬剤師の注意点のひとつです。
一部の職場を除き、公務員薬剤師は調剤業務や服薬指導を行いません。さまざまな経験が積めるのはメリットですが、一方で民間の薬剤師が行うような業務に携われないのはデメリットといえます。公務員薬剤師として長く働くほど、薬剤師としてブランクができるでしょう。
公務員薬剤師から民間の職場への転職を目指す際、調剤や服薬指導などのスキル不足によって転職が不利になることも考えられます。
公務員薬剤師は基本的に副業が禁止されている点にも注意しましょう。
国家公務員法や地方公務員法において、公務員は国民全体の奉仕者としての役割があり、全力で職務に専念しなければならないと定められていることから、原則として副業が認められていません。
公務員薬剤師は初任給が低めなので、副業で収入を得たいと考える人もいるでしょう。しかし副業は規定違反にあたるため、給料だけでやりくりする必要があります。人によっては、昇給するまでの間は金銭的に厳しくなるでしょう。
ただし、近年では働き方改革の一環として、特定の条件下において自治体が副業を認めるケースが増えています。例えば神戸市では、任命権者の許可があれば、勤務時間外に限り副業が可能です。
公務員の副業を認める動きは普及しつつあるため、今後副業ができる環境が整っていく可能性はゼロではないでしょう。
公務員薬剤師を目指す際は、採用のチャンスや募集人数が少ないことも理解しておきましょう。
公務員薬剤師になるには、国家・地方公務員の試験を受ける必要があります。公務員試験は基本的に年1回です。その年に受からなければ、翌年にしか再挑戦できません。21〜30歳までといった年齢の要件も設けられるため、試験に挑戦できる期間も限られます。
また、公務員薬剤師は採用人数が少ないことから、倍率が高くなりがちです。例えば国家公務員である薬系技官の採用人数は、令和5年度で9人でした。薬系技官は全国から応募があるため、倍率が高くなると予想されます。
限られた採用枠を勝ち取るためには、試験対策や情報収集を徹底する必要があるでしょう。
公務員薬剤師になるには、公務員試験などを受ける必要があります。職種ごとの試験内容や流れを紹介するので、公務員薬剤師のなり方を把握しておきましょう。
国家公務員薬剤師になるには、国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)に合格する必要があります。2023年度の試験の内容と流れを見てみましょう。
試験内容は、基礎能力試験・専門試験などの筆記試験と面接です。3月に申込みが開始され、1次試験の筆記が4月に実施されます。2次試験の筆記・面接の実施は5月、合格発表は6月です。
受験資格は、1993年4月2日~2002年4月1日生まれで日本国籍を保有していること。年齢要件に該当しなくても、人事院が認めた場合は受験資格が与えられます。
試験の実施年度によって要件が異なる可能性があるため、詳細は人事院の「国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)」を確認してみてください。
地方公務員薬剤師になるには、各自治体や職場ごとに定められた試験を受ける必要があります。例として、2022年度の大阪市職員(薬剤師)の試験内容と流れは次のとおりです。
5~6月にかけて受験申込みが開始され、7月に記述式の専門試験と個別面接の口述試験が実施されました。受験資格は35歳以下で、薬剤師試験合格者または合格見込者であることが必須。合格発表は8月中旬に行われました。
各自治体や職場によってスケジュールや試験内容が異なるため、事前に公式サイトなどを確認しておきましょう。
麻薬取締官になるためには、地方厚生局麻薬取締部の採用試験に合格しなければいけません。試験の種類は以下の2つに分かれます。
令和5年度の薬学系選考採用試験は、6月に1次試験の受付が始まり、7月に論文・適性検査・面接試験が実施されます。8月上旬に1次試験の結果発表、8月中旬に面接による最終試験があり、合格者発表は最終試験から1週間以内です。
なお、1993年4月2日以降の生まれであること、麻薬取締官として職務執行に支障のない健康状態であること、日本国籍を有していることを満たす必要があります。
国家公務員採用一般職試験の行政またはデジタル・電気・電子の1次試験合格者は、官庁訪問に参加可能です。官庁訪問は民間企業の採用試験にあたるもの。志望官庁に関する知識を深めるとともに、自己PRができる重要な機会でもあります。
令和5年度の官庁訪問のスケジュールは、7月7日~7月11日か、7月31日以降で指定された日時です。応募資格は、国家公務員採用一般職試験(大卒程度)に合格していることに加え、麻薬取締官として職務執行に支障のない健康状態であることと定められています。
麻薬取締官を目指す場合は、受験の仕方によって試験の仕組みが異なる点に注意が必要です。実施年度によって要件などが異なる可能性もあるため、地方厚生局麻薬取締部の公式サイトで試験内容・スケジュール・受験資格などをよく確認しておきましょう。
公務員薬剤師になるか迷っている場合は、専門家である転職エージェントに相談するのがおすすめです。
公務員薬剤師の業務内容や、働くうえで求められるスキルは、民間の薬剤師とは異なります。転職エージェントを利用すれば、自分が公務員薬剤師に向いているかを判断できるでしょう。
以下の記事では、薬剤師におすすめの転職サイト・エージェントを徹底比較しています。公務員薬剤師になるかどうか考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
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