安定した収入やインフレに強い点が魅力の不動産投資。興味はあるけれど、何から始めたらいいかわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、初心者向けに不動産投資について詳しく解説します。不動産投資のメリットや始め方をわかりやすく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
不動産投資とは土地や建物などの不動産を購入し、運用して家賃収入などの利益を上げる投資方法です。投資先はマンションやアパートの棟、マンションのワンルーム、戸建て、駐車場などの種類があります。
株やFXなどの投資と比べるとリスクが低く、長期的に安定した収入を得やすい点が特徴です。一般的に、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンに分類されます。また、節税効果も期待できるため、サラリーマンとして働きながら不動産投資を始める人も多いです。
不動産投資で利益を出す方法は、インカムゲインとキャピタルゲインの2つに分類されます。
インカムゲインとは、購入した不動産をほかの人に貸し出すことで家賃収入を得る方法です。マンション・アパート・駐車場などを貸し出すことで、毎月の家賃収入が得られます。家賃は頻繁に変わるものではないため収入が安定しやすく、ほかの金融商品に比べて景気変動の影響を受けづらい点が特徴です。
一方、キャピタルゲインとは、不動産を購入時よりも高い金額で売却して差益をを得る方法です。たとえば、2,000万円で購入した不動産を2,200万円で売却すれば、200万円の差益が得られます。
不動産の価値が上昇を続けていたバブル期はキャピタルゲインを狙う不動産投資が主流でしたが、現在の不動産投資はインカムゲインが主流です。
不動産投資には安定収入や節税など複数のメリットがあります。4つのメリットについて詳しくみていきましょう。
不動産投資では、金融機関から資金を借入して投資できます。一般的に、株やFXを目的とした借入は難しいですが、不動産投資なら借入した資金を使って投資できるので、資金を増やして収益性を高めることが可能です。
たとえば、金融機関から2,000万円借入して購入した不動産を利回り5%で運用すると、年間100万円の家賃収入を得られます。
不動産投資では毎月安定した収入が得られます。不動産は、株や通貨のような毎日の価格変動は考えにくく、入居者が確保できれば退去まで2〜4年程度の安定した家賃収入が見込めるでしょう。
借入したローンを完済すれば、家賃収入のほとんどが利益につながるため、より収益性が高まります。若いうちに不動産投資を始めれば、老後の資金として備えることも可能です。
不動産投資は所得税と住民税の節税に役立ちます。これは減価償却で作った会計上の赤字をほかの所得と損益通算できるためです。
減価償却とは、設備投資など何年も使えるモノの取得費を一定期間に配分する会計処理のこと。たとえば、5,000万円で取得したアパートを10年間にわけて減価償却する場合、毎年500万円を減価償却費として赤字計上できます。利益(家賃収入)が700万円、経費が300万円だった場合、会計上の収支は「利益700万円-経費300万円-減価償却500万円=-100万円」で赤字です。
確定申告をする際、不動産投資の税制上の扱いは不動産所得になります。先ほどの例の投資家が給与所得800万円の場合、損益通算すると課税対象額は、「給与所得800万円-不動産所得100万円=700万円」です。課税対象となる本来の額は給与所得800万円ですが、損益通算することで700万円が課税対象になるので、そのぶん税金も抑えられます。
なお、減価償却を利用した節税は抜け道などではなく、税制上認められた方法なので安心してください。
不動産投資は実物資産であるため、インフレに強く価格が落ちづらい点がメリットです。
現金はインフレ時に価値が目減りしてしまいます。例えば、300万円の貯金があれば250万円の車を購入できますが、インフレによって車が350万円に値上がりすると300万円では購入できません。この場合、相対的に現金の価値は目減りしています。
一方、不動産はインフレに伴って価格が上昇していくのが一般的です。そのため、インフレに強い不動産は長期保有する資産として価値があるといえるでしょう。
不動産投資には、不動産ならではリスクがつきものです。不動産投資を始める前に、さまざまなリスクを理解しておきましょう。
不動産投資は家賃収入をメインとしているので、空室や家賃滞納による赤字リスクがあります。空室がある場合は、リフォームをして部屋の価値を高めたり、広告を打って入居者を募集したりすると効果的です。
また、サブリース契約を利用すると空室や家賃滞納のリスクを避けられます。サブリース契約とは、入居者の有無に関わらず保証賃料が得られる契約のことです。サブリース契約の保証賃料は家賃よりも安いため、家賃を最大化できない点がデメリットですが、安定した収入が得られるので安心して運用できます。
実物資産である不動産は、災害リスクが避けられません。火災保険や地震保険に加入することで災害に備えるのが一般的ですが、被害の状況によっては保険金では足りず、自己資金が必要になるケースも考えられます。
災害リスクへの備えとして、想定される損害額をカバーできる火災保険・地震保険に加入することが重要です。行政のハザードマップなどを利用し、起こり得る自然災害を見越して補償をつけるといいでしょう。
不動産投資ローンを組む場合、金利上昇リスクにも注意が必要です。
金利上昇リスクはローンの借入期間を短くすることで回避できます。借入期間が長いほど金利上昇リスクに晒される期間が長くなるので、収支のバランスを考えながらなるべく短期間に設定するといいでしょう。
総返済額が増える可能性がある変動型金利を避け、固定金利でローンを組むことも金利上昇リスク対策になります。ただし、不動産投資ローンを固定金利で提供している金融機関は少なく、変動型よりも固定型のほうが金利が高い傾向にある点に注意が必要です。
不動産価格の下落にも注意してください。家賃収入を目的に購入した不動産であっても、事情や考え方が変わって売却することもあるでしょう。不動産は経年劣化などにより価格が下がっていくものなので、売却時に思うような利益が出ない可能性もあります。
価格下落の対策として、需要が高い好立地の物件を購入することがおすすめです。立地が良い物件は将来的に価格が上がる可能性もあります。
また、建物の維持管理も重要です。日頃から修繕やメンテナンスをしっかり行うことで、資産価値をなるべく落とさないように心がけましょう。
不動産の売却では、即現金化できないリスクにも注意が必要です。不動産の売却には査定・媒介契約・内覧・決済・引き渡しなど非常に手間が多く、平均で3〜6か月かかるといわれています。
不動産の売却にかかる時間は、立地や建物の状態が大きく影響するもの。そのため、立地の良さと適切なメンテナンスを意識すれば、売りたいときに早く売れる可能性が高まるでしょう。なかなか売れない場合は、売却価格を下げることもひとつの手です。
不動産投資は数ある投資のなかでも多額の資金が必要であるため、失敗は避けたいところ。初心者によくある失敗例を4つ紹介します。
資金に余裕がない状況で不動産投資を始めてしまうと、いずれ資金が不足して運用が行き詰まる可能性があります。不動産投資は、購入費以外にも仲介手数料・登記費用・維持管理費などさまざまな費用がかかるものです。
自己資金が足りない場合、物件の購入費用をすべてローンで組むフルローンもありますが、銀行との付き合いや厚い信頼がないかぎり難しいでしょう。また、ローンを利用して物件を購入した場合、運用の問題から物件を売却したくなっても、ローン残高が支払えなければ売却できないので注意が必要です。
不動産投資の初心者は、営業担当者にいわれるがまま物件を買ってしまうリスクがあります。不動産会社は知識のない初心者に売りたい物件を勧めてくることがあるので、注意しなければなりません。
営業担当者にいわれるがまま物件を決めたことによって、立地が悪く入居者が集まらなかったり、管理や修繕に多額の費用がかかったりする失敗例が実際に起きています。
疑問点・不明点は不動産会社に必ず質問して確認しましょう。
不動産業界には詐欺を行っている悪質な会社があるので、十分に注意しなければなりません。
主な手口は、手付金を払ったあと業者が音信不通になる手付金詐欺、サクラを入居させて満室を装う入居状況詐欺、購入代金を支払ったのにほかの所有者がいる二重譲渡詐欺、恋愛感情につけこんで物件を購入させるデート商法詐欺、実際には存在しない海外の物件を買わされる海外不動産投資詐欺などがあります。
悪徳業者に当たらないためにも、不動産会社選びは複数をよく比較検討することが大事です。以下の記事では、不動産会社のおすすめ人気ランキングを紹介しています。不動産会社の選び方などを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
不動産投資を始めたことに満足してメンテナンスを怠ることも初心者がやりがちな失敗例です。メンテナンスを怠ると資産価値が下がるうえ、入居希望者も減ってしまいます。
株やFXでは投資家が事業に影響を与えることはありませんが、不動産投資は事業としての側面もあるため、投資家によるある程度コントロールが可能です。具体例として、入居率が下がったときの家賃設定、リフォーム、室内設備の充実などが挙げられます。
管理会社に一任せず投資家がオーナーとして介入することで、安定した運用を実現できるでしょう。
ここからは、初心者でもわかるように不動産投資の始め方を解説します。投資の規模が大きい不動産投資は事前の段取りが重要です。
実際に不動産投資を始める前に、不動産投資に関わる勉強や情報収集に努めましょう。不動産に関する正確な知識がないと正しい判断ができなかったり、意味を誤解したりする危険性があります。
勉強や情報収集は、webサイトやSNSで大まかに把握してから不動産のプロに学ぶといった流れがおすすめです。いきなり専門的な知識を学ぼうとしても、なかなか頭に入らないので、インターネット上でざっくりと予備知識を頭に入れてから、プロの書籍やセミナーで知識を深めていくことをおすすめします。
不動産投資の勉強や情報収集がある程度済んだら、目標や投資金額を決めます。ただ漠然と不動産投資を始めるよりも、目標に向かって緻密に計画を立てて実行するほうが運用もうまくいくはずです。
目標を立てるときは「10年後に300万円の利益を上げる」「月に20万円以上の家賃収入を得る」など具体的な目標を掲げることをおすすめします。
また、投資金額(自己資金)は物件価格の20〜30%が目安です。3,000万円のアパートを購入するなら、最低でも「3,000万円×20%=600万円」の自己資金が必要になります。
目標と資金が決まったら、実際に投資する土地や物件を探します。不動産投資では物件選びが鍵を握るといっても過言ではありません。
物件選びでは、新築や中古、1棟や区分、都心や郊外などさまざまな要素があります。細かい要素を精査するため、情報収集だけでなく資料請求にも力を入れるといいでしょう。
ただし、数字や情報がすべてではなく、実際の立地や雰囲気を感じることも大切です。できるかぎり現地に足を運ぶことをおすすめします。
購入する物件が決まったら、次は不動産投資ローンの審査を受けます。不動産投資には多額の資金が必要と思われがちですが、全額を自己資金で支払う人はかなり少なく、「20〜30%の自己資金+ローン」が一般的です。
頭金の額や返済期間によって毎月のローン返済額は変わり、家賃収入にも影響します。自分の余剰資金や現在の収入を考慮し、どれくらいのローンを組めるのか早めに確認しておくことが大切です。
ローンの審査に通ったあとは、実際に不動産を購入します。不動産投資用の物件を購入するには、さまざまな書類や手続きが必要です。
不動産会社を経由して仲介で購入する場合、まずは物件の売主に買付申込書を提出して売買契約を結びます。次にローンを組む金融機関と金銭消費貸借契約を結び、最後に物件の引き渡しと決済をするのが大まかな流れです。
上記のほかにも実際には細かな手続きが数多くあります。間違えないように一つひとつ丁寧に進めることが大切です。
不動産を購入する際は、維持管理を管理会社に管理を委託するか自分で管理するか決めておきます。本業として始めるなら自分で管理もできますが、副業として始めるのであれば管理会社に任せるほうがいいでしょう。
管理会社に委託すると清掃や賃料の回収などの手間がかからない点がメリットですが、委託手数料が発生します。事前に委託手数料を踏まえた計画を立てておくとともに、信頼できる不動産会社を見つけておくと安心です。
管理方法が決まったあとは、不動産を運用していきます。空室があれば広告を打って入居者を募集したり、リフォームで魅力的な部屋にしたりして安定した家賃収入を目指しましょう。
管理会社に委託している場合は最低限の管理はしてもらえますが、自発的なリフォームなどはオーナーが積極的に介入する必要があります。
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