出典:amazon.co.jp山口智司 名言の正体617円堀江宏樹「偉人の名言集」という類の本は世に数多く出ているのですが、この本は偉人の名言のウラ事情にまで話が及んでいて、興味深いのです。看護師さんが「白衣の天使」などと呼ばれるようになったきっかけは、19世紀のイギリスで活動したフローレンス・ナイチンゲールの献身的な活動とされています。彼女には「天使とは美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩する人のために戦う者です」などという名言があります(本書より)。しかし彼女が有名になったクリミア戦争で、彼女が陣頭指揮を取った病院での患者の死亡率は、当地で断トツ一位でした。ナイチンゲールが「苦悩する人のために戦」おうとしすぎたあまり、病院のキャパを超える人数をついつい収容。結果的にそれが患者を殺してしまう原因となりました。他にもたくさんのウラ事情が載っていますので面白いですよ。…もっと見る
出典:amazon.co.jpジェイムズ・ウィンブラント 歯痛の文化史 古代エジプトからハリウッドまで1,836円堀江宏樹人間が、いや動物が歯というものを持ってしまってから続く歯のトラブルの歴史と、その迷走する治療法の数々を一挙にまとめた本です。歯のトラブルで悩む人たちが「絶対に現代に生まれてよかった!」と痛感できる一冊ですね。いちばん面白かったのは、古代の動物でいかにも「歯が命」っぽい、サーベルタイガーの話。彼らですら歯のトラブルに悩んでいたらしいことが化石からわかる、という部分です。つまり虫歯になるのはもっぱら人間だけで、砂糖を過剰摂取するからでは「ない」わけです。なぜ歯なんて生えてしまっているのでしょうか。でも17世紀のフランス国王ルイ14世は「歯なんて生やしてるから、それが病気の原因になる!」と医者からいわれ、ヴェルサイユ宮殿においてすべての歯を引っこ抜かれたそうで、そういうのはさすがにイヤだなぁと思いますが。…もっと見る
出典:amazon.co.jp勝田至:編 日本葬制史3,780円堀江宏樹ある年齢をすぎると、結婚式よりもお葬式に呼ばれることのほうが増えてくるものです。生まれてしまったかぎり、人間にはかならず死ぬ時がきますからね。この本は日本人の死とお葬式にまつわる歴史がまとめられており、非常に興味深いです。中世ごろまでは誰かが亡くなると荒野に遺体を放置しただけの風葬だったとか、火葬したくても薪代が高価なので貧しい人には手が出なかった、という話も面白いですが、現代のお葬式の設営の主役ともいうべき、花などで囲まれた祭壇は昭和の時代以降の伝統にすぎない…とか。学術書ですが「へぇ~」がたくさん詰まった一冊です。はるか古代から昭和・平成の世にいたるまで、脈々とつづいてきたお葬式の「常識」が、時代や地域によってここまで異なるのだと知ると、目からウロコが落ちるはずです。…もっと見る
出典:amazon.co.jpパオロ・マッツァリーノ エラい人にはウソがある 論語好きの孔子知らず1,512円堀江宏樹現代日本でも、社長サンとかビジネスセレブの類になぜか人気のある、孔子センセイや『論語』。しかし『論語』自体、孔子の著作ではありません。孔子センセイには二つの顔があります。歴史的人物としての孔子と歴史的に作られた信仰の対象としての孔子。史実だけで見た孔子の職業は哲学者でも政治家でもなく、冠婚葬祭アドバイザー。しかも冠婚葬祭アドバイザーとしてはじめて就職できたのはなんと五十代、人生の大半を無職でプライドだけ高い状態で過ごした困ったオッサンでした。『論語』も孔子が書いたのではなく、彼の死後しばらく経ってから弟子の弟子の弟子くらいでしょうか、そういう人たちが師匠から聞いた話をまとめた本にすぎないんですね。「負け組」代表のような孔子センセイが、どうして社会的な成功者の心に響く人生哲学を説くことができたのか…についての考察は本書をお読みください。…もっと見る
出典:amazon.co.jpイアン モーティマー シェイクスピア時代のイギリス生活百科4,104円堀江宏樹イギリスでシェイクスピアが活動した15世紀後半~16世紀前半は、女王エリザベス1世の治世にあたります。本書はその時代に「もしタイムトラベルできたらどう振る舞ったらいい?」という発想のもとに書かれた「時間旅行ガイド」なので、斜め読みしているだけでも面白いです。「処女王」エリザベス1世は優れた君主である一方、政治上の都合で自由に恋愛も結婚もできないストレスが大きかったらしく、反動からか、お胸がほぼ丸見えの衣装や、ネグリジェの類で外交官たちの前にもあらわれる露出狂スレスレ、見事な「こじらせオンナ」っぷりを発揮していました。彼女の御機嫌を損ねるといとも簡単に処刑されてしまったのです。その手の情報もてんこもりで面白いですよ。…もっと見る