会社員や公務員に比べて、社会保険制度による保障が薄くなる個人事業主や自営業。病気やケガで働けなくなったら、自分や家族の生活をどのように守っていくか心配な人も多いでしょう。就業不能保険や医療保険、終身保険など保険の種類はさまざまあり、万が一のリスクに備えて、どの保険に入っておいたほうがいいのか気になりますよね。
そこで今回は、個人事業主や自営業、フリーランスの人は保険に入るべきかを解説します。必ず入らないといけない公的医療保険や公的年金制度のほか、入っておきたい民間保険も紹介するので、万が一のために備えておきたい人は参考にしてみてください。
大学卒業後に銀行員として勤務、法人顧客の経営支援・融資商品の提案や、個人向け資産運用相談を担当。 2020年にマイベストに入社、自身の銀行員時代の経験を活かし、カードローン・クレジットカード・生命保険・損害保険・株式投資などの金融サービスやキャッシュレス決済を専門に解説コンテンツの制作を統括する。 また、Yahoo!ファイナンスで借入や投資への疑問や基礎知識に関する連載も担当している。
本コンテンツは情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品についての勧誘や契約の推奨を目的としたものではありません。弊社が内容について正確性を含め一切を保証するものではないため、個別商品については各保険会社にお問い合わせください。
自営業が加入できる公的医療保険は、国民健康保険です。会社員・公務員が加入する健康保険とは異なり、自営業には病気やケガのときに支給される傷病手当金や、産休時に支給される出産手当金がありません。
公的年金制度も、会社員・公務員と自営業で異なると覚えておきましょう。会社員・公務員の場合は、国民年金保険と厚生年金保険の2つに加入します。一方で、自営業は国民年金しか加入できず、老後や障害を持ったときに支給される年金が少ないのがデメリットです。
会社員・公務員が加入する上記の2つの保険は、勤務先と従業員が折半で保険料を支払いますが、自営業は全額を自己負担する必要があります。
また、自営業は失業時の生活を保障する雇用保険、仕事による病気・ケガや死亡時の保障をする労災保険にも加入できません。公的保険でカバーできる範囲が、会社員・公務員より少なくなるため、貯蓄や民間の保険で対応する必要があります。
職業に関わらず、国民健康保険・国民年金保険には入る必要があり、40歳以上なら介護保険にも加入しなければいけません。以下では、個人事業主・自営業・フリーランスが入らないといけない公的保険を紹介します。
入らないといけない1つ目の公的保険は、国民健康保険です。医療機関を受診したときに、医療費の一部を負担してもらえるため、支払う額が減らせます。会社員や公務員などが加入する医療保険制度に加入していない人は、国民健康保険に入らないといけません。
国民健康保険の保険料は、居住地域・収入・年齢によって異なります。実際の健康保険料は、住んでいる自治体の公式サイトで確認してみてください。
また、医療機関を受診するときの自己負担の割合は、年齢によって異なります(参照:厚生労働省)。最も負担が大きいのは、6〜69歳の人で3割負担。6歳未満は2割に固定されています。70~74歳は2割、75歳以上は1割負担ですが、現役世代並みの所得がある人は3割負担です。
2つ目は国民年金保険です。年をとったときや障害が残ったときに、定期的に年金を受け取れます。国民年金保険は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全員が加入する制度。国民年金保険の保険料は、一律で月額1万6,980円です。
国民年金保険に加入することで受けられる老齢基礎年金は、保険料の納付期間と免除期間の合計が10年以上あれば、65歳から受け取れます。保険料の納付額によって年金額は変わりますが、満額受け取れるときの年金額は年間81万6,000円で、1か月あたりにすると6万8,000円です(参照:日本年金機構)。
国民年金保険に加入することで、障害年金も受け取れます。障害を負ったときに、国民年金保険の未納がなければ受取可能です。障害の状態に応じて支給額が変動します(参照: 日本年金機構)。ただし、老齢年金と障害年金どちらも受け取れる状況になったら、いずれかを選択しないといけない点には注意してください。
40歳以上65歳未満と65歳以上で、介護保険の保険料は変わります。そのほか収入・居住地域・世帯人数によっても変わるため、住んでいる地域の公式サイトを確認してください。
介護保険で受けられる介護サービスには、自宅での生活を支えるサービスや施設でのケアがあります。たとえば、家事の手伝いや日帰りのケアサービス、長期または短期の施設滞在、福祉用具の使用などです。
介護保険料は、40歳以上65歳未満は国民年金保険とあわせて支払います。65歳以上は、年金受給者なら年金から介護保険料が差し引かれますが、未受給者は納付書や口座振替で支払うので忘れないようにしましょう。
自営業・個人事業主・フリーランスは、会社員・公務員に比べて老後の年金や、病気・ケガ・障害のときの保障が少ないのが現状です。以下では、自営業が民間保険に加入したほうがよい理由を解説します。
会社員・公務員は、病気やケガで4日以上休んだときに、傷病手当金が最大1年6か月まで支給されます。支給額は、働けなくなった月から12か月以内の給料の最大3分の2です。たとえば、過去12か月の平均給与が25万円なら、約16万6,000円が支給されます。
一方で、自営業は傷病手当金を受給できないので、それまで収入がいくらあっても給付金は0円です。自営業が病気やケガで休まないといけないときは、自分の貯蓄や民間保険の給付金で対応しなければいけないと覚えておきましょう。
自営業は老齢年金で受け取れる金額が、会社員・公務員よりも少額です。自営業が加入できる公的年金保険は、基本的に国民年金のみ。一方、会社員・公務員は国民年金と厚生年金の両方に加入できるので、受け取れる年金額が増えます。
令和5年9月末の国民年金のうち、老齢年金の平均年金月額は5万7,602円です。一方で、厚生年金の老齢年金の平均年金月額は14万7,600円と、国民年金の約3倍にも及びます(参照:厚生年金保険・国民年金事業の概況)。
しっかり貯蓄したり、民間保険で給付金を受け取れるようにしたりしないと、自営業は老後に受け取れる年金が少なくなる点に注意しましょう。
自営業は遺族年金・障害年金の受給額も、会社員・公務員よりも少額です。自営業は基本的に国民年金しか加入できないので、遺族基礎年金・障害基礎年金しか受け取れません。一方で会社員・公務員は、遺族基礎年金・障害基礎年金に加えて、遺族厚生年金・障害厚生年金が受け取れます。
遺族年金は、本人が亡くなったときに残された家族に支給される年金。自営業は遺族基礎年金しか受け取れないことに加えて、子どもがいない配偶者には支給されないのもデメリットです。
障害年金は、本人が障害認定を受けたときに支給される年金のこと。1級・2級・3級と等級が設定されていて、日常生活のほとんどで介助が必要な1級と、1級より軽度で日常生活に制限のある2級が対象です。一方障害厚生年金は、1級・2級に該当しなくてもさらに軽度な3級に該当すれば受給できます。
自分に万が一のことがあったときに、貯蓄や民間保険を用意しておかないと、自営業者は残された家族に負担をかける可能性があるでしょう。
公的保険だけでは万が一のトラブルに対応できない可能性があるため、民間保険の加入も検討するとよいでしょう。以下では、個人事業主や自営業が入っておきたい民間保険を解説します。
入院給付金には、入院日数分の給付金が保障される日額タイプと、一定額がまとまって給付される一時金タイプがあります。日額タイプは対応期間が長く、長期間の入院に向いているのが特徴です。ただし、必要入院日数が定められており、短期間の入院では給付されない場合があるので気をつけましょう。
一時金タイプは、短期入院でもまとまった金額を受け取れて、入院期間が短い場合に向いています。一方で、退院後にすぐ再入院すると給付金が下りない可能性や、長期間の入院だと給付金が足りなくなる可能性がある点には注意してください。
手術給付金には、金額が一律で決まっているタイプと、手術の種類で金額が異なるタイプがあります。一律のタイプは給付額がわかりやすく、手術費用をまかなえるか計算しやすいのがメリットです。手術の種類で金額が異なるタイプは、重大な手術では給付額が増えるので、手術費用が増えても対応しやすいでしょう。
医療保険は、がん・心疾患・脳血管疾患に備える三大疾病特約や先進医療特約などもつけられます。これらの治療は公的医療保険が適用されない場合があり、治療費が全額自己負担になる可能性もあるため、万が一の発病に備えられるでしょう。
就業不能保険・所得補償保険に入っていると、病気やケガなどで働けないときに給付金が下ります。自営業・個人事業主は傷病手当金を利用できないため、働けずに収入が途絶えるリスクに備えられるでしょう。
働けずに給付金が下りる状況として、一定期間の入院・在宅療養が続くことや、障害年金の1級・2級といった等級認定されることなどが挙げられます。
就業不能保険は、長期的な収入保障を目的とする保険です。給付額は5~10万円程度から、1~5万円単位で設定できるケースが一般的。ただし、60日・180日などの免責期間が設けられており、働けなくなってもすぐに給付金を受け取れない場合があります。
所得補償保険は、短期間の収入減少に対応する保険です。一般的に、平均月間所得の50~70%程の金額を受け取れます。働けなくなってから数日で給付金が下りやすいものの、長期の保障には向きません。
以下のコンテンツでは、おすすめの就業不能保険を紹介しています。選び方も合わせて解説しているので、働けなくなったときのリスクに備えたい人は参考にしてみてください。
定期保険や収入保障保険に加入していると、一定期間の間で死亡保障または高度障害保障を受けられます。自営業・個人事業主は、遺族年金の受給額が会社員・公務員よりも少ないので、残された家族の生活を保障できるでしょう。
定期保険は、被保険者が死亡したときや高度障害を負ったときに一括で保険金を受け取れる保険で、保険期間中の給付額が変わらないのが特徴です。しっかりした保障を、継続して家族に受けさせたい人に向いています。ただし、収入保障保険より保険料が高くなる可能性がある点には注意してください。
収入保障保険とは、被保険者が死亡したときや高度障害を負ったときに、保険金を一定期間受け取れる保険。残された家族の生活を安定して保障できますが、期間が経過するにつれて保険金が少なくなるのがデメリットです。
以下のコンテンツでは、定期保険と収入保障保険をそれぞれ紹介しています。死亡保障をしっかり受けたい人は、ぜひチェックしてみてください。
終身保険は、一生涯の死亡・高度障害保障を得られる保険です。自営業・個人事業主は、遺族年金の受給額が会社員よりも少ないので、残された家族の生活を守れます。
終身保険はほかの保険よりも保険料が高くなりやすい分、解約したときの解約返戻金を多めに受け取れるのが特徴です。ただし、契約したタイミングや内容によっては、支払った保険料よりも解約返戻金が下回る可能性があります。
終身保険は保険料の払い方で、終身払い・有期払い・一時払いの3とおりにわけられるのが特徴です。終身払いは、一生涯保険料を払い続けるので、月々の負担を抑えられるのがメリット。ただし支払期間が長くなるので、老後も支出が続くのが難点です。
有期払いは、保険料の払込期間を決めるので老後の支払負担を軽減できます。一方で、月々の保険料が高くなるのがデメリットです。一時払いは、一括で保険料全額を支払うので将来の返済負担はありませんが、まとまった資金を最初に用意しないといけません。
以下のコンテンツでは、終身保険を選び方とともに紹介しています。一生涯の死亡保障をしっかり受けたいときの保険選びとして、参考にしてください。
個人年金保険に加入し保険料を積み立てていれば、保険金を老後の年金として受け取れます。自営業・個人事業主は、老齢年金の受給額が会社員・公務員よりも少ないので、老後の保障になるでしょう。
個人年金保険は、年金の受け取り方によって、確定年金・有期年金・終身年金に分かれています。確定年金は、契約時に定めた期間で年金が受け取れて、被保険者が死亡しても遺族が年金を受け取れるのが特徴です。
有期年金も年金の受給期間が決まっていますが、終身年金は一生涯に渡って年金を受け取れます。いずれも被保険者が亡くなると年金を受け取れませんが、保証期間付きの商品を契約すると、期間中の死亡でも遺族が年金を受け取れるのがメリットです。
以下のコンテンツでは、個人年金保険を選び方とともに解説しています。老後の年金をしっかり確保したい人は、参考にしてみてください。
火災保険は、自宅や店舗が火災・水災・風災・雪災などで損害を負った場合に補償される保険です。保険商品によっては建物だけでなく、事業に必要な機器や道具なども補償の対象にできます。
地震保険は、地震による損害を補償する保険です。対象になるのは、居住用の建物と家財のみなので注意しましょう。また、地震保険は火災保険とセットで加入するのが通例で、単独で申し込んだり、火災保険の加入後に契約したりできません。
以下のコンテンツでは、火災保険を選び方とともに解説しています。万が一の災害に保険で備えたい人は、ぜひ役立ててみてください。
自営業が加入した民間保険は、条件を満たすと保険料控除を受けられるのがメリット。所得控除には生命保険料控除・地震保険料控除があるため、支払った保険料の一部を所得から差し引いて税金を安くできます。
今回紹介した民間保険のうち生命保険料控除の対象は、医療保険・就業不能保険・所得補償保険・定期保険・収入保障保険・終身保険・個人年金保険です。控除額は、年間の保険料で異なります(参照:公益財団法人 生命保険文化センター)。
地震保険は、地震保険料控除の対象になります。年間の地震保険料が5万円以下なら全額、5万円以上なら一律で5万円が控除額です(参照:国税庁)。ただし、住居の一部を店舗や事務所として使っている場合は、住居部分に関わるものしか控除されません。また、火災保険は保険料控除の対象外です。
保険料控除を受けるには、確定申告の際に申請が必要なので忘れないようにしましょう。保険会社から送られてくる控除証明書に記載された金額を、確定申告の際に記入してください。
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