薬剤師が人間関係に悩む理由は？悩みの解消方法は？

薬剤師はミスが許されない重要な責任を負う職業であることから、職場は常に緊張感に包まれ、ピリピリとした空気になりやすいといわれています。

薬剤師の義務は、処方薬の調合・量を間違えず、薬の情報や服用方法などを正しく患者に伝えることです。処方箋の内容に疑問を感じた場合は、薬の種類や量が正しいのかどうかを医師に確かめなければなりません。

もしミスがあった場合、民事・刑事・行政3つの法的責任が問われます。患者が健康を害すれば、民事上の賠償だけでなく業務上過失致傷などの刑事罰を問われ、行政責任から薬剤師免許を取り消される事態になりかねません。

大きな責任を負うストレスから人間関係が悪くなりやすく、居心地の悪い職場になってしまうことは少なくないでしょう。

薬剤師は女性が多い職業であり、職場では女性特有のいじめが起きやすいという意見があります。厚生労働省の調べによると、令和2年12月31日時点の薬剤師の男女比は4：6です。

たとえば、新しい勤務先で女性同士のグループにうまくなじめず、嫌われて陰口をいわれたり、嫌がらせを受けたりすることもあるでしょう。また、仕事での評価、容姿、年齢、配偶者・恋人のステータスなどのさまざまな要素から嫉妬を買い、人間関係がギスギスすることも珍しくありません。

薬剤師として働くうえで、女性が多い環境ならではのトラブルに巻き込まれて人間関係に疲れてしまう人は少なくないといえます。

業務量と薬剤師の数が見合わない職場では、人間関係が悪くなりがちです。膨大な業務量に追われていると、同僚同士でギスギスした空気が生まれやすくなります。

季節や時間帯などによって、非常に多忙なタイミングがある調剤薬局は少なくありません。たとえば耳鼻科の近くにある調剤薬局は、冬の終わりから春にかけて花粉症の患者が急増し、薬の用意や受け渡しに追われることもあります。

ミスが許されない仕事であるうえに、薬剤師の数に対して業務量が多すぎると、心の余裕がなくなって人間関係に影響することもあるでしょう。

薬剤師の業務量は、職場によって大きく差があります。就職先を探す際には、薬剤師の人数と業務量のバランスが取れているかも考慮に入れる必要があるでしょう。

薬剤師が不足しているときに性格を考慮せず採用した結果、人間関係の問題が生じることがあります。

たとえば採用した薬剤師が協調性に欠けていたり、上司や同僚の指摘を素直に受け入れられない性格だったりすれば、よほどしっかり対策をしない限り職場の雰囲気は悪くなるでしょう。

薬剤師の数は年々増えており、深刻な人材不足というわけではありません。しかし、地域によっては薬剤師が足りず、採用時に人柄を考慮する余裕がない職場もあります。

薬剤師が足りない地域は就職先に困ることは少ないですが、人手不足で性格に難がある人が雇われている可能性は考慮したほうがいいでしょう。

調剤薬局は基本的に働く人の数が少なく、限られたメンバーが室内で長時間一緒にいることも多い職場です。そのため個人同士の関係が密になり、相手の嫌な部分が目につきやすくなります。

業務で関わる時間が長いため、意図的に距離を置くことも難しいでしょう。気の合わない人がいても関わらないわけにはいかず、対人面でのストレスがたまりがちです。

また、調剤薬局で働く事務スタッフと仲が悪くなるケースも少なくありません。調剤薬局事務の給与は、ほかの職種と比べてやや低い傾向があります。それに対し、薬剤師の給与は平均よりも水準が高いため、同じ職場の事務スタッフが待遇の差に不満を抱くことも。

調剤薬局は薬剤師の代表的な就業先ですが、閉鎖的な空間が人間関係に悪影響を与える可能性は考慮に入れておきましょう。

病院勤務で人間関係に悩みやすい理由として、立場や職業の違う医師・看護師と関わることが多い点が挙げられます。

病院に勤務する薬剤師は病院薬剤師と呼ばれ、医師や看護師と連携して患者の治療をサポートするのが特徴です。病院薬剤師としてチーム医療に携わることで、やりがいをもって働けるでしょう。

一方で、チーム医療の現場では違う職種の人と関わることが多く、相手の立場を気遣うことに疲れてしまったり、意見の相違から人間関係が気まずくなったりすることもあります。

病院は転勤や異動が少ないため、人間関係が悪化した場合に環境を変える手段が少ない点もデメリットです。

ドラッグストアは働く人数が多いことからグループ化しやすく、派閥が生まれて対立が起きることもあるでしょう。

ドラッグストアでは薬剤師だけでなく、販売スタッフや美容部員などさまざまな職種の人が勤務しています。職種による価値観や考え方の違いが対立を招くことは珍しくありません。

職種の違いに加えて、アルバイト・パート・社員など働き方もさまざまです。立場や勤続年数によって上下関係が生まれやすく、強い立場の人から嫌われて働きづらくなることもあるでしょう。

スタッフが多い職場では密な人間関係は生まれにくいと考えられますが、反対に大人数特有の悩みが生まれやすい点には注意が必要です。

製薬企業のMRも人間関係の悩みが起きやすい職種だとされています。成績を上げるためには、自分の感情や考えに反する対応をしなければならないことが多いためです。

MRは医療機関や調剤薬局に自社製品の営業を行うとともに、医療情報の提供・収集を行います。無資格でも就業可能ですが、医薬品の専門知識を有する薬剤師が就くことも多い職業です。

MRの仕事で成果を上げるためには、医師・看護師・薬剤師などさまざまな職業の人と良好な関係を築かなければなりません。人間関係を円滑にするために自分の意見をおさえて相手に合わせる場面が多く、ストレスや悩みがたまることもあるでしょう。

平均よりも年収が高いので高年収を目指す人にはおすすめの職業ですが、仕事のためとはいえ自分を偽ることに抵抗を感じる場合は、就職後に人間関係の悩みを抱える可能性が高いといえます。

苦手な人が相手でも、挨拶などのコミュニケーションをおそろかにしないように心がけましょう。コミュニケーションを取ることで苦手意識が薄れ、人間関係の改善につながることがあるからです。

相手に対して苦手意識があると、無意識のうちに表情・声・態度に出てしまい、相手に伝わることがあります。苦手意識が態度にあらわれると、お互いにコミュニケーションが取りづらい状況が続くでしょう。

苦手意識をなくすためには、相手との距離を縮める努力が必要といえます。たとえば、ありがとうなどのポジティブな言葉を積極的にかける、業務以外のことで話しかけてみるなどが有効です。

言葉を交わす機会を増やすことで、今まで知らなかった相手の長所が見つかることもあるでしょう。また、相手からも好印象を持ってもらいやすくなり、関係の改善につながることもあります。

話しかける話題が見つからない場合でも、まずは挨拶を欠かさず行うことからはじめてみてください。

人間関係に悩んでいるときは、周りに相談することが大切です。心に抱えている悩みを話すだけで、気持ちが楽になることもあるでしょう。

悩みを相談するなら、職場の同僚や友達、家族がおすすめです。話に共感してもらったり、これまでの苦労をねぎらってもらったりすることで、自分には味方になってくれる人がいると実感できるでしょう。

また、自分にはない視点から人間関係を改善するアドバイスがもらえることもあります。職場の人間関係に悩んだときは1人で抱え込まず、信頼できる相手に悩みを打ち明けてみてください。

職場の人間関係に悩んでいるなら、上司に相談してみるとよいでしょう。仕事内容などを調整してもらえれば、苦手な人との接触を減らせることもあります。

どうしても苦手な相手とうまくコミュニケーションが取れなかったり、自分の力では修復不可能なほど関係が悪化してしまったりしたときは、これ以上ストレスをためないためにも相手と距離を取ることが大切です。

上司に悩みを打ち明ければ、悩みを改善できるように配慮してもらえる可能性があります。当事者同士での問題解決が難しいと感じたら、思い切って上司に相談してみましょう。

人間関係に疲れたときは、職場内だけの関係だとドライに考えることも大切です。良好な人間関係を築くことも重要ですが、職場に行く1番の目的はあくまで仕事だと割り切りましょう。

嫌い・苦手などの感情は極力表に出さず、自分に与えられた役割をこなすことに集中すると、人間関係の悩み以外に目を向けられます。

苦手な相手とは、業務上必要なことを淡々と話すのみにとどめましょう。相手によって態度を変えることも極力避け、ビジネスライクな態度を心がけることがコツです。

人間関係の修復が見込めないと感じたら、異動を視野に入れることもおすすめです。新しい職場にうつることで現在の環境から抜け出せるため、今抱えている人間関係の悩みから解放されるでしょう。

異動は転勤と違って業務内容が変わらないケースが多く、環境の変化による負担が抑えられるのもポイントです。

人間関係の改善に取り組んでも努力が実らなかったり、職場のストレスが抱えきれないほど大きくなってしまったりしたら、その職場にとどまるメリットはあまりないといえます。

異動して人間関係をリセットし、新たな気持ちでスタートを切ることも選択肢に入れてみてください。