【猛暑レビュー】-28℃の冷却!? 完売続出のワークマン「着る冷凍服」が普通の人にはまだ早かった理由
北海道で史上初の40℃超えに至った2025年の夏。そんな酷暑を乗り越えられそうな「進化系暑さ対策グッズ」を集めてレビューする本連載、第5弾です!
今回は、ワークマンが2023年に発売して話題をかっさらった「着る冷凍服」ことペルチェベストの最新作。
第1回に紹介したソニーの「着るクーラー」にも使われる冷却素材「ペルチェ素子」のプレートを5つ搭載し、着るだけで「最大-28℃」(公式)と謳う、進化系暑さ対策グッズのリーサル・ウェポン的存在です。
ただ、本当に冷たくなるの? さすがに通勤に着れないよね? 2万円は失敗したら痛い……と気になるポイントもたくさん。
というわけで本コンテンツではそんな「ワークマン ペルチェベストプロ2」を1週間使い倒してわかった、実際涼しくなるのか、買うべきなのかをお伝えします!

2012年に雑誌や書籍の出版を行う晋遊舎に入社。2019年にテストするモノ批評誌『MONOQLO』編集長、2020年にホンモノがわかる家電情報誌『家電批評』編集長に就任。 2021年5月よりマイベストに入社。コンテンツ制作部長を経て、新規に創設されたクオリティーコントロール部長に就任。様々なジャンルの企画書作成からコンテンツ編集までを取り仕切る。
そもそも「着る冷凍服」ってなんだ!?
そう思う方も多いかもしれませんが、ワークマンが公式に謳ったキャッチコピーが「着る冷凍服」。名前の通りベストに冷却装置が埋め込まれていて、着るだけで身体が冷却される最新のグッズです。
原理としては、ペルチェ素子という電気のちからで冷やすというもの。そんな「ペルチェベスト」は今年は各社から続々発売されています。
また、昨年あたりからは冷たい水をベスト内で循環させて身体を冷やす水冷式も話題になっています。
実は今年で3世代目! 圧倒的なコスパでバイカーに大人気のベスト
今回レビューするのは、ワークマンの「ウィンドコアアイス×ヒーター ペルチェベストPRO2」。実はこの商品、ワークマンのペルチェベストとしては3世代目なんです。
ワークマンは2023年に初代「ウィンドコア アイス×ヒーター ペルチェベスト」を1万9800円という脅威のお値段で発売。作業者の労働寿命延長を目指し、パナソニックの子会社とコラボして開発されました。在庫も少なくすぐに売切れましたが、冷却部が背中に1つのみだったためそこまで効果は薄く、愛用者が続出、とまではいきませんでした。
2024年には2世代目「ウィンドコアアイス×ヒーター ペルチェベストPRO」を発売。お値段はそのままに、冷却部を背中と肋骨部の計3つに増量。さらに、ペルチェ素子特有の「肌が冷たさに慣れてしまい、だんだんと冷えを感じなくなる問題」に対して「ゆらぎモード」という冷却をゆらがせる機能を搭載。こちらも即売切れになりました。
最新モデルは「冷却部」を3から5つへ! 今回は…普段着でもいけるんじゃないか!?
そして今年、ワークマンがまたもや改良を加えて発売したのが「ウィンドコアアイス×ヒーター ペルチェベストPRO2」。
今年はなんと冷却部を背中に2つを追加して5つに。また冷却温度も-23℃から-28℃にアップ。ほかにもダイヤルで調整できるアジャスターの追加や、専用バッテリー(2万mAh)も小型化し、冷却性能だけでなく着心地もアップデート。でもお値段は据え置きの1万9800円。ワークマンすごい!
稼動時間は付属バッテリーを使えば強モードで約2.8時間、ゆらぎモードで約3.3時間(どちらもペルチェ5個フル稼働モード)。バッテリーは市販のものでもアダプタを使えば(type-C)使えるので、ガチれば1日中使用可能です。
ちなみに、今年もWebでは即売切れ。店舗在庫ももうなくなってしまいました…
記事執筆が間に合わず、6月末の購入時点では店舗在庫は残っていたものの、7月末の執筆時点では在庫はもうなし。
このレビューを見て「ほしい!」と思った方は、ワークマンの再販を祈るか、来年の新モデルに期待しましょう。
1週間使ってわかった! ワークマンの「着る冷凍服」が普通の人にはまだ早かった4つの理由
発売後、またもやすぐに人気になり、今年もレビューが続々公開されました。ただレビュー観点は主にバイク乗りばかり。うーん、普通の人にとってはどうなんだろうか?
ということで、バイクにも乗る担当者が、あえて「バイクじゃない」シーン、つまり真夏のレジャーでの暑さ対策グッズとしてどうなのかをレビューしました。
結論としては、普通の人が普段から使うのにはまだ早かったというもの。
【「ペルチェベストPRO2」を使ってわかった4つのポイント】
- ①オンにして10秒でキンキン。冷凍服は言い過ぎだが無限氷のうにはなる
- ②ネックはファンの音と排熱。屋内で使うのは難しく、ずっと炎天下にいる人向け
- ③約3時間の駆動は物足りない。複数バッテリーの持ち歩きがマストに……
- ④小柄でなければ装着感は上々。ただし、洗濯の手間はあり
ちなみに今回は平日の通勤、日中の散歩、週末の街歩きを含めて使い込んでみました。
①オンにして10秒でキンキン。冷凍服は言い過ぎだが無限氷のうにはなる
- 「着る冷凍服」と謳うまでの冷却力はどれほどか……答えとしては確かにプレート部は冷たいが、冷凍は言い過ぎというものでした。
電源をオンにすると10秒ほどでキンキンに。30℃の環境下での冷却部の温度は約16℃(サーモグラフィーで目張りした冷却部を測定)。インナー越しといえど、氷を肌にくっつけてるような冷たさを感じます。特に接地面積の大きい背中の大型プレートが気持ち良い!
ただし、しばらくすると肌が冷たさに慣れてしまい、はじめのキンキン感は薄くなっていきます。
「冷凍服」というと全身が涼しくなるのを期待しますが、実際は冷却プレートのある背中、腰上×2、肋骨×2が局所的に快適になるというもの。例えるなら、小さな氷のうをずっと密着させているような感じです。
炎天下でもバッテリーの続く限り冷たいのでだいぶ助かりはしますが、身体の芯までの涼しさは感じません。期待に対してはちょっと物足りない結果でした。
涼しく感じたいならコンプレッションインナーはマスト!
ちなみに、ワークマンが公式に謳っている通り、コンプレッションウェアをインナーで着ることが冷たさを感じる必須アイテムです。そもそも、冷却プレートは肌にしっかりと接着していないと冷たさが感じられません。
レビューでは、ワークマンの冷感インナー「クールシールドネクスト半袖クルーネック」(1,280円)を使用したので快適でしたが、コットンTシャツなどの上からだと冷たさは感じられませんでした。
②ネックはファンの音と排熱。屋内で使うのは難しく、ずっと炎天下にいる人向け
本商品で採用しているペルチェ素子は冷却面の反対面からの排熱がすごいです。実測すると表面は50.3℃まで熱を持っていました。
これが厄介なポイントで、そもそもとしてコンプレッションインナーの上に着るだけだと映画トゥー◯レイダー的な見た目になってしまう本商品。となると、そのうえに何か羽織るしかなくなるのですが普通のシャツやジャケットを羽織ってしまうとシャツ内に排熱が籠もってサウナ状態になってしまいます。
バイクや自転車であればメッシュのジャケットを羽織るという選択肢がありますが(これはこれでかなり快適でした)、レジャーであればなかなか厳しいもの。
そこでおすすめなのがファン付きウェアです。ワークマンもあわせ使いをおすすめしていますが、実際にファンによって排熱がきちんと外に抜けていくのにくわえて、前述したように「冷却部しか冷たくならない」なかで、非冷却部にも風が当たることで体感レベルで涼しさに大きく違いが出ました。
逆にいえば、本商品はコンプレッションウェアとファン付きウェアがないと実用性は著しく下がるといえるでしょう。
屋内でファンを切ると一転してサウナに! あくまで屋外でのレジャーや作業用です
ただ、ここで厄介なのがファン付きウェアのうるささ問題。ワークマンのファン付きウェアは4段階までの調整が可能なのですが、2段階目でも屋内ではかなり目立つうるささです。
実際、通勤で使ってみたところ、電車内では音と空気の膨らみでなかなかファン付きウェアをつけっぱなしにはできず。恥ずかしさに負けてオフにすると、冷凍服からの排熱によりウェア内がサウナ状態になりかなり不快度が高かったです。
近年、ファン付きウェアを着用する人も増えてきているので、コンビニ程度であればオンのまま過ごせますが、公共交通機関や飲食店、オフィスでの使用は難しいでしょう。
一方で、うるささも風の膨らみもレジャーや作業などの屋外使用であればそこまで気にならないでしょう。
③約3時間の駆動は物足りない。複数バッテリーの持ち歩きがマストに……
バッテリーですが、強モードで約2.8時間は持ちます。かつ、バッテリーも付属のアダプタを使えば専用のものでなくても使用可能なので猛暑のレジャー使用としては許容できる範囲。最悪の場合、別バッテリーを準備すれば問題なし。……と思いきや別に問題が発生します。
そう、あわせ使いが必須のファン付きウェアです。ワークマンのファン付きウェア用ファン「WindCore ファン・ケーブルセット」(5800円)と専用バッテリー「WZ4460」(1万800円)での使用の場合、マックスの表示4で約2.6時間、風をしっかり感じる表示3で約4時間です。
そう、気持ちよく6 時間ほど使用する場合、冷凍服用の予備のバッテリー1つと、ファン付きウェア用の予備のバッテリー1つが必要になるのです。
これがなかなか気持ち的にも物理的にもヘビィ。特に冷凍服が必要になるようなレジャーの場合、なかなか重いバッテリー2つを予備で持ち歩くのはこたえます。
④小柄でなければ装着感は上々。ただし、洗濯の手間はあり
装着感については174cmの担当編集的にはぴったりのサイズ感でした。
前述のように冷却プレートがきちんと接着できているかが冷たさを大きく左右するのですが、サイドの調整ベルトを引っ張るだけできちんとフィット。
ペルチェユニットが約530g、バッテリーは約400gと全体で1kg超える重量ですが、フィット感の良さからかそこまで重みは感じません。
また、胸元についているダイヤルを回すと背中側の腰上についている冷却プレートが引き上がるので好みの位置にも簡単に調節可能です。
ただし、小柄な編集部員(153cm)が試したところ、背中の大きなプレートが肩甲骨の上に乗ってしまって接着し辛い、肋骨部のプレートも肋骨の下に当たってしまいこちらも接着し辛い、とフィット感には難がありました。
冷却プレートの設置と配線が大変…洗濯の際は苦労します
ちなみに一つ注意したいのが、冷却プレートと配線をベストに取り付ける際の難易度がとても高いこと。手先が不器用な人からするととても時間がかかります。
初回だけであればよいのですが、暑いときに着る洋服という特性上、洗濯(手洗い)の度にこの取り外し・取り付けの手間が発生すると考えるとなかなか大変です。
今回はワークマンが着る冷凍服と謳う「ウィンドコアアイス×ヒーター ペルチェベストPRO2」が、普通の人にとってこの猛暑を救う暑さ対策グッズに足りえるのかをレビューしてきました。
結論としては、冷たさはしっかり感じるものの冷凍庫はいいすぎ。コンプレッションインナーとファン付きウェアは必須で、うるささと排熱の関係で屋外使用がおすすめ。モバイルバッテリーは複数必要なのでヘビィ。と、正直、手間や取り回しの割にはそこまでの冷凍感はないので普通の人にはまだ早いというものでした。
もちろん、ワークマンは悪くありません。実際、炎天下で作業される(かつすでにファン付きウェアを着ている)現場作業者の方や、バイカーの方(担当も乗ってみたら快適だった。バイクのバッテリーから電源とればより快適)にはかなりおすすめできる商品となっています。
まとめると、
【おすすめな人/そうじゃない人まとめ】
- おすすめな人
- すでにファン付きウェアを着て、作業をしている人
- バイク乗りで夏のツーリング時の暑さ対策をしたい人
- キャンプなどのアウトドアで使用したい人
- おすすめじゃない人
- 通勤などで使うことを考えている人
- 夏の観光での使用を考えている人
になるでしょう。
どちらにせよ、今夏はなかなか入手困難な商品ですので、来シーズンに期待しつつ、どうしても欲しいという方は、他メーカーのペルチェベストを検討してみると良いかもしれません。
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(執筆/マイべマガジン編集部・浅沼伊織)