長らく人材不足で売り手市場と言われてきた薬剤師。しかし、新型コロナウィルスや医療費削減などの影響で、薬剤師を取り巻く環境は大きく変化しました。薬剤師として転職を検討している人のなかには、近年は薬剤師の転職が厳しいと感じている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は薬剤師の転職が厳しいと言われる理由に加え、転職の失敗例や成功させるうえで知っておきたいポイントを徹底解説します。転職を検討している薬剤師の人はぜひ参考にしてください。
脱毛・病院クリニック・サブスクリプション・レンタル・買取業者などのサービス分野において、幅広いジャンルのコンテンツ制作に5,000本以上携わる。自身のモットーとして「選ぶのが難しいジャンルだからこそ、実際の検証や調査でしかわからない情報を届けること」を心掛け、情報発信を行っている。
薬剤師の転職が厳しいと言われる背景には、新型コロナウィルスの影響やドラッグストア併設型薬局の増加、薬剤師免許保有者の増加などが挙げられます。
新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、薬剤師の求人数が減少したことが転職が厳しくなっている要因のひとつです。
2018年と2022年12月の有効求人倍率を見てみると、半分以下に減っていることがわかります。
有効求人倍率は、厚生労働省の一般職業紹介状況を参照
この背景には、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響により、医療機関での受診や調剤薬局の利用が減少したため、医療業界全体の売上が低下したことが挙げられます。
東京商工リサーチのデータによると、2021年1月〜11月のわずか10か月で過去最多となる26件の調剤薬局が倒産しており、薬剤師の活躍する現場はかなり減少ている可能性があるでしょう。
しかし、新型コロナウィルス騒動が落ち着くにつれて人の動きも戻りつつあり、薬局の需要も今後は回復してくることが予想されます。
近年、ドラッグストア併設型の調剤薬局が増加傾向にあり、従来の調剤薬局の求人が減少していることも薬剤師の転職が厳しくなっている要因のひとつです。
医薬品や医療グッズだけを扱う調剤薬局に比べ、日用品や食料品なども扱うドラッグストアの需要が高まり、店舗数も増加傾向にあります。
しかし、従来の調剤薬局の求人が減ってもドラッグストアの求人は増えている可能性があるので、そこまで大きな影響はないと考えられます。
薬剤免許保有者の増加により、薬剤師同士の競争率が高まっている傾向があります。
2006年度から薬学部が6年制になり、全国的に新設された薬学部が多く存在していることからも、薬剤師の過剰供給が懸念されています。
厚生労働省の薬剤師需給調査によると、今後必要とされる薬剤師の人数は2030年頃から供給過多に転じるという予測も。
今後も薬剤師免許保有者は増え続けるため、薬剤師を必要としている企業や職場数の推移によっては転職が厳しくなってくることが予想されます。
転職が厳しくなる薬剤師に共通する特徴を4つ紹介します。
薬剤師の転職市場は競合相手が多いため、募集要件を満たしているだけでは厳しいのが現状です。
全体から見ると薬剤師の有効求人倍率は高水準であるとはいえ、年々求人が減っているのは統計から見ても明らかです。
このような状況下で内定を勝ち取るためには、専門性の高い実績や保有資格で差別化を図ることが不可欠と言えます。
転職回数が多いと早期退職を警戒されて、転職が厳しくなる可能性があります。
もちろん採用する企業の基準・採用意欲・転職時の年齢によって許容される転職回数が異なるので、転職回数○回以上は厳しいといったことは一概には言えません。
転職回数が多いという理由で書類選考も通らない企業がある一方、やむを得ない事情や筋の通った転職理由があれば回数にかかわらず内定が出る場合も。
しかし転職回数の多さがメリットになるケースは少ないため、慎重に行動する必要があります。
人とのコミュニケーションが苦手で、なかなか良い関係を築けない人は転職が厳しい可能性があります。
薬剤師は技術職であるものの、実際の職場では限られた空間で上司や同僚と密にコミュニケーションを取る必要がある職種です。
しかし、ドラッグストア併設型の調剤薬局は環境が異なり、病院や施設勤務に比べると風通しが良くコミュニケーションを取りやすい場合もあります。
環境が変わることで人間関係が改善する場合もありますが、どのような職場であっても周囲の人と積極的にコミュニケーションを取る努力は必要でしょう。
転職先に対する希望条件が多すぎると、なかなかマッチングする求人がなく結果的に転職が厳しくなります。
たとえば、大手企業や都市部では薬剤師の採用難易度が低く、特別な待遇を提示しなくても容易に薬剤師を採用できる傾向があります。
仮に好条件の求人があったとしても、そのような求人には応募が殺到するため競合相手が多くなり選考が厳しくなるでしょう。
転職を検討する場合は希望条件に優先順位を付け、転職先を探している地域の求人の傾向を把握し、適切な条件を設定することが大切です。
薬剤師が転職して失敗したと感じるケースのうち、特に多い例を4つ紹介します。
転職が失敗だったと感じた理由で特に多いのが人間関係の問題です。
転職先の上司・同僚・経営層との人間関係の煩わしさや、職場全体の雰囲気の悪さに悩む人も多いようです。
人間関係には相性もあるため一概には言えませんが、多方面から情報収集をすることで入社後のギャップを減らせる可能性があります。
想定よりも業務量が多く給料に見合わない、思うように昇給しないことで転職が失敗だったと感じる人もいます。
いずれも給与に関する失敗例ですが、激務や離職率の多さなどの背景があって高待遇が設定されているケースも少なくありません。
また、入社時の年収が高くても昇給率が低い・ほとんど昇給しないといったケースもあります。
想定していたよりも勤務時間が長く、休憩が少なかったことで転職が失敗だったと感じる人も多くいます。
繁忙期などで一時的な忙しさは仕方ないとしても、長時間労働が常態化している職場で働くのは消耗戦になりがちです。
時間の経過とともに心身が疲弊していくため、なかなか長期的に働いていくイメージは持てないでしょう。
勤務先が資格取得や研修・勉強会などのバックアップをあまりしてくれなかったため、転職に失敗したと感じている人もいます。
薬剤師は常にスキルアップが求められる職種であり、年収アップやキャリアアップにも直結する重要な要素。キャリアプランが明確な人や成長意欲がある優秀な人材ほど、成長が望めない職場にデメリットを感じる傾向があります。
薬剤師転職に成功するためのポイントとして、日頃から意識しておくと良いこと・転職活動のコツを紹介します。
転職で評価されやすい方法のひとつとして、研修認定薬剤師の資格取得がおすすめです。
認定薬剤師とは一定期間の研修や実技を通して、最新の技術や知識を有していると実力を認められた薬剤師のこと。この資格は客観的に薬剤師としての優位性を示せるため、アピールポイントとしても有効です。
転職に有利なだけでなく、企業によっては資格手当や昇給手当に反映されるため、年収アップにもつながります。
さらに、認定薬剤師を足がかりにして専門性の高い資格を目指せるうえ、かかりつけ薬剤師の要件にもなっているため、キャリアの幅が大きく広がります。
転職の成功以外にもメリットが多い資格なので、チャレンジしてみると良いでしょう。
管理薬剤師を目指して薬剤師としての市場価値を高めるのも良い方法です。
管理薬剤師とは、法律で各薬局に設置することを義務付けられている責任者のこと。薬局長とも呼ばれており、製造業においては拠点ごとの責任者を指す場合もあります。
薬剤師としての経験値があることはもとより、管理職としての経験がある薬剤師は市場価値が高く、調剤薬局の開業や運営にも不可欠なため、高い評価を得られます。
管理薬剤師の要件は実務経験5年以上・認定薬剤師資格保有者なので、要件を満たしている場合は管理薬剤師を目指すのがおすすめです。
要件を満たしていない場合、まずは認定薬剤師を目指しながら実務経験を積むと良いでしょう。
今後需要が高まる可能性のある在宅医療・かかりつけ薬剤師を目指すのもおすすめです。
かかりつけ薬剤師とは、特定の患者さんを受け持ち薬の管理を行ったり相談に応じたりする薬剤師のこと。
現在の職場でこれらの経験が積めるなら積極的に経験しておくと良いでしょう。現職で難しい場合は、在宅医療やかかりつけ薬剤師のキャリアに対して意欲的であることを伝えると、評価を得やすい傾向があります。
転職先に求める希望条件を書き出し、優先順位をつけましょう。
希望条件が曖昧だと転職しても現職の不満が解消されなかったり、安易に好条件の求人に飛びついてしまったりと、転職に失敗する可能性が高くなってしまいます。
自分は何を求めて転職しようとしているのか、絶対に譲れない条件は何かを明確にし、転職活動の道標にすることが成功への近道です。
求人にはネガティブな情報が載っていないため、さまざまな角度から入念に情報収集をしましょう。
転職失敗例の多くは情報不足による入社後ギャップがほとんどです。入社してから後悔しても後の祭りなので、第三者からの情報を集め、可能な限り実態を把握する努力をしましょう。
たとえば、離職率をチェックする・現場見学をする・転職エージェントから情報を得るなど。多くの失敗パターンは情報収集することで回避できる可能性があります。
応募企業の年収や待遇だけではなく、業務内容や業務量を正確に把握しておきましょう。
業務内容や業務量が変わることで仕事のリズムが掴めなかったり、前職の経験が活かしづらくパフォーマンスを発揮できなかったりするケースが少なくありません。
上記のような点が職場によって異なり、特に入社後にギャップを感じやすいポイント。ひとつでも多く把握できるよう事前に確認することをおすすめします。
薬剤師の転職成功にはスピード感がとても重要です。
薬剤師の有効求人倍率は他職種に比べ高水準であるものの、良い求人には応募が殺到する傾向があり、募集が締め切られてしまう可能性があるためです。
仕事をしながら継続的に求人をチェックするのは困難なので、転職サイトや転職エージェントをうまく活用して、希望に合った求人が出たら通知が来るような体制を整えておくと良いでしょう。
転職活動を成功させたい人は、薬剤師に特化した複数の転職サイトやエージェントを積極的に活用するのがおすすめ。
特定のサイトやエージェントにしか求人を出していない企業も多いため、複数利用することで選択肢が広がります。転職成功に向けてさまざまなサポートを行うだけでなく、内定後の条件交渉などを代行してくれるのもメリットです。
以下の記事で、薬剤師に特化したおすすめの転職サイト・エージェントをランキング形式で徹底比較しているので、多くの求人からより良いものを選びたい人、少しでも良い条件で転職を成功させたい人はぜひ参考にしてください。
マイベストは有料職業紹介事業の許認可を受けています。(13-ユ-315911)
自衛隊で薬剤師として働く薬剤官。非常に人数の少ない職種ですが、薬剤官は薬剤師の資格を活かしつつ、国を守る自衛官としても働ける、やりがいのある仕事です。薬剤官として働くことに興味は持っているものの、具体的な業務内容やどうすればなれるのかなどがわからない人も多いはず。今回は、あまり知られていない薬...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
転職活動で必ず問われる志望動機。選考結果にも影響する重要な項目ですが、しっかりとした志望動機を書くには念入りな企業研究が不可欠です。しかし、なにを書けば良いのかわからず苦戦している人も多いのではないでしょうか。そこで今回は薬剤師が転職活動する際の志望動機の書き方について、例文を交えて徹底解説し...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
安定性が高く福利厚生も充実している公務員薬剤師は、決して楽な仕事ではなく辞めたいと感じる人が少なくないのが事実です。公務員の薬剤師を辞めたいと思っているものの、民間に転職するとどんなデメリットがあるのか、どんな人が民間への転職に向いているのかなど、わからないことが多く不安な人もいるのではないで...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
医療系の国家資格である薬剤師。薬剤師の資格を持つ人のなかには、免許の更新が必要なのかわからない人もいるのではないでしょうか。今回は薬剤師免許の更新の有無を解説します。免許保有者の義務である届け出のやり方や、届け出を忘れたときの対処法も紹介するので、薬剤師免許を保有する人は参考にしてみてください。
薬剤師向け転職サイト・エージェント
医療現場には欠かせない薬の専門家、薬剤師。ミスが許されないプレッシャーやさまざまな立場の人たちとの複雑な人間関係などにストレスを感じて、薬剤師を辞めたいと感じることもあるでしょう。しかし、思いつめた勢いで行動して後悔するケースもある一方で、辞めたい理由によっては改善が見込める場合もあります。そ...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
薬剤師として働きながら収入源を増やしたり、スキルアップを目指したい人におすすめの副業。しかし、そもそも薬剤師は副業やダブルワークをしてもよいのか、どのような仕事を探せばよいのか迷っている人も多いのではないでしょうか。本記事では、薬剤師は副業・ダブルワークをできるのか詳しく解説します。薬剤師が副...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
医薬品に関する幅広い知識を持ち、薬局や病院、製薬会社などで活躍している薬剤師。しかし、インターネットやさまざまなでは将来性がないといわれることもあり、特に薬剤師を目指している人は不安に感じることもあるのではないでしょうか。本記事では、薬剤師の現状から考えられる将来性や、薬剤師に将来性がないとい...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
医療機関やドラッグストアの責任者として、法律で設置が義務づけられている管理薬剤師。薬剤師として働きながら管理薬剤師を目指している人の多くは、特別な要件や資格は必要なのか、業務内容はどのようなものなのか疑問に思っているのではないでしょうか。本記事では、管理薬剤師になるための要件を詳しく解説します...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
仕事の特性や職場環境が原因で人間関係に悩むことが多い薬剤師。人間関係の改善方法が知りたい人や、薬剤師の人間関係を知って自分に適性があるかどうか知りたい人もいるでしょう。この記事では、薬剤師が人間関係に悩む理由や改善するコツを解説します。職場別の人間関係が悪化する原因なども紹介するので、薬剤師へ...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
ドラッグストアや調剤薬局など、就職先としてさまざまな選択肢が考えられる薬剤師。薬剤師の就職先としては具体的にどのような職種があり、年収はどれくらいなのか気になっている人もいるのではないでしょうか?本記事では、代表的な薬剤師の就職先を紹介します。就職先別の仕事内容やメリット・デメリット、年収など...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
薬学部で6年間専門課程を修了すると、ようやく国家試験が受けられる薬剤師。薬剤師になるチャンスは何歳くらいまであるのか、気になる人は多いのではないでしょうか。今回は、薬剤師になるのに年齢制限はあるのかや、転職難易度を年齢別に解説します。薬剤師になることを諦めたくない人に役立つ情報なので、ぜひ最後...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
年齢を重ねて職場環境を変えたいと感じる人も多い、50代の薬剤師。実務経験は十分にあるものの、今からでも転職できるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、50代薬剤師の転職事情を詳しく解説します。主な転職理由や転職を成功させるコツも解説するので、転職を検討している人は参考に...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
転職が難しいといわれる40代薬剤師。転職したくても、採用してくれる企業はあるのか、40代でも需要はあるのかなどが気になり、失敗を恐れてなかなか一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。今回は、40代薬剤師が転職するにはどうすればいいかや、失敗しないための注意点を紹介します。転職を検討して...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
激務に追われる看護師のなかには、一般企業への転職を検討している人もいるでしょう。しかし、今までの経験を活かせる職種はあるのか、転職後に後悔するのではないかと悩んでしまう人も少なくありません。そこで今回は、看護師から一般企業に転職する方法について解説します。医療スキルや知識を活かせる職種や、後悔...
薬剤師向け転職サイト・エージェント
さまざまな事情により、転職を繰り返してしまう薬剤師も少なくありません。転職回数が多いと、次に転職する際に採用されにくいのではないかと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。今回は、転職回数が多い薬剤師は転職活動で不利になるのかを解説します。転職回数が影響しないケースや、転職歴が多くても採用率を...
薬剤師向け転職サイト・エージェント