インターネットで、気軽にプロジェクトの実行に必要な資金を集められるクラウドファンディング。資金調達の方法として、どのようなメリットやデメリットがあるのか気になっているはずです。
そこで今回は、資金調達を検討している人に向けてクラウドファンディングのデメリットを紹介します。デメリットもよく理解して利用するのが、クラウドファンディング成功のコツです。資金調達を成功させるためにぜひ参考にしてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
クラウドファンディングは、支援をしてくれた人に対するリターンの有無や内容によって種類が分かれ、購入型と寄付型、金融型に分類されます。それぞれ異なるデメリットがあるので、特徴を理解しておくことが大切です。
購入型は支援を受けて開発した製品やサービスなどをリターンとして設定するもので、寄付型は特にモノやお金などのリターンを設定しません。金融型は集めた資金を融資や事業などで運用し、得られる収益がリターンとなるものです。
クラウドファンディングの種類ごとに、デメリットを確認していきましょう。
プロジェクトで作った物やサービスの利用権などをリターンに設定して支援者を募る、購入型クラウドファンディングのデメリットを紹介します。
購入型クラウドファンディングでは、クラウドファンディングサイトで資金を募集する掲載の申し込みをしてから、入金されるまで約3~5か月かかるのが一般的。すぐに資金を調達できないため、時間と準備資金に余裕があるプロジェクトにしか利用できません。
プロジェクトページの作成は、原稿や画像、動画の準備で1~3週間程度かかります。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」はプロジェクトの掲載まで最短即日ですが、掲載から1か月で目標金額を達成したとしても振込は翌月末です。したがって掲載から入金まで早くても3か月ほどかかります。
購入型クラウドファンディングに限らず、クラウドファンディングのプロジェクトは原則として内容の変更や中止ができません。実際にクラウドファンディングサイトのCAMPFIREやMakuakeは、プロジェクトの変更や中止は原則禁止されています。
プロジェクトの変更や中止が禁止されている理由は、プロジェクトの内容を変更してしまうと変更前と変更後で支援した人の間で不公平が生じる可能性があるからです。仮に先着10名や限定品など数量限定を謳っていた場合には、変更すると支援者からの信用を失ってしまいます。
また、もしプロジェクトの取下げが可能な場合であっても、クラウドファンディングサイトは掲載審査に労力をかけているため安易に中止してしまうことは避けましょう。
クラウドファンディングの方式は、目標金額達成で支援金を受け取ってリターンを提供するAll or Nothing方式と、少しでも支援があれば支援金を受け取ってリターンを提供するAll in方式の2つです。
All in方式では、目標金額に達せずプロジェクトの実行に十分な資金を調達できなくても、リターンを提供するか返金しなければなりません。資金が足りなければ融資や自己資金などを利用して対応する必要があります。
このような負担を避けるために、All or Nothing方式を選択するか、All in方式を選択する場合は目標金額に満たなくても確実に提供できるリターンを設定しましょう。
プロジェクトに失敗してリターンを提供できない場合は支援してくれた人に返金などの対応が必要となります。
リターンを提供せずに、支援金を受け取ることはできないので注意してください。確実に提供できるリターンを設定するようにしましょう。
アイデアを盗まれないためには、クラウドファンディングサイトに掲載する前に特許権や実用新案権、意匠権、商標権など産業財産権を取得するための出願も検討しておきましょう。
知的財産に関する相談は、公的機関である「知財総合支援窓口」に無料で相談できます。
購入型に続いて、寄付型クラウドファンディングのデメリットを紹介します。購入型のように経済的なリターンを提供する必要はありませんが、購入型よりもさらに気をつけるべきデメリットがあるので確認していきましょう。
プロジェクト自体に魅力があっても、リターンなしでは支援をしない人も少なくないでしょう。寄付型のクラウドファンディングで支援を集めるためには、支援者が応援したいと強く思えるか、実際に支援者自身もそのプロジェクトを実行したいと思えるなどの要素が必要です。
寄付型のクラウドファンディングには、資金使途の透明性が強く求められるデメリットがあります。購入型のようにリターンを目的としているのではなく、支援者はプロジェクトの内容や進捗を重要視しているからです。
仮に被災者支援のために寄付型のクラウドファンディングで資金を集めたのであれば、支援者自身が被災者の支援をしたいと強く思ったからこそ支援しています。支援したお金がどのように被災者のために役立てられているかなどを注目しているため、資金使途や活動の透明性を強く求められることを覚えておきましょう。
もし資金使途や活動状況が不明確であれば、SNSなどで炎上することもあるので注意が必要です。
支援者に対して収益をリターンとして設定する、金融型クラウドファンディングのデメリットを紹介します。
そもそも融資型クラウドファンディングで融資を受ける側は、直接インターネットで多くの人から資金を集めるわけではありません。
融資型クラウドファンディングは、貸金業者がクラウドファンディングによって投資家から資金を集め、調達した資金を原資として貸金業者が融資を行うという仕組みです。融資を受ける側は融資資金の調達に関係しないので、クラウドファンディングサイトを利用せずに、直接、貸金業者と金銭消費貸借契約を締結します。
そして融資型クラウドファンディングで集められた資金の融資は、一般的に事業向けです。購入型や寄付型のクラウドファンディングでは事業資金に限らず資金を集められる一方、融資型クラウドファンディングを利用した融資は事業資金などに限定されていることに注意しましょう。
金融型クラウドファンディングに限りませんが、プロジェクトによっては資金が集まりません。金融型はリターンがプロジェクトの収益から支払われるので、プロジェクトの実現性はもちろん収益性や安全性などにもとづいて投資や融資の判断が行われます。
資金を集めるためには、まずクラウドファンディング事業者からインターネットで広く個人に募集をしてよいかどうかの審査を経たうえで、掲載後は投資家による投資判断という2つのハードルを超えなければなりません。
募集総額に至らず募集が終了してしまったプロジェクトもあるため、資金が集まらない可能性がある点はあらかじめ把握しておきましょう。
融資型クラウドファンディングで融資を受ける場合、一般的に銀行から直接融資を受けるよりも高い金利が設定されるため、金利負担が大きくなる可能性があります。
銀行はおもに低金利の預金で融資資金を調達していますが、融資型クラウドファンディングでは預金よりもリスクが高い分、高い利回りを投資家から求められるためです。融資資金を調達するときの金利が高ければ、融資するときの金利も高くなってしまいます。
融資型クラウドファンディングで融資を受けるときは金利が高くなりがちなので、返済計画を十分に検討しましょう。
融資型クラウドファンディングでは、融資を受けるにあたって担保を要求されることがあります。
担保とは、貸したお金をきちんと回収するための仕組みのことです。仮に不動産が担保のとき、返済ができなければ不動産を売却するなどして貸したお金が回収されます。
実際に融資型クラウドファンディングを提供するCrowd Bankでは、原則としてすべての融資について融資額を上回る担保を設定していると説明しています。不動産の場合、仮に1,000万円を借りるなら売ると1,000万円以上になる不動産を担保にしなければなりません。
融資の契約内容によりますが、返済が滞った場合には担保にした不動産が売却されてしまう可能性もあるので注意しましょう。
株式型クラウドファンディングでは小口の株主が増えるため、株主に関する事務の負担が増えてしまいます。株主に関する事務とは、株主名簿の管理に代表される事務のことです。
株式投資型クラウドファンディングを提供するFUNDINNOでは、資金調達後も出資してくれた人に対する情報発信や株主の管理などについてサポートをしてくれます。
ファンド型のクラウドファンディングでは、一定期間内に成果を出す必要があります。成果が出なければ、出資してくれた人からの信用を失ってしまうからです。
ファンド型クラウドファンディングを提供するセキュリテの場合、一般的には企業の売上の一定割合を出資者に分配します。
購入型クラウドファンディングであればリターンの提供、融資型クラウドファンディングであれば返済といった義務ではないものの、売上が上がらなければ信頼を失ってしまうことがあるので注意しておきましょう。
クラウドファンディングで資金を集める側だけでなく、支援者側にもデメリットがあります。支援者の立場を理解したい人、またはクラウドファンディングで支援を考えている人はぜひ参考にしてください。
購入型や寄付型クラウドファンディングのデメリットを紹介します。
購入型クラウドファンディングでは、リターンが予定通りに届かないことがあります。製造が遅れていたり、許認可の取得が遅れていたりすることなどが原因です。
リターン自体が届かなかった例も実際にあるため、事前にリターンが届かない可能性もあることを把握しておきましょう。
クラウドファンディングサイトのCAMPFIREでは、リターンが届かない場合に支援金額の最大80%を保証するあんしん支援保証制度を実施しています。
保証制度が適用されるプロジェクトは、支援時に支援者とプロジェクトオーナーが保証(委託)約款に同意し、リターンが募集終了日から2年以内に提供されるプロジェクトです。
そのうえで、横領や倒産などでリターンを提供していないことが認められれば、保証適用の通知を受けてから3か月以内に保証金を請求できます。
保証適用には条件がありますが、購入型クラウドファンディングで支援をするなら、保証制度があるサイトを選ぶと不安を軽減できるでしょう。
購入型や寄付型クラウドファンディングでは、詐欺や持ち逃げをされてしまう可能性があります。
クラウドファンディングで支援をするときは、大手サイトをはじめとしたプロジェクト公開前の審査が充実しているクラウドファンディングサイトを選びましょう。
また、先ほど紹介したCAMPFIREの保証制度では、持ち逃げや詐欺も保証対象です。
続いて、金融型クラウドファンディングのデメリットを紹介します。
金融型クラウドファンディングは、すぐに締め切られてしまい投資ができないことがあります。事前に募集総額が設定されており、人気案件の場合はすぐに募集金額に達してしまうからです。
例えば、融資型クラウドファンディングサービスのLENDEXは募集開始から約2分で1億円を超える応募金額を集めて募集が終了してしまう案件があります。また、1分以内で募集が終了してしまう案件がほとんどです。
ただし金融型クラウドファンディングには元本割れのリスクがあるため、急ぐだけでなく事前によく案件の内容を確認したうえで応募するかどうかの判断をしましょう。
金融型クラウドファンディングでは、貸し倒れや元本割れの可能性があることに注意しておきましょう。貸し倒れとは貸したお金が返ってこないことを指し、元本割れは返ってくるお金が出資したお金よりも下回ってしまうことを指します。
株式投資型では、出資先の株式会社が証券取引所への上場や売却を果たせない場合に元本割れの可能性が高いです。ファンド型は、出資先企業の売上が低かった場合などに元本割れの可能性が高くなるでしょう。
融資型の場合は、融資先企業が約束どおりに返済ができず貸し倒れとなった場合などは元本割れに至ります。
事前に金融型クラウドファンディングの取扱業者から交付される契約締結前交付書面をよく読み、リスクを把握したうえで支援を行いましょう。
金融型クラウドファンディングでは一般的に投資期間が固定されているため、原則として途中解約ができません。また、期間の途中で上場株式のように売却して換金することも一般的に不可能です。
短期的な利益を見込むのには適していないため、中期または長期的な運用方法として検討しましょう。
どのクラウドファンディングサイトで資金調達や支援をすればよいか知りたい人は、ぜひ以下の記事もチェックしてみてください。クラウドファンディングの仕組みからサイトの特徴、おすすめのサイトがわかります。
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