寄付金の一部が住民税から控除される制度、ふるさと納税。控除を受けるためにふるさと納税をしたはずなのに、思ったよりも住民税が安くならず戸惑っている人もいるのではないでしょうか?
今回は、ふるさと納税をしたのに住民税が安くならない場合の理由や対処法を解説します。ミスを繰り返さないために、住民税の控除額を計算する方法も紹介するので、ふるさと納税で失敗したくない人は参考にしてくださいね。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
ふるさと納税で住民税が安くならなかった場合、申請ミスや控除の仕組みの理解不足が原因と考えられます。ふるさと納税で住民税が安くならない場合によくある理由を解説しますので、自分にあてはまるものがないか、チェックしてみてください。
せっかくふるさと納税をしても、確定申告をし忘れていると住民税の控除は受けられません。次に説明するワンストップ特例制度を利用する場合を除いて、ふるさと納税で住民税の控除を受けるためには確定申告が必要です
会社から年末調整を受けている給与所得者や年間所得が48万円以下の人、副収入が20万円未満の人、公的年金の受給額が400万円以下かつ源泉徴収を受けている人は、通常は確定申告を必要としません。
ただし、ふるさと納税で控除を受けるためには、本来は確定申告が不要な人も2月16日〜3月15日までに申告が必要です。この期間内に申告しないと、寄附をしても控除を受けられないので注意しましょう。
本来確定申告が必要な人や、ふるさと納税先の寄附先が6自治体以上の人は制度の対象外なので、ワンストップ特例制度で申請しても住民税は安くなりません。
そもそも自分がワンストップ特例制度の対象者なのか、事前に確認することが大切です。
住宅ローン控除・医療費控除などの控除を併用する場合、想定よりも住民税が安くならないことがあります。控除ロスを減らすために、以下の説明を参考にして、事前にトータルな控除額をシミュレーションしましょう。
住宅ローン減税の控除額が大きい場合に、ふるさと納税の寄附控除額を控除しきれない場合があります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入すると、入居時から最大13年間にわたり、年末のローン残高の0.7%が所得税と住民税から控除される制度です。ふるさと納税と併用すると、ふるさと納税の所得税控除を受けてから、住宅ローン控除が所得税・住民税という順番で適用されます
もともと納めるべき住民税の額を超えた控除は受けられないので、住宅ローン減税の控除額が大きい場合には、ふるさと納税の控除枠が残らない場合があります。
医療費控除と併用する場合にも、ふるさと納税の寄附控除を十分に受けられない場合があります。
医療費控除とは、年間の医療費が10万円(所得の合計が200万円未満の人は総所得金額の5%)を超えると、所得税の控除が受けられる制度です。
医療費控除を受けると課税所得が減るので住民税も減額され、ふるさと納税の控除限度額も減ってしまうので、寄付金の自己負担額が増えてしまいます。これによって想定したほどの控除が受けられない場合があるので気をつけましょう。
控除の上限額を超えて寄付すると、超過分は控除を受けられません。ふるさと納税は控除限度額が決まっているため、限度額を超過した分は自己負担になります。
ふるさと納税の控除限度額は、年収や家族構成によって決まる仕組みです。たとえば年収400万円の場合、独身なら42,000円、共働きで高校生の子どもが1人いるなら33,000円が控除の上限になり、これ以上は控除されません。
ふるさと納税の限度額について、詳しくは以下のコンテンツを参考にしてください。
ふるさと納税をする人の名義を間違えてしまうと、住民税は安くなりません。ふるさと納税は世帯単位で利用できる制度ではないため、住民税の控除を受ける個人の名義で寄附する必要があります。
合わせて注意したいのが支払い時の名義。たとえば、ふるさと納税をクレジットカード払いにする際には、原則として納税者とクレジットカードの名義が一致しなければなりません。同一でない場合は、控除申請で必要な「寄付金受領証明書」が無効になり、控除が受けられなくなるので注意が必要です。
控除を受けるのが夫であれば、夫名義のクレジットカードで決済する必要があります。妻が代理で寄附を行い、誤って自分名義のクレジットカードで決済してしまうと、控除が受けられなくなります。アプリ決済などで支払う場合も、アカウントの名義が控除を受ける人と同一であることが必要なので注意しましょう。
ふるさと納税をしたのに住民税が安くならなかった場合、確定申告をしたり更生の請求をしたりすることで控除を受けられる可能性があります。ふるさと納税に失敗した人は、住民税が安くならない原因ごとに対処法を確認しましょう。
確定申告を忘れてしまった場合や、ワンストップ特例制度でミスをしたときは確定申告を行いましょう。ワンストップ特例制度の期限を過ぎても、確定申告をすれば控除を受けられるので安心してください。
ワンストップ特例制度の申請期限は寄附の翌年1月10日までですが、確定申告の期限は2月16日から3月15日までです。期限内に確定申告を行えば、ワンストップ特例制度の申請を忘れたり不備があった人も控除の対象になります。
また、ふるさと納税は寄附をした翌年から5年間申告できるので、確定申告を忘れていた人も気が付いたら速やかに手続きしましょう。
確定申告で不備があり控除を受けられなかった人は、更生の請求を行いましょう。更生の請求は「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」といい、申告した税額が実際より多かったときに正しい額へ訂正することを求める手続きです。
手続きをする際は、所定の申請書に記載して、本人確認書類のコピーとともに納税地の所轄税務署へ提出します。書類は国税庁の「所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」のページからダウンロードするか、同庁の「国税庁 確定申告書等作成コーナー」で作成しましょう。
更生の請求ができるのは、法定申告期限から5年以内まで。5年を超えると、請求できなくなるので注意しましょう。
ほかの控除制度と併用すると住民税が安くならない人は、ワンストップ特例制度の利用がおすすめです。ワンストップ特例制度を利用すれば、控除ロスを防げます。
たとえば確定申告を利用すると、ふるさと納税・住宅ローン控除の両方が所得税と住民税の控除対象に。ふるさと納税の所得税控除分を先に計算してから、住宅ローン控除が適用され、所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除額が住民税で控除されます。
一方、ワンストップ特例制度を利用した場合、ふるさと納税による控除は住民税のみが対象です。住宅ローン控除による所得税額の影響を受けないので、控除ロスを起こさずに両方の控除を併用できます。
ただし住宅ローン減税の初回申請時と医療費控除を受ける際は確定申告が必須なので、ワンストップ特例制度の対象外になる点には注意しましょう。
住宅ローンや医療控除との併用やワンストップ特例制度について、詳しくは以下のコンテンツを参考にしてください。
納税者の名義を間違えてしまった場合は、ふるさと納税した自治体に連絡してください。確定申告・ワンストップ特例制度のどちらを利用した人も、名義変更の連絡をすれば変更手続きができる可能性があります。
確定申告をする人は、寄附先の自治体へ名義変更の連絡をしてから確定申告時に変更後の氏名・住所で申請するか、所轄税務署で更生の請求をしましょう。
なお、名義の間違いにより控除されなかった住民税は還付されませんが、翌年以降の住民税は安くなるので安心してください。
ミスを繰り返さないためには、住民税の控除額の計算方法を把握することが大切です。正確に住民税の控除額を把握できれば、ほかの控除制度と併用したことによる控除ロスや、上限額を超えて寄付するといったミスを防げます。
住民税の控除額の計算式は、基本分と特例分の2種類。まずは、「(ふるさと納税額 - 2,000円)×10%」の計算式で基本分を求めます。総所得金額などの30%が、控除額の上限です。
特例分は、「(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)」で計算します。基本分に特例分を加えた金額が、住民税の控除金額です。
たとえば、年収500万円の独身の人の控除上限金額は61,000円。満額まで寄付した場合、(61,000円 - 2,000円)×10%=5,900円が基本分の控除金額です。特例分は、(61,000円- 2,000円)×(100% - 基本分の10% - 所得税の税率20%)=41,300円となるので、基本分5,900円 + 特例分41,300円=47,200円が住民税の控除と計算できます。
また、特例分が住民税所得割額の20%を超えたら、「住民税所得割額(所得金額の10%)×20%」で特例分を計算しましょう。この場合、所得税や住民税の控除を合計しても「(ふるさと納税額-2,000円)」の全額控除にならないので、実質負担額が2,000円を超える点に注意してください。
たとえば年収500万円の独身なら、給与所得控除後の所得約356万円から、住民税の基礎控除43万円を引いた313万円×10%=31.3万円が住民税所得割額です。つまり31.3万円×20%=62,600円を超えたら、特例分は62,600円として計算します。
なお、所得税の税率は年収に応じて高くなるので、国税庁の「所得税の税率」を参考に計算してみてください。
ふるさと納税で住民税が安くなっているかは、住民税決定通知書で確認しましょう。住民税決定通知書は毎年5〜6月ごろに、会社員の場合は勤務先から配布され、自営業の場合は郵送で届きます。これを見れば、控除金額の確認は簡単に行えます。
市町村と道府県の「税控除額」の合計、または摘要欄の「寄付金税額控除額」をチェック。これが、ふるさと納税額から2,000円を差し引いた金額と合っている場合は、問題なく控除を受けられています。住民税決定通知書に控除額が反映されていないときは、最寄りの税務署へ問い合わせましょう。
なお、控除対象になるのは、ふるさと納税で寄附をした翌年の6月から翌々年の5月までの住民税です。あわせて覚えておきましょう。
ふるさと納税で失敗したくない人は、自分にとって使いやすいサイトを選ぶのがおすすめです。ふるさと納税サイトは数多くありますが、申請のしやすさや返礼数が異なります。
以下のコンテンツでは、人気のふるさと納税サイトをランキング形式で徹底的に比較検証しています。選び方のポイントも解説しているので、ふるさと納税をうまく活用したい人は、ぜひ自分に合ったサイトを探してみてください。
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