老後の資金源を計画的に積み立てられる、個人型確定拠出年金iDeCo。専業主婦(主夫)や無職でも、気になっている人は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、専業主婦(主夫)や無職の人でもiDeCoに加入できるのかについて詳しく解説します。専業主婦(主夫)や無職の人がiDeCoに加入する条件やメリット・デメリットについても紹介するので、加入を検討している人はぜひ最後までチェックしてみてください。
大手金融機関に入行後、海外赴任を含め10年以上勤務。その後、2009年8月にファイナンシャル・プランナー資格取得。現在は、独立系FPとして契約者の立場に立って真剣に対応することをモットーに、個人相談やセミナー講師、執筆活動を行っている。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
専業主婦(主夫)の人も、iDeCoの加入対象です。以前は専業主婦(主夫)はiDeCoに加入できませんでしたが、2017年に施行された確定拠出年金制度の改正で加入可能範囲が拡大され、専業主婦(主夫)のほか、企業年金加入者や公務員も加入できるようになりました。
専業主婦(主夫)は、iDeCoの加入区分では第3号被保険者に該当。厚生年金・共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)が対象です。
iDeCoは加入区分に応じて掛金の上限が異なり、第3号被保険者である専業主婦(主夫)の拠出限度額は月額2.3万円で、年間の拠出限度額は27.6万円となっています。
国民年金を支払っていれば、無職の人でもiDeCoに加入可能です。該当するのは、第1号被保険者に該当する20歳以上60歳未満の自営業者とその家族・フリーランス・学生・無職の人など。2022年5月からは、任意加入で国民年金に加入している65歳未満の人もiDeCoへの加入ができるようになり、より対象者が広がっています。
ただし農業者年金の被保険者と、国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている人はiDeCoの加入対象外となります。なお、障害基礎年金を受給している人は、国民年金を免除されていても加入対象です。
無職の人の拠出限度額は月額6.8万円、年額81.6万円までです。国民年金基金や国民年金付加保険料との併用も可能ですが、拠出限度額はiDeCoとの合算枠となります。それぞれの年金制度についてよく検討して、自分に合ったものを選択するようにしましょう。
早い段階から計画的に老後資産の準備ができるのが、iDeCo加入のメリット。無理のない範囲で毎月の掛金を自身で設定し、時間をかけて運用していくことができます。
過去の就業期間にもよりますが、専業主婦(主夫)や無職の人は厚生年金に加入していない、または加入期間が短いため、公的年金の受給額が少なくなる傾向にあります。公的年金だけでは足りない老後資金をカバーする方法として、iDeCoはぴったりです。
iDeCoの運用資産は、原則として60歳以降の受給年齢になるまで受け取ることができないので、ついつい使ってしまう心配がないのもメリット。確実に老後資金を貯めることができるでしょう。
iDeCoの運用益は非課税のため、効率のよい運用が行える点も見逃せません。株式投資や投資信託などの金融商品で運用益が出た場合、通常は20.315%の税金が課せられますが、iDeCoではどれだけ運用益が出ても一切税金がかかりません。
例えば元本50万円を運用して、1年後に1万円の利益を得たとしましょう。これには税金がかからないため、翌年は51万円を元本として運用が開始されます。
このように利益を全額再投資して複利運用することで、効率よく資産を増やすことが期待できます。複利運用は長く運用すればするほど大きな効果が期待できるので、iDeCoに加入するなら、できるだけ早く始めるのがおすすめです。
受取時に大きな税控除を受けられるのもiDeCoのメリットです。iDeCoの受け取り方法は年金・一時金・年金と一時金の3種類から選びますが、どの方法で受け取っても控除対象となり一定額まで税金がかかりません。
年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象になります。控除額は受給者の年齢や収入金額によって異なりますが、65歳未満であれば収入合計額60万円まで、65歳以上であれば収入合計額110万円までは全額控除され、収入はゼロとなります。そのほかの控除額は国税庁公式サイトで確認できます。
一時金として受け取る場合は、退職所得控除の対象になります。控除額は、加入期間が20年以下の場合は「40万円×加入年数」、20年超の場合は「800万円+70万円×(加入年数-20年)」で計算。例えば30年間掛金を積み立て、一時金として資産を受け取った場合、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円までが非課税です。
専業主婦(主夫)や無職の人の場合、退職金がなく公的年金も少ない傾向にあります。一時金と年金、どちらの方法で受け取っても受給時に課税されない可能性が高いので、運用資産を効率的に受け取ることができるでしょう。
iDeCoの大きなメリットは、毎月積み立てる掛金の分だけ所得控除が適用され、所得税や住民税を軽減できることですが、専業主婦で無収入の場合はそもそも所得税を払っていないので、税制優遇のメリットは受けられません。
なお、iDeCo加入時には収入がなくても、そのあと働き始めればiDeCoによる所得控除の対象になる可能性はあります。
しかし主婦(主夫)が働いて年収が130万円以上になると、自ら社会保険料を支払わなければならなくなるため、第3号被保険者に該当しなくなるというデメリットが生じます。ただし、厚生年金に加入できれば、その分自分の将来の年金額が増えたり、健康保険の加入によって傷病手当金や出産育児一時金などが受給できるメリットもあります。
掛金が少ない場合、運用益よりも支払う手数料の方が上回ってしまう手数料負けの可能性があるので注意が必要です。
iDeCoの毎月の掛金は5,000円から設定可能ですが、掛金が少ないほど運用益も低くなってしまいます。加えて運用利回りの小さい商品に投資している場合は、手数料負けする可能性がさらに高まるでしょう。
iDeCoで必要となる手数料は、国民年金基金連合会の手数料と運営管理機関の手数料。国民年金基金連合会に支払う手数料は、加入や移換時の手数料(2.829円)と掛金を納付するたびに支払う手数料(都度105円)と還付金の受け取り手数料(都度1,048円)の3種類です。
運営管理機関への手数料は、利用する運営管理機関によって異なります。iDeCo公式サイトの運営管理機関一覧ページも参考にしつつ、十分に比較して利用する金融機関を選びましょう。
所得がある人はiDeCoの掛金が全額所得控除になるため、節税分がiDeCoの加入者手数料を上回り手数料負けしにくいといえるでしょう。
しかし、税金を払うほどの所得がない人は、節税分がないため元本確保型で運用をしていては手数料負けしてしまいます。
また、運用益非課税のメリットは運用益が大きいほど効果も大きくなるため、長期で投資信託を使って積極的に運用すると非課税メリットを受けやすくなりますよ。
iDeCoで運用した資産は、原則として60歳になるまで受け取れません。そもそも老後の資産形成が目的の制度のため、途中でお金を引き出せないように設計されています。60歳前に受け取ることができるのは、iDeCo加入者が一定以上の障害状態になった場合や死亡した場合のみです。
急な事故や病気、収入の減少などでお金が必要になっても、iDeCoを解約することはできないので、iDeCoの積立金とは別に必要なときに使えるお金を確保しておくようにしましょう。
専業主婦(主夫)がiDeCoに加入する前に、配偶者の所得や確定拠出年金制度への加入といった状況を確認しておきましょう。専業主婦(主夫)がiDeCoに加入するより、配偶者が加入したほうがメリットが大きい場合があるためです。
先述したとおり収入の少ない専業主婦(主夫)は、iDeCoの大きなメリットである所得控除を受けられません。そのため、働き手の配偶者が最大限の掛金でiDeCoに投資したほうが、節税効果が高まる可能性があります。
ただし、配偶者がすでに十分な控除を受けているケースや、配偶者自身が最大掛金でiDeCoに加入しているケースであれば、専業主婦(主夫)がiDeCoに加入してもよいでしょう。
なお、配偶者がすでに確定拠出年金制度に加入している場合は、運用方法を夫婦単位で考えることが大切。iDeCoは選択した商品や運用時期などによって、運用益がマイナスになる可能性もあります。そのため夫婦で同じ運用方法を選択すると危険。リスク分散の観点から、選ぶ金融商品の種類・受け取り時期などを夫婦でよく相談して決めるようにしましょう。
iDeCoを運用する目的は、主に老後資金でしょう。そのため、夫婦の場合は老後のライフプランを一緒に考えながら、目標額や受給時期を考えることも重要です。
収入が多い人は所得控除で掛金拠出時の節税額が多い一方、退職金や公的年金も多くなりがち。iDeCo受給時は、公的年金や退職金と同じ税金の控除枠を使うため、iDeCoの受給分に使う余地がなく、ほとんど節税できないこともあり得ます。
しかし、所得が少ない人はもともと退職金がなく、公的年金も少ない場合が多いため、iDeCo受給にあたり税金の控除枠をフル活用できることも。
夫婦なら、所得の多少にかかわらず2人でiDeCoを利用して、目標額に向けて受給時期や受給時の控除枠をトータルで考えると上手に資産形成ができるでしょう。
会社員や公務員など厚生年金に加入する第2号被保険者が無職になった場合は、iDeCoの加入区分を変更する必要があります。選択した運営管理機関に加入者被保険者種別変更届を提出して、配偶者に扶養されない場合は第1号被保険者に、配偶者に扶養される場合は第3号被保険者に変更しましょう。
なお、無職になったからといってiDeCoの解約はできないため、注意してください。ただし、掛金の変更や積立の停止は可能。毎月の掛金は最低5,000円からで、加入者掛金額変更届を提出することで変更できます。
積立を停止したい場合は、加入者資格喪失届を提出します。加入者資格喪失届を提出すると加入者資格がなくなり、すでに積み立てられている資産の運用のみを行う運用指図者となります。一旦運用指図者となったとしても、iDeCoの再開はいつでも可能です。
以下の記事では、iDecoのおすすめの金融機関・商品や選び方を解説しています。iDecoについて理解が深まり、実際にどの金融機関でどの商品を運用したらよいのかを知りたいという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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