自衛隊で薬剤師として働く薬剤官。非常に人数の少ない職種ですが、薬剤官は薬剤師の資格を活かしつつ、国を守る自衛官としても働ける、やりがいのある仕事です。薬剤官として働くことに興味は持っているものの、具体的な業務内容やどうすればなれるのかなどがわからない人も多いはず。
今回は、あまり知られていない薬剤官の仕事内容や年収、必要なスキルについて紹介します。薬剤官になるための方法も紹介するので、就職先や転職先として薬剤官を候補に入れている人は、ぜひ参考にしてください。
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薬剤官とは、自衛隊に所属する薬剤師のことです。薬剤師としての業務はもちろん、自衛隊としての災害派遣や国際平和協力活動なども業務内容に入ります。
普通の薬剤師として勤務するためには、薬剤師の資格を取得すれば就職が可能ですが、薬剤官は薬剤科幹部候補生として、自衛隊への入隊が必要です。入隊後、衛生分野の幹部自衛官になると、薬剤官として勤務できます。
薬剤官の職場は自衛隊病院や駐屯地など多岐にわたり、さまざまな配属先があるのが特徴です。
薬剤官の仕事は大きく分けて4つあり、それぞれ役割が異なります。薬剤官の仕事内容がまだわからない人や興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
薬剤官には、自衛隊の衛生隊員として医薬品を管理する仕事があります。仕事内容は通常の医薬品の管理だけでなく、災害時には自衛隊に防護服やマスクを調達したり、衛生資材が滞らないよう、補給し続けたりすることも重要な業務です。
寄港地で補給作業を行う場合は、水質検査や食料品の衛生管理を行い、慣れない環境で自衛隊員が体調を崩さないよう業務にあたります。
薬剤官には、自衛隊病院の薬局や、駐屯地の医務室で行う薬剤師業務もあります。調剤や服薬指導、医薬品や衛生資材の調達・管理など、通常の薬剤師業務とほとんど変わりません。
基本的には薬局や医務室での業務ですが、海上自衛隊に所属したら、船内や寄港地で薬剤師業務を行う場合があります。
患者は、自衛隊員とその家族が主です。いくつかの自衛隊病院では、一般の患者への診察も行っているため、普通の薬剤師と変わらないと感じる人も多いでしょう。
ほかにも、自衛隊員の身体検査や健康診断を行うのも、薬剤官の仕事です。自衛隊員の健康管理全般を担っています。
薬剤官には、幹部自衛官として衛生部隊の指揮や、指揮官の補佐をする仕事もあります。薬剤師より自衛隊としての要素が強い業務です。主に、被災地での活動や国際貢献活動において、指揮をとったり補佐をしたりすることがあります。
衛生行政機関や陸上自衛隊学校での教員業務も、薬剤官の仕事として挙げられます。衛生行政全般における業務、自衛隊学校での教員だけでなく、研究員や企画室長、総務部長など学校の運営全般や管理面の業務も薬剤官の仕事です。
気になる薬剤官の平均年収を、勤務1年目と2年目以降にわけて紹介します。就職や転職先を決めるとき、年収を重視する人はぜひ参考にしてください。
薬剤官の勤務1年目の年収は、400万円以上が想定されます。
令和5年度の自衛隊募集要項によると、薬剤科の大学、もしくは大学院を卒業した場合、251,300円が初任給です。この額を12か月もらうと年収は300万円ほどに。
さらに、自衛隊帯広地方協力本部によると、幹部候補生のボーナスは120万円前後なので、合わせると400万円を超える計算になります。
ただし、隊員の階級や区分、職務によって給与は変動するので、あくまで目安として考えておきましょう。
2年目以降の平均年収は、650万円ほどといわれています。一般の薬剤師の平均年収が500~600万円ほどといわれているので、薬剤官のほうが高い年収で働けると考えられるでしょう。
ただし、給料は隊員の階級や区分、職務によって変動します。階級次第ではさらに年収アップが見込めるかもしれません。勤務地や職種、職域に応じて、住居手当・扶養手当・航空手当・乗組手当・航海手当・地域手当などが支給される場合もあります。
薬剤官には、手厚い福利厚生があります。特別国家公務員としての地位が確立しているため、ほかの企業と比べると福利厚生が手厚いと感じる人が多いでしょう。
令和5年度の自衛隊募集要項によると、宿泊施設・野球場・テニスコートなどの防衛省共済組合施設、その他提携している保養施設、会員制リゾート、会員制スポーツクラブなどが全国にあり、割安で利用できます。
ほかにも、住宅手当や扶養手当、駐屯地の敷地内に住んだ場合の家賃・光熱費・食費が無料など、さまざまな種類の福利厚生を受けることが可能です。
薬剤官になるには、通常の薬剤師とは違い、2つの試験に合格する必要があります。試験の概要についても紹介するので、薬剤官になるためのステップがわからない人は参考にしてください。
薬剤官になるには、従来の薬剤師と同様に薬剤師の国家資格が必要です。薬剤官は薬剤師としての業務を行うため、薬剤師の資格がないと業務を行えません。
薬剤師の国家資格は、高校卒業後に6年制の薬学部のある大学や薬科大学へ進学し、必要な教育課程を履修して試験に合格すれば取得が可能です。
大学へ入学後、薬学に関する専門的な学習に加え、一般教養などの学習も行って卒業資格を得ることで、薬剤師国家試験の受験資格が得られます。
薬剤官になるには、薬剤師の資格取得後、さらに自衛隊幹部候補生採用試験に合格する必要があります。薬剤科の幹部候補生採用試験に合格しなければ、薬剤師の資格を持っていても薬剤官として勤務はできません。
自衛隊幹部候補生採用試験は、2次試験まであります。筆記試験である1次試験を突破すると、小論文試験・口述試験・身体検査を行う2次試験に進む流れです。
身体検査は身長・肺活量・視力・色覚・聴覚などで細かい基準があると考えられ、自衛官として役割を全うできる身体機能が必要だといわれています。
薬剤師の国家試験を突破し、優秀な成績で自衛隊幹部候補生採用試験の筆記試験に合格しても、身体検査で不合格になる場合もあると考えておきましょう。また、薬剤官は20歳以上28歳未満までの人しか応募ができない点も覚えておきたいポイントです。
自衛隊で薬剤師が働きたい場合は、先述した薬剤官ではなく、防衛技官として働くことも可能です。防衛技官は、自衛隊病院や基地の医務室などで欠員が出た場合に募集がかけられ、現地で薬剤師として勤務します。
応募資格があるのは、日本国籍を有していて薬剤師免許を取得している人です。法律で防衛省の職員になれないと定められている人は、応募ができません。
防衛省の職員になれないのは、禁固以上の刑に処せられている人や執行中の人、懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年経過していない人などが挙げられます。
なお、防衛技官の募集は多くなく、若干名の採用しかないといわれているため、希望する人はこまめに情報をチェックすることが重要です。
薬剤官になりたい場合は、まず自衛隊がどんな組織なのか、どんな働き方ができるのかをリサーチしましょう。受験のときに陸・海・空から1つ選んで応募するので、それぞれの特徴を理解しておく必要があります。幹部自衛官を志す人の相談にのってくれる、カレッジリクルータへの相談がおすすめです。
自衛隊への理解が深まったら、薬剤科幹部候補生の試験に応募しましょう。応募の際は志願票と自衛隊受験票を提出します。募集は毎年3月〜5月頃に出るといわれているので、募集要項をよく読み、提出に不備がないよう注意してください。
受験票が受理されたら、薬剤科幹部候補生の試験を受けます。1次試験と2次試験両方を突破すれば、自衛隊に入隊が可能です。
入隊後は、薬剤科幹部候補生学校で幹部候補生としての勉強が始まります。入隊は3月下旬頃なので、それまでに大学の薬学部を卒業し薬剤師国家試験に合格しておくようにしましょう。
薬剤科幹部候補生学校では、約1年間の教育期間があります。幹部としての資質を養い、陸上・海上・航空の特色を活かした教育を受け、一人前の幹部として役立てるような人材教育を受けることが可能です。
薬剤科幹部候補生学校を修了後は、約1年間の薬剤実務研修があるといわれています。その研修が終了してようやく各自衛隊に所属し、薬剤官としての業務が始まります。
なお、詳細は年度や状況によって異なる場合があるので、必ずその時点での最新情報を細かくチェックしてから応募に挑んでください。
次に、薬剤官に必要なスキルを紹介します。薬剤官が自分に合っているかわからない人は、参考にしてみてください。
薬剤官には、現場を指揮する的確な判断力が必要です。幹部自衛官として、常に冷静で的確な指示を出し、その場をまとめあげる力を発揮することが必要でしょう。
災害が起こったときはもちろんですが、それ以外でも全国の自衛隊病院や駐屯地に必要な量の医薬品を調達しなければなりません。使用期限や衛生状態を確認し補給し続ける作業は、必要な場所に必要な量を提供する正しい判断力が重要です。
薬剤官は、どんな場所や状況でも、臨機応変に動ける対応力が必要です。衛生部隊を指揮する薬剤官は、災害が起きても衛生機能が麻痺しないよう、切れ目ない医療を提供しなければなりません。
国際平和協力活動のニーズも高まっており、自衛隊の任務が多様化しているため、現場での対応力が非常に重要といえます。
薬剤官は、自衛隊員の健康を常に管理し続ける責任感が必要です。通常の薬剤師は薬剤に関する業務がメインですが、薬剤官は異なります。薬剤師の仕事はもちろん、衛生部隊として自衛隊員の健康を守らなければなりません。
さまざまな場所で活動する自衛隊員には、健康診断や身体検査が不可欠です。国を守る自衛隊員が任務を全うするために、健康面や衛生環境を管理する責任感が重要といえます。
薬剤官として働く最大のメリットは、自衛隊員としてさまざまな経験が積めることです。災害時の復興支援や国の防衛任務など、普通の薬剤師では経験できない業務に当たれます。
海外平和協力活動などの海外任務に参加できるのも、薬剤官の特権です。国内の活動にとどまらず、活動拠点が状況や任務によって変化するのは、薬剤師としてのスキルアップにも繋がります。
記事を読んで、薬剤官になるのは難しそうだと感じた人は、転職エージェントの利用を検討してみてください。転職エージェントを利用すれば、薬剤官以外に自分に向いている仕事や合っている職場などを提案してくれるほか、あらゆる相談にのってもらうことも可能です。
薬剤師として働くうえでの知識に長けたキャリアアドバイザーからさまざまなアドバイスがもらえるので、きっと理想の転職先探しに役立つはず。気になる人は、以下の記事をチェックしてみてください。
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