比較的新しい投資先として近年注目を集めている、投資型クラウドファンディング。しかし、投資型クラウドファンディングの種類や仕組みはさまざまで、いまいち内容が掴めなかったり、本当に利益を出せるのか不安に感じていたりする人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、投資型クラウドファンディングの特徴や仕組み、メリットなどを徹底解説します。投資型クラウドファンディングに興味がある人、投資を検討している人はぜひ参考にしてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
投資型クラウドファンディングとは、一般的なクラウドファンディングの仕組みを利用して企業や個人に資金の貸し付けや出資を行い、見返りとして分配金や売却益を得る投資手法です。
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人に資金提供を呼びかけ、サービスや商品の趣旨や発案者の考えに賛同した人から資金を集める仕組みのこと。
新規事業の立ち上げや社会問題の解決などを目的としてプロジェクトを立ち上げた人を起案者、そのプロジェクトに賛同して資金を提供する人を賛同者・支援者と呼びます。
起案者は集まった資金をもとにプロジェクトや事業を推進し、そこから出た利益が支援者たちに分配されたり、値上がりした金融商品を売却して利益を得たりと、さまざまなリターンを受け取ります。
投資型クラウドファンディングは、投資対象や出資方法の違いによってファンド型・融資型・株式型の3つに分類されます。
ファンド型とは、スタートアップ企業や個人が起案者となっている小規模プロジェクトに出資するクラウドファンディングです。
出資者はプロジェクトによって発生した利益から、出資額に応じた分配金をリターンとして受け取るのが一般的です。一方、プロジェクトで想定していた利益が出なかった場合は、期待どおりのリターンが得られないリスクがあります。
この点、不動産投資型の案件は担保設定がしやすく、もし思うように利益が出なくても貸し倒れが起こりづらい仕組みになっており、ファンド型の代表的なジャンルになっています。
ファンド型は、貧困や環境問題などの解決を目指すプロジェクトが多いのも特徴のひとつ。単なる投資商品に留まらない社会性の高さから、人気ジャンルのひとつとなっています。
融資型はソーシャルレンディングとも呼ばれ、資金を必要としている個人や企業に融資(貸し付け)をするクラウドファンディングです。
クラウドファンディング事業者が仲介役となってファンドを作り、集まった資金を起案者に融資。出資者はリターンとして貸し付けた資金の金利を受け取るのが一般的です。
銀行融資の代替案として利用する起案者も多く、比較的高い利回りが設定されているため、投資家からも人気の高いクラウドファンディングです。
株式投資型とは、未上場企業の未公開株を購入することで起案者を資金的に支援するクラウドファンディングです。
起案企業は、株式型クラウドファンディングを通じて調達した資金を新規事業や設備に投資し、事業の成功を目指します。
この企業が成長すると株式の評価額が上がり、大きなリターンを得られる可能性がある一方で、投資した企業の倒産リスクもあるハイリスク・ハイリターンな投資方法です。
未上場株は一般的な株式市場で売却できず換金性に乏しい側面もありますが、今後大きな成長が期待できる新興分野に投資できるのは大きな魅力。特に有望企業を積極的に探している投資家から人気です。
投資型クラウドファンディングの代表的なメリットを4つ紹介します。
投資型クラウドファンディングには1万円程度の少額から投資できる案件も多く、投資初心者にもおすすめです。
たとえば、不動産投資型クラウドファンディングでは、不特定多数の人たちが1口1万円で資金を出し合って1棟の不動産を購入・運用する案件が多数あります。
金額を調整することでリスクをコントロールできるうえ、自分ひとりでは投資できない高額な案件に少額で投資できるメリットがあります。
案件により幅はありますが、国債や投資信託などに比べて高い利回りが期待できます。
投資型クラウドファンディングの投資対象は、新規事業やベンチャー企業が多く伸びしろが大きいため、数か月で10%以上の利回りが設定されている案件も少なくありません。
そのぶんリスクも大きくなる傾向があるので、一点集中で投資するのではなく分散投資をしてリスクを減らすのがおすすめです。
投資型クラウドファンディングの多くは、資金を投じたらリターンが得られるのを待つだけです。
基本的には起案者が集まった資金を元手にプロジェクトを推進するので、株式投資のようにモニタリングしたり、途中で投資先を組み替えたりする手間はかかりません。
普段忙しくてこまめに運用管理ができない人でも運用結果に影響はないため、時間がない人にもおすすめです。
投資型クラウドファンディングの案件にはエンジェル税制を利用できるものもあり、優遇措置を受けて節税できる可能性があります。
エンジェル税制とは、ベンチャー企業に投資した個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度のこと。投資時点と株式売却時点のそれぞれで優遇措置を受けられます。
【エンジェル税制の優遇措置A】
設立5年未満の企業に投資した場合、「対象企業への投資額-2000円」をその年の総所得金額から控除できる。総所得金額×40%か1000万円のいずれか低い方が控除対象となる投資額の上限。
【エンジェル税制の優遇措置B】
設立10年未満の企業に投資した場合、対象企業への投資額すべてをその年の他の株式譲渡益から控除でき、控除対象となる投資額の上限はなし。
エンジェル税制を利用することで確定申告の際に控除を受けられれば、所得税や住民税の負担を減らせる可能性があります。
投資型クラウドファンディングは、その他の投資と比較するとハイリスク・ハイリターンな投資商品です。ここでは代表的なデメリットを4つ紹介します。
投資型クラウドファンディングには少なからずデフォルトリスクがあります。デフォルトリスクとは、融資した企業・事業の業績が悪化したり、倒産したりすることで出資金が回収できなくなるリスクのこと。
最近では2021年9月、クラウドファンディング業者であるクラウドクレジットが提供するカメルーン支援ファンドで貸し倒れの可能性があることが報じられるなど、時折このような事案が発生しています。
デフォルトリスクは決して高くはなく、クラウドファンディング事業者もさまざまな補填策を用意していますが、このようなリスクがあることを念頭に置いて投資する必要があります。
株式投資型クラウドファンディングで投資できる金額は、1社に対して年間50万円までとなっているため、注意しましょう。個人が大きな損失を被らないよう法律で規制されています。
ただし、2022年1月の法改正では、保有資産や年収など一定の条件を満たした個人投資家と法人投資家を特定投資家と定義して、年間50万円の上限をなくす新制度が導入されました。
投資型クラウドファンディングはまだ歴史の浅い投資商品のため、今後もこのようなルール変更が行われる可能性があります。
投資型クラウドファンディングは数か月〜1年以上かけてリターンを狙う投資商品なので、短期的に利益を得たい人には向いていません。
株式市場やFXのように値動きでリターンを狙うのではなく、投資したプロジェクトの収益からリターンを受け取る仕組み。投資したプロジェクトが完了してリターンが支払われるまでに早くて数か月、遅いと1年以上かかります。
FXのレバレッジのように少ない資金で大きな金額の取引をする仕組みもないため、投資資金はすべて自分で用意する必要があります。
投資型クラウドファンディングはハイリスク・ハイリターンであり、リスクの見極めが難しいことがデメリットです。投資対象は幅広く、それぞれの案件で警戒すべきリスクの種類や程度が異なります。
たとえば、新規事業やベンチャー企業に貸し付けをする融資型では、融資を受けた事業がうまく軌道に乗らないと返済が遅延する、貸し倒れで資金が回収できないといったリスクが考えられます。
不動産投資型では、災害によって投資した不動産が毀損する、入居者が集まらず想定していた家賃収入が得られないといったリスクがあるでしょう。
一度投資したらその後の手間は少ない投資型クラウドファンディングですが、投資する案件によってリスクが異なるため、事前に情報を精査して投資する案件を慎重に選ぶ必要があります。
投資型クラウドファンディングを始める際、手続きには1〜2週間かかる場合があります。以下の手順を参考に、計画的に手続きを進めましょう。
まずは案件を取りまとめているプラットフォームを選びましょう。
プラットフォームごとにコンセプトが異なり、扱っている案件の種類や条件もさまざま。公開されている案件や利回り、手数料などをチェックして自分の投資スタイルにあったプラットフォームを選ぶことが大切です。
プラットフォームを選んだら、会員登録して専用口座を開設します。プラットフォームによっては、登録にあたって条件を設定している場合があるため注意が必要です。
最近では多くのプラットフォームがWeb上で手続きが完結しますが、登録完了には1〜2週間程度かかる場合があります。
登録の際は個人情報の入力のほか、写真付きの本人確認書類のアップロードを求められるのが一般的なので、手元に準備してから手続きするとスムーズです。
口座開設が完了したら投資資金を入金しましょう。投資型クラウドファンディングではプラットフォームを介して取引が行われるため、資金は専用口座の残高から支払われます。
入金が済んでいないと案件に申し込めない場合があり、入金を待っている間に募集が打ち切られてしまうケースもあるため、先に入金を済ませておくのがおすすめです。
ここまでの手続きが終われば投資する準備は完了。あとは案件を選んで申し込みをするだけです。
口座に資金が入金されたら、実際に登録したプラットフォームで投資したい案件を選びましょう。
各案件には1口あたりの最低投資金額・利回り・運用期間・案件の詳細や起案者の情報が掲載されているので、よく読んで判断材料を集めることが大切です。
利回りの高い案件が魅力的に見えますが、そのぶんリスクも高くなる傾向があります。また、投資期間が短いほど貸し倒れリスクが低くなるため、初心者のうちは比較的低い利回りで投資期間が短い案件を選ぶのがおすすめです。
投資型クラウドファンディングは、ほかの投資商品と比べて投資対象やルールがユニークなため、特有の注意点があります。ここでは特に重要な注意点を3つ解説します。
投資型クラウドファンディングには元本保証がなく、元本割れや貸し倒れリスクがあります。
掲載されている利回りはあくまで目安であり、結果が保証されているわけではありません。計画どおりに事業が行われ、想定どおりに利益が出た場合のリターンが記載されているため、参考程度に留めておきましょう。
なかにはこのようなリスクを軽減するために担保を設定している案件や、損失を一定の割合で補填する仕組み(優先/劣後出資)が用意されている場合もあります。
いずれにせよ、事業が想定どおりに進まなかった場合、償還が遅れたり元本割れを起こしたりする可能性がある点には注意が必要です。
投資型クラウドファンディングでは、希望する案件に投資できない場合があります。
各案件には募集期限が設けられているため、募集期限が終了した案件には申し込みができません。加えて、条件の良い案件には応募が殺到して、公開からわずか数分で枠が埋まることも珍しくありません。
多くのプラットフォームでは、募集開始前から案件情報が公開されているため、日頃からこまめに情報収集しておくのがおすすめです。
良い案件はいつ出てくるかわかりません。いざというときに悔しい思いをしないためにも、口座開設や入金をしっかり済ませて、いつでも良い案件に応募できる体制を整えておきましょう。
投資型クラウドファンディングでは、一部の例外を除き運用中の途中キャンセルはできません。
出資したお金は直接プロジェクトの推進に使われているため、分配を受けながらプロジェクトの完了を待つ必要があります。
キャンセルが可能なのは運用開始前、または申し込みから数日以内とルールが定められているので、各プラットフォームや案件の概要を確認しましょう。
起案者が希望する金額が期限内に集まらない場合は、案件が成立するまで資金が拘束されるケースもあります。それでも資金が集まらなかった場合は、案件不成立となり資金が返還されるといった流れです。
投資型クラウドファンディングでは投資した資金がすぐに手元に戻らないケースがあるため、余裕資金で投資することも大切です。
ほかの投資商品に比べて大きなリターンが見込めるのが投資型クラウドファンディングの魅力ですが、リスクを軽減する工夫が必要です。
投資型クラウドファンディング内でも案件によってリスクが異なるうえ、1案件に対する上限金額が設定されているので、リスクの異なる複数の案件に投資するのもひとつの方法です。
とはいえ、クラウドファンディングのプラットフォームは数が多く、扱っている案件や条件もさまざまなため、どこを選べば良いのか迷ってしまいますよね。
そこで、以下の記事では人気のクラウドファンディングサイトを比較検証してまとめています。プラットフォーム選びに迷っている人や、自分好みの案件を探している人はぜひ参考にしてください。
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